ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

賛成の反対は反対、反対の反対は賛成、私は意見を持っていない

ソクラテスは弟子のプラトンに言ったそうです。

 

「哲学者になりたければ、政治には関わるな」

 

大阪都構想という住民投票は、彼岸の立場から見れば、イデオロギーの代理戦争のようなもので、なかなか興味深いものでありました。私がこの記事を書いている時点ではまだ結果は出ておりませんが、ちょっと気になるものを見つけたのであげときます。

 

大阪都構想反対理由が話題wwwwwwww | 2ちゃんねるスレッドまとめブログ - アルファルファモザイク

 

warotanikki.com

画像は貼りませんが、女性が手を前に出してストップしているイラストに、以下のような文言が載っております。

 

大阪都構想反対理由「橋下氏の政策だから」25% 

賛成派の方はいろいろ言われますが

橋下さんが信頼できない

それが反対理由で

いいと思います

嘘をつく、人を見下す

説明しない・・・

社会人としてダメ!

 

スレッドの文脈としては、「そんな理由で反対でいいのかよ」というような感じでした。まあ、初見も私はそう思いました。

 

 

しかしすっかり疑り深くなった私は、果たしてこのビラ(ポスター?)は本当に反対派が作ったものなのか、と思いました。だって、「あいつキライだから反対」なんて理由、学級会だったら「せんせーちょっと男子がー」と、絶対に槍玉にあげられるヤツじゃないすか。「しばらくヤマダくんとうちら女子は口きいちゃだめだからね」とか後で言われちゃう悲しい小学校時代の記憶が蘇ります。

つまり、これは反対派が作成したに見せかけた、賛成派のネガティブキャンペーンなのではないか…

このストーリーなら記事が一本かけるぞと思った私は、さっそくこのビラの出所を探し始めました。

 

 

まずは、そもそも「大阪都構想反対理由「橋下氏の政策だから」25%」の世論調査が存在するかどうか調べます。ビラには「朝日新聞世論調査5/9、10実施」とあるので、早速検索すると引っかかりました。

www.asahi.com

記事によると、「「反対」と答えた人の理由は「住民サービスがよくならないから」27%、「橋下市長の政策だから」25%などに分散した」とあり、詳細な結果のページにもそれが書いてあるので、この世論調査自体は存在しています。

 

では、画像の出所はどこなのか。

 

2ちゃんねるのスレッド自体は5月17日の0時44分に立ち上がっています。これより前の画像を探せばいいわけです。

お決まりのGoogle画像検索をかけましたが、いまいちひっかかりません。文言で探したりしましたが、なかなか香しいサイトばかりがひっかかってお腹がいっぱいになってきたので、twitterに絞って検索してみることにしました。

そうすると、いくつかこの画像を掲げてツイートしているものが引っかかりました。その中で、5月16日21時23分で、同じ画像を使ってツイートしているものが見つかりました。*1

これより前のものは「#大阪都構想反対」とかのタグがついたツイートをあらかた見たのですが、存在が見つけられませんでした。ちょっと根拠に弱いですが、このツイートがほぼ初出に近いとみていいでしょう。そうなると、この画像は紙ベースのものは存在しないことにはなるので、ビラではなくなりますね。

よーしと思ってこの方のツイートを見てみたんですが…あらら、反対派の方ですね。じゃあ違うのかな・・・と思って返信やリツイートを眺めてみると、思いのほか、「まったくその通りですね!」「この理由がいちばんいいかも!」みたいなのが並んでいますな。えー、ということは、反対派の人にとっては「イイネ!」な内容ってことなんですね…。

せっかく、女の子のイラストの初出まで見つけてきたのに、ちょっと自分の持って行きたい方向とかみあわなくなってきました。うーん、くやしい。現実のほうが斜め上をいってた。

 

と、ここまで書いてきて、ああこれは「囚人のジレンマ」だな、と思いました。

 

私はパレート最適とかナッシュ均衡とかはさっぱりわからないので、解説はちょっと古い記事ですが、ほかのはてなユーザーの方に譲ります。

d.hatena.ne.jp

 

要するに、「最適な選択」が「最高の果実」を常にもたらすわけではないのです。大阪都構想が未来の大阪市にとって「最適な選択」であるかどうかは問題ではなく、個人として「最適」かどうかを問われているような(少なくとも彼らの主張のコンテキストとしては)構造になっているんじゃないかなあと思いました。でもまあ、政治っていっつもそういうもんかもしれません。

 

これ以上書くと私の無知があからさまになるのでこのへんでよしときます。語りえぬものについては、沈黙しなければならない。