【10/10追記】
ギネスに関して情報を追加しました。
たけのこがおいしい季節です。旬は素材を輝かせます。
さて、今日はたぶんそんなに旬ではないさかなクンさんについてです。
もはやいつの話題だという、しかもさっぱり話題になっていない映画についての記事を引っ張ってきました。加えてこれは人種差別的ではないかという物言いまでついたのでさかなクンも大変ですね。
さて、さかなクンの話題になると、必ず出るのが彼の超人的なエピソード集です。
色々なバージョンがあるのですが、よく目にするのは以下の感じでしょうか。
全盛期のさかなクン伝説
* 父親は囲碁棋士。さかなクンさん自身の棋力もプロ棋士レベル
* 「左ヒラメに右カレイ」というヒラメとカレイの見分け方を発見したのはさかなクンさん(小4の夏休みの研究)
* 中学時代は水槽学と間違えて吹奏楽部に入部。しかしソロサックスで金賞受賞経験有
* 中学校3年生の時に学校で飼育していたカブトガニの人工孵化に成功
* TVチャンピオンで5連覇して殿堂は序の口
* さかな漢字258文字検定1級保持者(1級の合格者は2009年現在でさかなクンさん一人だけ)
* 魚を食べる事に関しても大好きで、ひそかにギネスの「人類で最も多くの魚類を食べた」記録保持者(3228種)
* 浜崎あゆみに対して「【鮎】という魚の偉大さとは不釣り合いだから改名しろ」と一刀両断
* ディスカバリーチャンネル、「深海の謎を追え」ではイギリスの潜水探査船チームからも名前が上がるほど
* フグの毒、テトロドトキシンに対して抗体が出来ているただ一人の人間としてWHO(世界保健機関)に記録されている
* さかなクンさんの初代本体(上の帽子)はサザビーズオークションに出品され、約340万円で落札された(落札金は全額寄付)
* 松方弘樹が巨大クロマグロを釣り上げたのは有名だが、それを落札したのはさかなクンさん
* 釣りバカ日誌には初代から特別監修としてさかなクンさんの名前(本名)が載っている
* 実は現存の約1割の魚の発見者がさかなクンさん。まさに現代版トリコ
よーく考えると、おかしな話がいっぱいあるのですが、「いや、さかなクンならありうる」と思わせてしまうところが彼のすごいところなんでしょう。
まあ、一応真偽について調べたことは記載します。
全盛期のさかなクン伝説
* 父親は囲碁棋士。さかなクンさん自身の棋力もプロ棋士レベル
→父親は宮沢吾朗九段。ただし棋力はプロではないでしょう。
* 「左ヒラメに右カレイ」というヒラメとカレイの見分け方を発見したのはさかなクンさん(小4の夏休みの研究)
→私が子どものころにばっちゃがすでに言っていたので違うと思います。
* 中学時代は水槽学と間違えて吹奏楽部に入部。しかしソロサックスで金賞受賞経験有
→吹奏楽部に入部のくだりは本当。時折見かけるイケメン写真も、Facebookに自身で載せたものです。ただし金賞受賞は出典見つけられず。しかもサックスではなくバスクラリネット。
* 中学校3年生の時に学校で飼育していたカブトガニの人工孵化に成功
→産経新聞1990年10月21日版に「僕たちの”生きた学習”」というタイトルで掲載されています。さかなクンひとりではなく、教師と同級生と共にという書きぶりです。
* TVチャンピオンで5連覇して殿堂は序の口
→これは本当ですね。Youtubeあたりで探してみてください。
* さかな漢字258文字検定1級保持者(1級の合格者は2009年現在でさかなクンさん一人だけ)
→そんな検定は存在しません。ただしPanasonicのサイトに「難読漢字検定」なるものがあって、正答数によって級は変わります。ついでに魚へんの漢字ということであれば、手元の辞典をみたら600以上ありました。
* 魚を食べる事に関しても大好きで、ひそかにギネスの「人類で最も多くの魚類を食べた」記録保持者(3228種)
→ギネスは基本的にその瞬間の記録をとるので、そういう長年の経過を見る記録は掲載しません。
【10/10追記】
魚類を食べた話ではありませんが、世界最大のフィンガープリンティングのイラスト作成ということで、今年の5月6日にギネス認定されたようです。
http://getnews.jp/archives/944990
この場合のギネス保持者が誰かはわかりませんが。しかし、伝説を現実に刷るなんてカッコイイですね!
