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ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

【追記】「次期都知事は誰がいい?」と聞かれた女性はサクラなのか、自分だけは騙されない

【6/17追記】

色々と情報が更新されたので、追記するのがスジかと思うので掲載します。

まず、ピースボートから正式に産経新聞に抗議がありました。

当該の女性は熊本にいたので、そこで東京のインタビューを受けられるわけがない、ということです。やっちまいましたな。

その後、その抗議文をのっけただけの、すてきな記事がサンケイぺージにあがりました。

www.sankei.com

自分の記事の抗議文をまた自分の記事にするという、永久機関の発明が、「さすがサンケイ、そこにシビれる、あこがれるゥ」です。

そして、公式にピースボートに謝罪が来たようです。

この方も述べられていますが、今回の問題は産経は論外としても、こうして無自覚に拡散していくことに、無痛覚な人々の存在です。プラトンも嘆くわけです。

【追記終わり】

 

違う局で、同じ人物が「次期都知事」についてインタビューを受けていたので、「サクラではないのか?」というウワサが持ち上がっています。

web.archive.org

以下はすでに削除されています。

www.sankei.com

 

TBSの「Nスタ」と朝日の「スーパーJチャンネル」で、次の都知事候補に「蓮舫」の名前を挙げていた女性が同一人物だとしていることを指摘し*1、且つ、この女性が熊本地震の際に「Nスタ」でレポートしたピースボートの女性に酷似していると「ネット上で」「書き込みが続出した」ことを伝えるレポートです。これに対して「やらせ」ではないかと疑惑の声が「ネット上で」上がっているのです。

 

便所の落書きをコピペして堂々とメディアだと言い張るサンケイさんの姿勢には、なかなか感服するものがありますが、できるだけ検証しましょう。

 

***

 

番組の趣旨は何か

 

TBSの番組は6月15日放送の「Nスタ」ですね。番組の流れは以下の通りです*2

 

ナレーター:辞職願を提出した、舛添知事。次の東京都知事について、街の人に聞いてみると

60代男性:あー…小池さんですか?が、いいんじゃないんですか。まあ、なんかやってくれそうな気がしますね、私はね。

20代女性:蓮舫さんとか、女性にどんどん活躍してもらいたいなあっていう気持ちはありますね。

50代女性:イメージを変えるためには女性で、山崎直子さん。宇宙飛行士の女性って言うのは、まあ、世界的にレベルが高いと思います。宇宙から見てる、地球全体が読めるんではないかな、と。

30代男性:政治家の中にはいないと思ってます。企業の社長さん。自分の会社の社長なんかは遊ばない人だからいいかなあと思いますけどね。あんまり遊んだりする人じゃなさそうなので。まじめな方がいいなあって。

30代女性:ビートたけしさんがいいかなあとは思います。まあ、発信力の強い人に、引っ張っていただいたほうが、まあオリンピックも控えているので、いいのかなあと思います。

20代女性:林先生とかだったら、結構毒舌で面白いかなあと思います。先生として、若い世代と関わりがあるのかなあって、なので、次の日本をしょっていく、人たちの意見も聞きやすいのかなあってところで選びました。

20代男性:橋下さんとか、一番、適任かなあって。

50代男性:大前研一さん。あのー、ものすごく、基本的に頭も良い方だし、あのー、いろんな経済的な考えも持ってらっしゃる方なので。

30代男性:宇都宮さん?弁護士をやられてたから。

(ここで宇都宮さんの前回の都知事選の映像、及び本人のコメント)

 

太字にしたところが、件の女性のコメントなのですが、こうやって番組全体を見るといかがでしょうか、特段、彼女のコメントだけが取り上げられている、というわけではないことがわかります。個人的には、自分の会社の社長を推す青年がむしろ気になります。

 

では、朝日の「スーパーJチャンネル」の方はいかがなのでしょうか。これも番組の内容を確認してみましょう。

 

ナレーター:では、次の東京オリンピックの旗振り役は誰がふさわしいのか。

40代男性:橋下さんですかね。大阪の時にやられたような、ドラスチックな改革があれば、東京都も盛り上がるんじゃないかなあと思います。

20代男性:東国原知事とかもう一回、やったらなあと今一瞬思いました。実際わかんないすけど東国原さんのほうが、なんか政治的にはクリーンなのかなあ

50代女性:いま国会議員をやってる、あのー、女性のあの、小池百合子さんだとか。待機児童だとか、そういう保育面だとか、あと、やっぱり社会保障ですか、こっちの方もしっかりしてもらわないと

