今日はちょっと古い画像の話題から。
カモの親子が排水溝の上を散歩して、子どもだけが落っこちてしまい、それを親ガモが呆然と見つめるというような3コマ写真がずいぶん昔から出回っています。
記事は、その写真の続きというものを載せ、「実は助かったんだ!」ということになっているのですが、「いやいや蓋が違う」ということで、レスでは早速否定されています。
今回は、この「かわいそうなカモ」は助かったのかどうか、というところを探っていきたいと思います。
さて、まとめサイトにのっていた助けられた写真ですが、調べるとすぐに違う話だということがわかります。
これは2009年6月8日の記事ですが、ニューヨークのEileen Emiddioという婦警さんが救出したという話です。確かに、排水溝の蓋の穴の形が違いますね。うーん、やっぱり「かわいそうなカモ」の写真の方は、助からなかったのでしょうか。
ということで、「duckling drain」などで検索をかけると、いやー、出るわ出るわ。毎年毎年、どこかでカモは排水溝に落ちているんですね。
もう風物詩みたいなもんですね。カモもかわいそうに。
さて、「かわいそうなカモ」の写真の初出を探す旅に出たのですが、これがなかなか難しい。候補としては、以下のサイトがあります。
例の「かわいそうなカモ」の写真を探しているという2006年10月31日のスレッドなのですが、コメントの中に、「I made this same thread like 2 years ago」とあり、その2年前、つまり2004年に写真が存在していたらしいことがわかります。そのコメントした人が提示しているのが以下の画像です。
おお、なんと写真が一枚増えているじゃないですか!これは元ネタっぽいにおいがぷんぷんしますね。写真には「FLIPPEDCRACKER.NET」というロゴが入っていて、いかがです?その部分を削ると、今出回っているほうの画像に近くなりませんか?
さっそくこの「FLIPPEDCRACKER.NET」に行ったのですが、「Hello World」状態で、なにやらドメインが放棄されたような感じです。キャッシュも残っておりません。
実はもうひとつ、日付不明でこんなサイトもあります。
Queen's University Campus Security - Town Rescues Trapped Ducks
カナダのクイーンズ大学のキャンパスセキュリティーというところが書いている、どうしてそこが書いているか理由不明の記事なんですが、AP通信が掲載したとして(記事リンク不明)、カモが排水溝から助けられたという話が載っています。
それに付随するような形で、上記のカモの写真が掲載されています。「この写真が記事にくっついていたんだけど、ソースがよくわからんので誰か知っている人教えて!」となっちょります。すると、親切な方が教えてくれたんですね。追記という形で、なんとその写真を撮った人のコメントだという情報がついています。長いのでざっくり言うと、
・撮影者は家に帰ろうと車を運転したところでかわいいカモを見つけ、写真を撮った。
・すると、親ガモが排水溝を横切って渡ろうとし、子ガモが1匹を除いて全部落ちた。(これが最後の写真)
・撮影者は排水溝の蓋を開け、1匹以外全員助けた。
・最後の一匹は動こうとしなかったため、これ以上下水道を降りることはできなかったので、自分で戻ることを願ってやむなく残した。
ということのようです。そして、そのソース元として挙げられているのが、先にあげた元ネタの写真の掲載元である「FLIPPEDCRACKER.NET」。うーん、つくづくなくなってしまったのが惜しいサイトです。
しかし、この謎のクイーンズ大学の記事は、公開日時こそわからないものの、リンクに「2004」の階層があり、元ネタの写真の時期と一致はします。信憑性はそれなりにあるんじゃないでしょうか。
というわけで、本当のソース元が物理的に見られないので、若干の疑わしさは残るものの、この撮影者の言葉を信じるならば、子ガモは1匹を除いて全員助かったようです!よかったね!
しかしまあ、この写真を見て思い出すのは、かの有名な「ハゲワシと少女」です。「写真を撮っている暇があったら助けろよ!」というわけですが、どうしても我々は「最後はみんな助かって幸せになりました」というオチが欲しくなるものです。でもよく考えてください。前述したとおり、カモが排水溝に落ちるのは毎年起こっています。ニュースになって取り上げられるのは、「助けられた」カモだけです。映像や写真にならず、人知れず排水溝に落ちていっているカモはその何倍もいることでしょう。「ハゲワシと少女」のジレンマに思いをはせるとともに、是非とも私たちは「撮影されなかった不幸」にも、目を向けたいものです。