* 浜崎あゆみに対して「【鮎】という魚の偉大さとは不釣り合いだから改名しろ」と一刀両断
→出典が見つけられませんでした。
* ディスカバリーチャンネル、「深海の謎を追え」ではイギリスの潜水探査船チームからも名前が上がるほど
→1998年放送の「Deep Sea」の放送時のタイトルが「深海の謎を探る」というものらしいですが、さかなクンはまだ23歳でうだつのあがらないアルバイトをしていたころなので、さすがに海外にまでその声は届かないと思います。恐らく、「BBC Three」の
が曲解されたのではないかと。内容はコメディアンがJapanの色々な紹介をするコーナーで、魚を食べて何の魚か絵に描いて当てようというものでした。英語と日本語でやりとりするちぐはぐな対応で、なんでさかなクンが呼ばれたのかすごい不思議です。
* フグの毒、テトロドトキシンに対して抗体が出来ているただ一人の人間としてWHO(世界保健機関)に記録されている
→WHOはそういう記録はとりません。
* さかなクンさんの初代本体(上の帽子)はサザビーズオークションに出品され、約340万円で落札された(落札金は全額寄付)
→サザビーズオークションの歴代出品を見たわけではありませんが、まあ、嘘でしょう。
* 松方弘樹が巨大クロマグロを釣り上げたのは有名だが、それを落札したのはさかなクンさん
→出典わかりません。
* 釣りバカ日誌には初代から特別監修としてさかなクンさんの名前(本名)が載っている
→初代は1988年公開なので、まださかなクンは13歳です。
* 実は現存の約1割の魚の発見者がさかなクンさん。まさに現代版トリコ
→1割って相当です。このサイトによると、魚は2万種類ぐらいいるのではないかといわれているので2000種類をさかなクンが見つけたことになります。日本だけで3000種類といわれているので、ちょっと無理じゃないでしょうか。
さて、気になるのが、このコピペがいったいいつ作られたかです。
これがなかなか調べるのが難しい。
2010年12月15日には、クニマスの発見の話題が出ており、その話題の中で上記のコピペも常識として出ています。となると、これより前です。
2010年10月24日は、「ただただ好きなコピペを貼る」というスレで、上記の伝説がのっけられており、これより前になると検索に引っかからなくなるため、ここら辺が初出に近いのかもしれません。2008年や2009年のさかなクンの記事にはさっぱり出てこないので。
それだけだと面白くないので、一応推理しましょう。
前述した10月24日のコピペはもっと長く、そこに、「最近の主な仕事はシーシェパードの妨害阻止」というものがあります。「最近」という言葉に注目します。シーシェパードが話題になり始めた時期は、2008年~2009年のはじめごろの捕鯨船に関する妨害活動です。らばQさんあたりがその頃記事にもしていますね。
そしてもう一度話題に出る時期が、船長が逮捕された2010年3月12日です。最初の08~09年のあたりでは、さかなクンの記事に対して何のコピペも貼られていないことを考えると、やはりこのコピペが作られたのは2010年3月以降ということになるんではないでしょうか。
さて、このネタは、「全盛期」ネタとして、2ちゃんねるのガイドライン板で作られたもののようです。恐らくですが、初出としては「全盛期のイチロー」ネタとして作られたものだと思います。(2007年ぐらいですね)
いわゆる「話を盛る」という行為を、古来から人類は行ってきました。お釈迦様の歯が40本あったとか、キリストが増やしたパンとか、信長の鉄砲云々の話とか、チンギスハンは義経とか。様々な思惑の元、人々は伝説を加えていきます。そこに必要なのは伝説の合理性ではなく、物語性です。要するに面白ければいいんです。そして伝説を作るのは基本的には名もなき庶民です。庶民があこがれるのは自分には手の届かない存在です。それが昔は、英雄や指導者であり、そして彼らはその伝説を請け負う役目を背負っていました。
そして英雄や絶対的指導者のいなくなった現代において、伝説を求められるのは専門に特化した人たちとなります。それがこの「全盛期」コピペに現れる、羽生さんやイチローや室伏や、そういう「プロ」の人たちになるのでしょう。まあ、「プロ」にとっては、無責任に思われる話かもしれません。それでも私は、いつの世も人が求めるものは変わらないんだなあと、しみじみ思います。
もうひとつ、彼らに共通していることは何か。それは自伝がないことです。弟子や側近や部下や記者が書いたものではやっぱり色々脚色されちゃうんですよ。
さかなクンの伝説の多くは「情熱大陸」と、自身がメディアで発言したもろもろによって構成されています。ぜひ伝説に終止符をうつためにも、さかなクン、自伝を書きましょう!