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ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

【追記】ベッキーはアフリカに学校を5つも建てたのか、ハコモノ神話の国

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【3/4 22:59 追記】 

日本ユニセフ協会から正式なコメントが出たので、載せるのがフェアだと思うので掲載いたします。

ご寄付いただいたみなさまの個人情報の保護について(2016年2月発売の週刊誌記事に関連して)|日本ユニセフ協会|お知らせ

とすると、このコメントが事実とするならば、①週刊新潮の捏造、②元日本ユニセフ協会職員(バイト・契約社員含む)からの漏洩、③協会職員の親族からの何か、といった可能性が残るでしょうか。記事にも既に書きましたが、私は②がアヤシイかなと思ってます。

「自分、ユニセフで働いていたんすけど、ベッキーも募金してたんすよ!アフリカに学校5つたっちゃうみたいな。ベッキー心配っす」

というやりとりがあったかもしれませんが、真相は藪の中です。

 

ベッキーの不倫騒動はそういえばそろそろ二ヶ月も経つんだということも忘れそうなほど、ホットな話題で、最近はベッキー擁護な雰囲気も感じます。そんな折の記事。

 

【嘘!?】ベッキー、ユニセフ募金でアフリカに5つも校舎を建てていた!→ その学校の写真をご覧くださいwwwやばいぞwww(画像あり) : NEWSまとめもりー|2chまとめブログ

megalodon.jp

(元記事ふみたくない方は魚拓もとりました)

 

週刊新潮3月3日号の記事に、ベッキーがユニセフに募金をし続け、そのおかげでアフリカに5つも校舎を建てることができたという話。まあネットの情報というのはデマばかりで、とりあえず上記リンク先のレスに載っている写真が「ベッキーが建てた学校の写真」というのは非常に疑わしい。というか一つはアフリカでもない*1

写真はともかく、私が何となくヘンだなあと思ったのは、ユニセフは基本的に用途を指定しての募金集めはしないので*2、「ベッキーの募金で校舎が建つ」という表現はおかしいのではないかなあと疑ったからでございます。

 

今回は、本当にそんな募金は存在するのか?という話と、じゃあいったいいくら募金したんだ?というゲスな感じで記事を書いていこうかと思います。

  

***

1.週刊新潮の記事を正確に読む 

そもそも今回の話、「5つ校舎を建てた」のか「5つ学校を建てた」のかで話も金額も変わってくると思うのですが、どうも混在しているので、元ネタの週刊新潮を読んでみました。アフィリエイトはまだはってないので、踏んでも大丈夫ですよ。

 

週刊新潮 2016年 3/3 号 [雑誌]

週刊新潮 2016年 3/3 号 [雑誌]

 

 

で、肝心の記事を読んでみると、アフリカの話に触れているのはほんの数行で、記事としては「仕事が激減したベッキーはこれからどうなる?」みたいな感じでした。その中に、ベッキーを心配している人もいるんですよーということで、このアフリカの校舎の話が出てきたのでした。

 

話としては、「ユニセフ関係者」が、ベッキーが「ユニセフに自ら連絡をしてコツコツ募金を続けて」きていたことを暴露し、そのおかげで「アフリカなど校舎が5つ建設」されたということだそうです。

 

この記事からわかることは3つ。

①ベッキーは個人的な募金を長期的にしていた(親善大使的な役割ではなく)。

②募金先はユニセフである。

③その募金によってアフリカやそれ以外の地域にも校舎が5つ建てられた。

こうなると、いったいどういう形で募金をしたのでしょうか。

 

2.ユニセフへの募金方法を考える 

 

日本のユニセフの窓口は日本ユニセフ協会なので*3、そちらをあたってみます*4

 

www.unicef.or.jp

 

基本的には、ユニセフへの募金は「150以上の国と地域で活動するユニセフ全体の事業資金へ充てられます*5とのことですので、国や事業を指定しての募金はできません。つまり何が言いたいかというと、「ベッキーの募金でアフリカに校舎が建った」という言い方はヘンだということです。だって、そういう事業を指定しての募金はできないんだから。