20代女性:蓮舫さんです。すごいズバッと物事をおっしゃる方だなって思っているので

ナレーター:さらに、こんな人の名前も挙がった。

70代女性:翔君のお父さん。ははははは。翔君もいいし、嵐大好きだから。

40代男性:まあ、池上さん。説得力あるなっていうのと、あとはあまり裏切るようなことをしなさそうだな、というところで。

(各党の動きについて党代表のコメント集)

ナレーター:都民は、後任候補に、こんな注文をつける。

80代女性:都政に対してね、うそがなく、子育てとかね、あの社会福祉とかね、そういうのを真剣にやってほしいと思います。

70代男性:潔白。ちょっと今のはひどいですよね。

ナレーター:果たして、ポスト舛添は誰になるのか。

 

朝日の方が、街の声がちょっと少なめですが、各年代のコメントを集めました感は出ています。面白いのが、どちらも「小池推し」の後に「蓮舫推し」のコメントを並べるんですね。これは、各種報道で、「小池v.s.蓮舫」が報じられているからでしょう*3。印象操作というなら、こっちの方が印象操作です。

 

いずれにせよ、どちらの番組も、特段「蓮舫推し」という雰囲気は感じられません。なるべく多くの年代の声と「候補」の種類を出した結果、という感じですね。

 

蓮舫票は少なめ

実は、Nスタの方は、街の声の「候補者」の内訳をフリップで紹介していました。内訳は以下の通り。

100人に聞きました!ポスト舛添は誰がいい?

1

いない

49人

2

橋下徹

11人

桜井俊

11人

3

池上彰

5人

4

小池百合子

4人

蓮舫

4人

5

小泉進次郎

3人

6

猪瀬直樹

2人

小泉純一郎

2人

東国原英夫

2人

7

石原慎太郎

1人

宇都宮健児

1人

小渕優子

1人

片山善博

1人

林修

1人

舛添要一

1人

 

「100人に聞きました」という割に、合計が99人になっちゃうところがご愛嬌ですが*4、蓮舫女史は小池さんと同率「4人」なんですね。「マスコミが操作をしている!」というなら、ここももうちょっと増やしてもいいんじゃないかと思いますが、まあ、あんまり目立ちすぎない位置でいい、という意見もあるかもしれませんね。いずれにせよ、番組内でもさらっとした扱いではありました。

 

ダントツの「いない」が目立ちますが、印象操作というなら、たった1人しか「候補」としてあげなかったのに、番組内で十数秒紹介を受け、コメントまで放送された宇都宮健児氏の方が気になります。だいたい、よく「宇都宮」の名前がコメントとしてとれたものです。都民のどれぐらいが彼の名前を覚えていたでしょう?*5

 

メディアに名前があがった人が人口に膾炙する

先ほど挙げた、街の声の候補者ランキングが、どれほど正確なものかはわかりませんが、この表を見て改めて思うのは、メディアの声の大きさです。

特に目立つのが「桜井俊」ですね。橋下さんの認知度はわかりますが、桜井さんの認知度は、ここ数日の報道によるところが大きいでしょう。


www.huffingtonpost.jp

www.daily.co.jp

www.hochi.co.jp

 

結局、この街頭アンケートで、「桜井俊」の名前がのぼるようになったのは*6、こうやってメディアで報道をされたからです。本人に出馬の意向はないようですが、メディアが植えつける「清廉」さというものが、今の都民には受けたのでしょう。それがウソか本当かはともかく、大事なのはイメージであり、そして名前の叫ばれた回数なんです。

 

だとすると、こうやって今、「蓮舫」の名前があちこちでアンチ的とはいえ検索ワードに引っかかることは、ある意味で彼女の存在感を高めていることになります。これは果たして、誰かが望んだことなんでしょうか。

 

サンケイのおかしな記事

それにしても、今回のサンケイの記事はだいぶおかしい。タブロイド的とはいえ、サンケイは「産経新聞」を名乗る大手メディアです。それがこんな怠慢な書き方でいいのか。

 

