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ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

くわばたりえの福島県産の米の話をもう少し正確に、君はアイヒマンにならないのか

本業が忙しくて滞っておりました。あっという間に3月ですね。

 

この時期になると、やはり震災の話題が多く出てきますが、今日はくわばたりえの、福島県産の米を買いにくい、という話から。

 

news.livedoor.com

 

あさイチで、福島県産の米は放射性物質が99.99%検出されなかったにも関わらず、苦戦を強いられているという内容を受けて、彼女が「みんな買ってないから、私も買わんとこう」という心理が働いたという話に、賛否両論が出ています。曰く、これが消費者の目線だという発言もあれば、彼女のような存在が風評被害を広げるんだとか、云々。

 

ただ、発言だけが独り歩きしている感もありましたので、正確な彼女の発言から、もう少していねいにみとっていきたいと思います。

 

 

***

 

くわばたの発言について

 

まず、彼女の発言は、福島県産米の販売が低調であるというVTRを受けてです。

ざっくり概要を言うと、

 

・スーパーの特売で、福島県産米を普段より300円安く販売した。

・お米を購入した73人中、福島県産を購入したのは20人。

・震災後、福島県産米の売上は4割減。

・全量全袋検査を行い、2年前からすべて基準値以下を示している。

 

という内容でした。

 

くわばたの発言をそのまま書くと、以下の通り。

 

くわばた「なんか、私は「福島米食べてます」って言えない自分もいるし…

 

この前スーパー行った時、売ってたんです、ちょっと安くて。でも、買わなかった、安いのに。なぜかといったら、いっぱい並んでんのに、減ってないんですよ。となりの、二百円ぐらい高いほうが、減っている、お米が。

 

じゃあ、みんな買ってないから、私も買わんとこう、っていうのがどっかであったり…とか、あって

 

じゃあ、あたし、このお米を買うには、自分がどうしたら何も躊躇なく買うかなと思ったときに、そしたら、こういう番組で、福島米すっごい食べるようになりましたーとか、プラスなことがあったら、そうなん、じゃああたしも食べようって、単純になるのかなとか…

 

こういうのばっかりやってると、さらに食べんとこ、って思う反面、でもあんなに検査したら、どんどん基準値ほとんどもう、全然大丈夫ですって、あ、そうなんやって思ってるけど、食べない人の方が多いんだって思うと、「あ、じゃあ…」ってなる自分がいたりとか…

 

発言を書き起こしましたが、彼女はだいぶ慎重に、というか、迷いながら発言しているのがわかります。決して、「私は福島県産のお米を買いたくありません」という単純な発言ではないことがわかります*1

 

くわばたは、その後もこの問題を考えていたのか、福島の魚の話の後で、こう発言しています。

 

くわばた「どうやったらみんな買うかなって、考えてたんですよ。なんか躊躇無く。逆に、あたしが、どうやったらなんにも考えんと、福島とか何にも思わずに、魚を手に取るかな、お米を手に取るかなって・・・」

 

結局、くわばたは、自分の考えが合理的ではないとわかっていながらも、「そう思ってしまう」自分に歯がゆさを感じているわけです。これはもしかすると、多くの日本に住む人が感じていることの一端を示しているんではないでしょうか。

 

津田塾大学の萱野教授は、コメンテーターとして、次のように発言しています。

 

専門家もかなり困っているというか、どうしたらいいか頭を悩ませてるんですよ。やっぱり専門家は、これだけ基準値を全然こえてないですよ、全く放射性物質は検出されませんよ、ていうところまでしか言えないし、それを言えばみんなナットクしてくれるって思っちゃうんですよね。科学的な事実がこれですよって。でも、人々はそれを知っただけでは、やっぱり行動も変わらないし、本当にじゃあ、そこから「安心感」までいくかっていうと、なかなかいかないですよね。ここの溝をどうやって埋めたらいいのかっていうのは、学者の間でも悩んでいて、みなさんからアイデアを頂きたいぐらいなんですよ

 

うーん、非常に難しいんですねえ。

 

放射性物質の検査を知っているかどうかについて

ちょっと話は変わりますが、番組では、くわばたの発言を受けて、消費者庁の調査を出してきました。

 

放射性物質の検査自体、行われていることを知らないという人がどのぐらいいるかといいますと、34.8%。あれだけ検査しているのに、その事実を知らない方たちがいる。

 