 

ただし、例外はあって、「相当規模のご支援(1つのプロジェクトを単独で支えていただける程度)を複数年に渡りお約束いただける場合は、特定のプロジェクトをご指定いただくことが可能です」*6とあります。

 

ならばベッキーは、そのような形での巨額の支援をしていたのか?という気にもなってきて、どんだけ金持ちなんだという感じですが、ユニセフのプロジェクトで校舎がたった5つしか建たないのはヘンですし、しかもこういうプロジェクトはその国の抱える問題にあわせて立てられるので、地域を指定しなければ意味がない*7。なので、アフリカ以外にも建っているというのがよくわかりません。絶対に違うとまでは言いませんが、ちょっと考えにくい話です。それに「コツコツ募金してきた」という表現が、あんまりこういう大きいお金と結びつかない気もします。

 

とすると、一般の人と同じような募金をしていた、ということになるかと思います。しかしそれでは、校舎が5つ建った話がよくわからない。と思って探してみたら、ユニセフのこんなプロジェクトがありました。

www2.unicef.or.jp

「スクール・フォー・アフリカ」というプログラムで、「“子どもにやさしい学校づくり”の拡大を促進するプログラム」とのことです。支援対象国はアフリカの13カ国で、日本からの募金はブルキナファソにいくとのこと。募金の使い道は教育関係のみで、「学校を建てる」こともその中に入っているし。

 

それによれば、「月3500円のご支援」が「1年」で、「1人の子ども」が「子どもにやさしい小学校」に通えるようになるとのこと。この「3500円」という金額は、「180人が通える学校1校を建設した場合の1人あたりの金額」とのことですので、仮にベッキーがこのプログラムに募金をしていたとして、計算すると、

 

3500円×12ヶ月×180人=7560000円

 

となります。これが5校なので、5倍すると、37800000円。一、十、百・・・3780万円ですか。おお。これだけ寄付してたら、ちょっと許してあげればいいんじゃない?

 

ああ、でもダメだ。記事には「アフリカなど」って記載があるんだから、これではアフリカ限定になってしまいます。それに、このプログラムは校舎の建設以外にもお金がかかっているから、ちょっとニュアンスが違うか。

 

3.「5つの校舎建設費用相当額」と考える 

 

こうなると、「アフリカなどに校舎が5つ建設された」という発言そのものを疑いたくなります。これはもしかすると、「アフリカなどに校舎が5つ建設されるぐらいの募金をしてもらった」ということなんじゃなかろうか? これならば、募金の形態はどうであろうと構いません。

 

この仮説にたって募金の額を考えたいのですが、いかんせん国によって物価が違うのでなんともわかりません。仕方がないので、明記されているアフリカにしぼってみます。

 

しかしアフリカと言っても50以上の国があり、それぞれ状況が違うんだからなんともしがたいんですが、こんな資料を見つけました。

Education for All: Building (リンク先PDF)

WorldBankが2003年に出したもので、Classroomの建設コストの各地域の移り変わりから支援の展望を書いているものなのですが、そこに平均的な額が載っています。アフリカでは1980年代に比べれば建設コストは下がっているようで、約7000USD*8とのこと。2003年の相場で考えると*9839300円。これが5つ分になるので、4196500円。約420万円。おお、なんか現実味のある数字になってきました*10

 

4.今回のまとめ 

 

以上のように、「ユニセフを通してアフリカなどに校舎を5つ建設した」という発言は少々疑わしいと思います。理由としては、

○原則的に事業を指定しての募金はユニセフでは行っていない。

○例外的な募金もあるが、プロジェクトの規模や地域から、いくつか矛盾が生じる。

○仮に校舎建設費用相当額を募金したとして、アフリカ地域に限定するならば、およそ420万円ほど募金したということになる。

となります。

 

