ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

UFO学園はアカデミー賞の候補になったのか、ライク・ザ・モンドセレクション

さて、前回の記事がえらいバズっていて、普段の100倍ぐらいの方が、このブログを訪れているのにびびっている今日この頃です。

秒刊さんの件は、いろいろな方々がどうこうしてくれているようなので、当ブログは平常運転で次の話題に移ってもいいですかね。

 

というわけで、今日は当たり障りのない、『UFO学園の秘密』という映画がアカデミー賞のアニメ部門の候補にされたという話題でよろしいでしょうか。

blog.esuteru.com

一部の人にとっては当たり障りがないなんてことはないかもしれませんが、『UFO学園の秘密』というのは、とある宗教団体が親元で製作した、なにやら香ばしい感じのアニメーションのようです。「「UFO後進国日本の目を覚まそう!」キャンペーンの一環」らしいのですが、先進国がどの国なのか気になります。

 

そういう、ちょっと斜め上の感じの映画が(内容は前作などに比べて落ち着いているらしいけど)、どうしてアカデミー賞の候補になんてされたんでしょう?

 

まずは、本当に『UFO学園の秘密』が、候補になったかどうかを確認しましょう。

はちまさんがソースに上げているのは以下のサイト。

animeanime.jp

『バケモノの子』『思い出のマーニー』、ときて、『UFO学園の秘密』とくるのは、すごい落差を感じます。

 

さて、元ネタを探したいので、academy awardsの本家サイトを探します。

 

www.oscars.org

 

「UFO」なんて文字がなかったんで、「またガセか!」と思ったんですが、どうやら英語のタイトルは『The Laws of the Universe - Part 0』とのことで、『宇宙の法則 パート0』なんて、なにやらスターウォーズ並みに気合が入ってますな。パートいくつまでやる気なんだ。

 

さて、サイトを読んでいきますと、こう記載があります。

 

Sixteen features have been submitted for consideration in the Animated Feature Film category for the 88th Academy Awards®.

 

つまり、16本の映画が、アカデミー賞の「選考」のために、「提出された」ということです。うーん、提出されたというのと、はちまさんが書いている「候補になる」というのは、ちょっと違う気もするんだけど。

 

ついでに、16本のリストの後には、「映画のいくつかはロサンゼルスで上映されて」おらず、「投票過程に入るまでにロスで上映しなければならない」とあります。

 

私は知らなかったのですが、アカデミー賞って、応募制で、応募のルールをいろいろ取り決めているんですね。応募要項もあります。*1

 

http://www.oscars.org/sites/oscars/files/88aa_rules.pdf(リンク先PDF)

 

その中でも、アメリカ以外の国にハードルが高そうなのが、以下の二つのルール。

 

c. for paid admission in a commercial motion picture theater in Los Angeles County,
d. for a qualifying run of at least seven consecutive days,

 

「ロサンゼルスのシアターで商業的に公開し」「少なくとも7日間」上映しなければならないとあります。だから、本家の記事には「ロスでの公開が必要」と書いてあったわけですね。

 

え、『UFO学園』はアメリカで上映なんかしたの?と思ったら、ちゃんとしてました。

laws-of-universe.hspicturesstudio.jp

 

ロスでは「10月9日~10月15日」ということで、きっちり七日間上映されてます。

The Laws of The Universe - Part 0 - Laemmle.com

 

 

要するに、今回の一件は、「米映画芸術科学アカデミー」に、「日本から3つの作品の応募があった」というだけのことであって、アカデミー賞の「候補になった」というのはミスリードかなあと思います。ノミネートに関しては、元記事に記載のあるとおり、

In any year in which 16 or more animated feature films are eligible, a maximum of five motion pictures may be nominated.

 16作品以上の応募があったときは5本の映画が「ノミネートされる」ということなので、その段階で「候補になった」とようやく言えるのです。まあ、アクセス稼ぎのためにはやむをえない処置でしょうな。

 

つまり、言ってしまえば、一番難しい「ロスでの7日間の商業的な公開」をクリアできれば、ある程度の作品は「応募」まではできるわけです。イヤらしい言い方をすれば、お金を積めれば誰だってアカデミー賞の選考対象にはなれるということです。そういう意味では、モンドセレクションに似ていなくはない。なんたって、大学まで作ろうとした団体ですから、お金はあるんでしょう。

 

という話を書き終えてから、改めて二次ソースの「アニメ!アニメ!」さんの記事を覗くと、あら、ちゃんと記載がありました。

 

アカデミー賞では、米国ロサンゼルス地区で公開された長編アニメーションを選考対象の条件にしている。発表されたのはこの条件をクリアし、かつアワードへのエントリーをした作品だ。

 

長編アニメーション部門は選考対象が8本を超えるとその年に設けられ、またその本数によりノミネート作品の本数が決定する。

 

また選考対象作の段階では、作品が選考のための条件をクリアしていることを確認するもので、作品自体への評価はまだ行われていない。

 

最近、元ソースの適当記事が多かったので、ろくに読んでませんでした。ごめんなさい。というか、はちまさんもしっかり読めば、「候補」ではないこともわかると思いますよー。

 

*1:もちろん部門によってルールは違うものもあります。特に、外国語映画賞の部門は一国一本の制度なので、日本は映連が決めてるんだとか。

http://mainichi.jp/feature/news/20140120mog00m010010000c.html