情報が知られないことも問題ではないのか、という話がそのあと続くのですが、私はこの数字の持ってきかたはちょっとずれているなと感じました。

 

これはなんの調査かと言うと、平成28年に、消費者庁が「風評被害に関する消費者意識の実態調査」ということで、平成25年から行われている、今回で7回目の調査です。

 

風評被害に関する消費者意識の実態調査(第7回)について

http://www.caa.go.jp/earthquake/understanding_food_and_radiation/pdf/160310kouhyou_1.pdf

 

 

上記の概要を読むとわかるのですが、実は、放射性物質の検査を知らない人の割合は、1回目の時は22.4%だったものが、7回目は36.7%と増加しているんですね。

 

・Q13 検査が行われていることを知らない :
22.4→26.1→26.9→25.9→24.5→34.7→36.7%

 

5回目(平成27年2月)と、6回目(同年8月)の急増具合が気になるところですが、要するに、震災直後(とはいっても2年後ですが)は放射性物質の検査について関心を持っていたものが、時間が経つにつれて忘れられていってしまった(日常化してしまった)、というところでしょう。

 

しかし、「食品を買うことをためらう産地」の「福島県」は、第1回に比べて(19.4%)第7回は15.7%と微減しているんですね。

 

f:id:ibenzo:20170309011125p:plain

風評被害に関する消費者意識の実態調査(第7回)について
http://www.caa.go.jp/earthquake/understanding_food_and_radiation/pdf/160310kouhyou_1.pdf(P13)

 

もちろん、簡単に因果関係で見てはいけないんですが、果たして検査の周知性といわゆる「風評被害」というものに、どれだけ相関があるというのかは微妙なところだという気もします。番組内でも述べられていましたが、中には「検査をする」という事自体に「検査をするという事はやはり危険なのでは」と考える人もいて、検査したから百パーセント大丈夫です、だけではやはりこの問題は解決しないと感じました。

 

同調行動のようなもの

今日はまとめは書きませんが、「みんな買わないから買わない」という心理は、心理学で言うところの同調行動なのかなあと思いました。

 

hs.ch.tyg.jp

 

いわゆる「ミルグラム実験」というものが有名ですが、平凡な人間も、一定の条件化では残酷な行為を行うというやつです。

 

 

私が今回感じたのは、くわばたを無条件で批判する人は、果たしてそこまで自身の「合理的判断」というものに自信を持てるのでしょうか。引き合いに出すのが正しいかわかりませんが、結局、「大安」も「仏滅」も、そんなの何の根拠もないことだと知ってるのに、結婚式やら葬式やらの日取りをなんとなくそれにあわせて世の中が動いているように、果たしてそれらに対して全てNOを言えるのでしょうか。「そういう合理的判断ができない人は愚かだ」と決め付けるのは簡単ですが、しかし我々はそこまで徹頭徹尾、賢く理知的に生きられているものでしょうか。明日は仕事があるっていうのに、遅くまでお酒を飲んだり、ブログを書いたりすることだってみなさん、あるんじゃないんですか? 月並みですが、「いろんな考え方をするひとがいるんだ」という世界を認めるところが、出発点な気がします。

 

他の方も挙げられていましたが、私はこの番組の中で、有働アナウンサーの発言が愁眉だと思いました。

 

有働「くわばたさんのお話から言うと、私はこれ見よがしの正義感で福島の野菜を買ったら、すごくおいしいんですよ。今風評被害をひっくり返そうというので、無農薬でおいしいのを作っているので、おいしいから買うって言うのになるんですけど、なんか、その最初の一歩のところですよね」

 

 

結局、「福島産だから買わない」という人も、「福島産だから買うんだ」という人も、視点としては同じなんだと思います。「福島」というイメージで選択をしているわけです。それが「これ見よがしの正義感」になるか「単なる無知」になるかはたいした違いではありません。そのイメージにとらわれないで、「おいしい」とか、そういう普通の価値基準で選べるようになるためには、ああ、そうですね、時間を味方につけるしかない*2。以上、今日は気になって書き出したのですが、いまいちまとまりませんでした。

 

 

*1:ゴゴツーの記事なんかは、タイトル詐欺っぽい感じですね

NHKの番組でくわばたりえが「福島の米は買いたくない」と発言し賛否両論 | ゴゴ通信

*2:これは萱野教授も言及していて、彼は「広島や長崎」を引き合いに出していました