個人的によくないと思うのが、このユニセフ関係者のコンプライアンスの低さです。欧米諸国では、セレブリティは募金に顔出しが普通ではあるのですが、日本では未だに匿名が好まれる傾向にあります。ダチョウ倶楽部じゃないんだから、「絶対に言わないでくれ」といわれているものを暴露するのは、どうなんでしょう?仮にこの関係者が日本ユニセフ協会の職員なら、協会の定める「個人情報の保護」に抵触する気がします*11。まあさすがに一時バイトしてた人とか、そんな感じだとは思いますが。

 

そして、この記者の書きぶりにも、日本にある「ハコモノ神話」的なにおいを感じます。どうも「国際貢献」「国際協力」という単語について、未だに日本では、「井戸掘り」とか「学校建設」といったイメージがはびこっていないでしょうか。とりあえず学校つくっとけば美談になる、みたいな。

 

しかし、大切なのは、作られたハコモノを、どのように運用していくかです。だからこそ、国際協力の様々なプロジェクトには技術移転や人材育成、意識向上と言った項目が並んでいるのであり、これらは互いに関わりあって遂行されていきます。美談を本当に美談にするためには、お金だけでは動かない部分も、重要になってくるのです。やっぱりアフリカは、遠い国なんですねえ。

 

*1:

http://livedoor.4.blogimg.jp/akb48matomemory/imgs/0/e/0eb43981.jpg

 

こちらの写真はケニアのロキチョギオの私立学校とのこと(asahi.com:日が暮れてからも、蛍光灯一つで勉強する私立学校の生徒たち。)。ユニセフ支援の学校かは不明、というか、調べる手立てがないので、どうしてこの画像をあげたのか。

http://livedoor.4.blogimg.jp/akb48matomemory/imgs/9/4/946e6fd0.jpg

 

もう一つはラオスの写真(アジアで学校を創る)。村人たちが自分たちで作った学校とのこと。こういう経緯を知らないで無作為に画像検索で選んだものを載せる姿勢にはなかなか腹が立ちます

*2:これは原則の話で、災害の緊急支援や、後述する巨額の支援の場合・特別なプログラムの場合は、用途が指定されます

*3:という名前を出すと条件反射的に「詐欺」という言葉を思い出す人がいるようですが、まあそろそろ落ち着きましょう。当ブログ記事も参照ください。と、ちゃっかり宣伝。

ibenzo.hatenablog.com

*4:もしかするとベッキーは海外つながりで、イギリスなりアメリカなりのユニセフ国内委員会経由なのかもしれないですが、まあそれを言うときりがないので・・・

*5:Q 国や事業を指定した募金をすることができますか?

よくあるご質問 | 日本ユニセフ協会

*6:Q 国や事業を指定した募金をすることができますか?

よくあるご質問 | 日本ユニセフ協会

*7:たとえば、こんなプロジェクト。

UNICEF | Educate a Child

コンゴの子どもたちに公正な初等教育の提供、とかチャドでの基礎教育の活性化、とか。普通、国際協力のプロジェクトは、校舎を建てればはいオシマイ、という話ではありません

*8: At current costs of about $7000 per classroom in Africa,

*9:2003年1月1日の値、1USD=119.9で計算。下記を参照しました。

米ドル対円相場(仲値) 一覧表 (2003年) | 七十七銀行

*10:ちなみに、他のページも調べてみました。

たとえばケニアのウサラマという地区の場合。

Building Classrooms in Usalama, Kenya | afritekt

上記によれば、6m×8mの教室を作るのに7000USDとのことなので、いっしょですね。

他にも、ジンバブエのマガヤの小学校建設費用は7250USD。

https://www.globalgiving.org/pfil/10979/projdoc.doc(リンク先Word文書)

7000USDという数字は、なかなか妥当な気がします。

*11:日本ユニセフ協会・個人情報保護について