ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

【訂正】「FREE Tea」を「無料」と勘違いした外国人はいるか、インド人はみんなカレー食べてる

【11/6 追記】

YahooAnswersの回答の訳に誤りがあったので訂正しました。

 

ちょっと前の話題ですが、「FREE Tea」という名称について物議を醸したことがありました。

togetter.com

ポッカが出している「FREE Tea」という紅茶のペットボトルがあるのですが、それをアジア系の外国人が「無料」だと思ってとってしまってひと悶着、という話。

www.pokkasapporo-fb.jp

 

この「FREE」はポッカさんにとっては「ストレスフリー」な意味だったような感じなのですが、英語圏の人にとって「FREE Tea」と来たら、「無料」の意味に捉えてしまったということでしょう。ツイート主は、このデザインを変えたほうがいい、というような結論をしています。

 

うーん、私も「FREE Tea」という表現を読んだら、確かに「無料」と捉えるか、あるいは、「砂糖か何か」が入っていないというどちらかの意味として考えるかな、と思います。しかし、だからといって、無頓着にとるかなあという感じもするので、そういうニュアンスを探ってみました。

 

***

 

 

いろいろな「FREE ○○」

 

よくあるのが、「FREE TEA DAY」というやつで、お店のキャンペーンで、ある期間、紅茶が無料で飲めるよ、というものです。

McAlister's Deli Free Tea Day 2016

Teapigs' Routemaster bus to return for free tea day

 

他にも、「FREE COFFEE」とか、

www.library.arizona.edu

「FREE SNACKS」とか、

www.usatoday.com

 

頭に「FREE」と来たら、まあまず英語圏の人は「無料の何か」ということを確かに想像するでしょう。あとは「(SUGAR)-FREE」とか「(GLUTEN)-FREE」とか、何かが略されていると考えるか。

 

英語圏の人はどう考えるか

とまあ、ジャパニーズの私が書いても説得力がないので、英語圏の人に聞きたいところです。アメリカのYahoo知恵袋にわざわざ質問を立てて、今回の件を聞いてみました。

answers.yahoo.com

 

日本では「FREE TEA」を無料だと勘違いしてとってしまった外国の人がいるんだけど、それってどう思う?ということを聞きました。

 

3件しか回答がもらえなかったのであれなんですが、総じて皆さん、「とったやつに落ち度がある」という回答でした。下記に訂正しますが、Louisさんの回答は「a foreigner」とあるので、外国人一般について語っています。なので、擁護とみたほうがいいので、訂正します。2:1になったわけですが、しかしもう少しサンプルが欲しいところです。

 

Louis Irvingさんは、「その外国人のしでかしたケアレスミスだ」外国人なら全く簡単に起こりうるミスだ」と書いており、 Paulhさんは、「持ち出す前に店員に聞けばよかった」と答え、Madame Mさんからは「その行動は悪いと思うけど、Freeには様々な意味があるから、『名前はFREEだけど**円かかるよ』ぐらい知らせとけばよかったかもね」という回答を頂きました。みなさんありがとうございます。

 

Madame Mさんは続けて、「これは都市伝説じゃないかしら」と疑義を挟んでいます。「本当の”FREE TEA”なら、写真のようなラベルの仕方はしない」で「無料サービス」だとわかるような掲示をするんでないの、というようなことを書いています。ふーむ、ためになりますな。

 

Madame Mさんの感覚がどれだけ、英語圏の人間の一般的な感覚に近いかはわかりかねますが、3人の回答からは、常識的な人間であるならば、「FREE」と書いてある商品があるだけで、「無料」と即断してとらないだろう、という感じがうかがえます。今回の件は「アジア系の外国人」ということですが、むしろ母語が英語でない人の方が、本来であればこういうことには慎重になりそうな気もするんですけどね*1。何かその国の文化的な要因もあるのかもしれませんが、私はその人自身の特性であると考えます。

 

他にも「FREE TEA」は存在する

ちなみに、他の国にも「FREE TEA」という商品名の飲み物が存在します。

 

rpp.pe

 

AJEという南米の飲料会社が出していた飲料のようで、健康志向のお茶のようです*2。AJEのホームページを確認すると、既に販売は終了しているようなのですが*3、2009年に発売されたそれは、結構売り上げがよかったんだとか。一体何が「Free」なのかはちょっとよくわからなかったのですが、果たしてこのお茶も、「無料」だと誤解されたんでしょうかねえ。少なくとも調べた限りでそのような「紛らわしいからやめろ」という訴えはありませんでした。

 

また、TEAではなくBEERですが、「FREE BEER」というものも存在します。

 

http://freebeer.org/blog/wp-content/plugins/nik_0039_edit.jpg

FREE BEER

 

これは、コペンハーゲン大学のアーティスト集団が考えた「オープンソース」のビールだそうで、ラベルやらレシピやらがチョサッケンフリーで公開されているんだとか*4。面白い取組みがあるんですね。

 

要するに何がいいたいかというと、キャンペーン的な「FREE」と、商品名の「FREE」というのは、そんなに取り違えないんじゃないかなあということです。

 

 

今日のまとめ

①「FREE ○○」とくれば、確かに「無料の○○」という捉え方をするだろう。

②ただ、確認せずにすぐにとってしまう行動は軽率であるといえ、国というよりその人自身の特性ではないか、と考えられる。

③南米には過去に「Free Tea」というペットボトル飲料が発売されており、調べた限りではそれで万引き事件がおきたという記載はない。

④「FREE BEER」という商品も存在するが、商品名とキャンペーンの「FREE」を容易に混同するのか、という気がする。

 

今回のツイートは、YahooAnswersでも指摘があったとおり「都市伝説では」というような反応も多いのですが*5、私は別にそうは思いません(というか判断ができない)。ただ、やはり一般的な見地から、今回の外国の方の行動は軽率であり、もうちょっと確認するとか、そういったことができたんでねえのという気はします。彼(彼女)を悪人と見るならば、万引きでつかまった言い訳とも考えられますが、それはうがちすぎというものでしょう。

 

私が今回の記事で言いたいのは、一見、「国際理解」に富んだ行動と思われることも、その対象の行動が文化によるものなのか個人的性質によるものなのかというのは、冷静に吟味される必要があるということです。「FREE」と書いてあれば外国人は誰でも無料と勘違いしてもっていく、という発想は、「インド人はみんなカレー食べてる」という発想と、思考のプロセスは同じです。ひとつの事例を、全ての類する人間に当てはめないようにする。これは易しいようでなかなか難しいことなので、私も今後気をつけたいなあと教訓として思ったという、今回の一件でございました。

 

*1:ソースが出せないので記事内には載せませんが、現地に住むアメリカ人とフィリピン人の友人に同じように尋ねたところ、「普通はありえない」という回答でした

*2:Living in Peru » News » Demand for healthy beverages in Peru is growing faster than for soda

*3:https://www.ajegroup.com/brands/

「Cool Tea」になったのかな?

*4:Free Beer - Wikipedia

*5:諸々の反応には「ビールの缶にFREEって書かれていたら外国人が無料だと理解して失敬するってツイートを以前読んだ事がある」とか「ノンアルコールの「FREE」は発売当初、まだノンアルビールの存在が浸透してなかった事で「試供品」と勘違いして持っていこうとする日本人もいた」とか、新たな真偽不明のネットロアが生み出されているなあという感じです