サンケイが主張するピースボートの女性と似ている点に関しては、記事内ではただただインターネットの主張を載せるだけで、何の裏づけもとっていません。これは記者の怠慢というより、悪意すら感じます。個人的にはこの二者はあまり似ているとは思いませんし、こうやって彼女の名前が裏づけなしに悪意的にあがることは、いわゆる人権から程遠い位置での行いだといわざるをえません。

 

そして、今回私がサンケイの記事で決定的におかしいと思うのが、なぜか「TBS」だけを槍玉にあげていることです。

 

ネットでは「さくらか?」「やらせではないか」とTBSの報道姿勢を疑問視する声が続出している。

 

「ピースボートの職員をやらせに使うTBSはどういう思考回路か」などの書き込みが続出した。

 

同一人物を使うことを「ヤラセ」というならば、非は朝日の方にある可能性も十分あります。だって、どちらが雇った(あるいは両方雇った)サクラかは、この画像だけでは判断できないからです(ピースボートの件があるにせよ)。しかし、サンケイは記事の中で一度だけ「朝日の報道番組」という書き方をしただけで、あとはTBSを断罪するような書き方しかしていません。

 

悪意があると思うのが、最後のTBSとテレ朝の広報部のコメントです。

TBS広報部に問い合わせたところ、「放送した内容についてのお問い合わせにはお答えしておりません」と回答した。

 テレ朝広報部は「(女性は)収録中に偶然通りがかった方です」としている。

このコメントだけ読むと、TBSは何か隠していて、テレ朝は正直に答えているのかな、という印象を持ちませんか?サンケイとアサヒがいったいどういう関係にあるのかはつまびらかではありませんが、これを印象操作といわずしてなんというでしょうか。

 

今日のまとめ

①同一人物とされる女性のコメントは確かに存在するが、数あるコメントの中の一つであり、番組として「蓮舫」推しのようには見えなかった。

②「蓮舫」票はむしろ少なめであり、作為的なのは1票しか入らなかった宇都宮氏のようにも見える。

③「桜井翔」も「蓮舫」も、ここ数日でのメディアの報道の数から、人々の口にのぼりやすい名前となっている。

④サンケイの記事はひたすらTBSに対してネガティブであり、印象操作の感がぬぐえない。

 

一番かわいそうなのが、コメントした女性です。あっという間に彼女の画像は拡散し、関係あるかどうかわからないピースボートの女性まで、色々な経歴やら過去の写真を暴き立てられています。

私は、今回の話題の発端は、6月15日18:34の以下のツイートかなと思います。

 

f:id:ibenzo:20160617022357p:plain

 

 

彼は「 都合が良い意見を選択し報じる一種の情報操作手法なんです」というツイートもしていますが、しかし彼自身もその「情報操作」をしているということにはならないでしょうか。そして彼の情報を鵜呑みにする烏合の衆もまた、「自分だけは騙されない」という旗印のもと、悪意とも「正義」とも似つかない、暗い思いにとりつかれているように見えます。

 

しかし、騙されたっていいじゃないですか。見も知らぬ相手の人生を無邪気に壊すより、私は騙されるほうを選びたいと思います。

 

 

*1:しかし、同じ人なんだから、同じ主張をするのは当たり前のことで、これだけでサクラを疑うのはちょっと疑りぶかすぎです

*2:動画は探すと出てくるのですが、チョサッケンがあるので紹介はしません

*3:たとえば5月25日付けのこちら→舛添氏辞任表明なら小池百合子氏vs蓮舫氏で都知事選か│NEWSポストセブン

*4:恐らく一人、放送倫理的に引っかかるものを挙げたか、あるいは本当にスポンサー的に挙げてはいけない人だったのか。まあ、数なんてわかんないんだからこれぐらい操作しちゃえば良いのに、という気もしますが

*5:彼の名前を挙げた人物こそ、スタッフが用意した人、という可能性だってあります。まあ、本当のところは、まともなコメントをとれた「候補者」が宇都宮氏だけだったというところなんでしょう。

*6:ただ、この街頭アンケートが自由回答なのか、選択式なのか、それでも話は変わってくるとは思うのですが