「第3の性」という考え方は、LGBT関連の活動で日本にも広まってきつつあるのかなという気もしますが、そういうことにはとってもセンシティブなアメリカで、こんな話題がありました。
テネシー大学が、「He」「She」だけでなく、「Ze」という新しい人称代名詞を使うようにという推奨をしたのだとか。
相も変わらずですが、海外圏の記事の引用は不正確なことが多いので、ほんとーかなあというところを調べていきたいと思います。
さて、いろいろなまとめサイト*1が、前掲したネタりかの記事を引用元として挙げていますが、そのネタりかがソースとして挙げているのが以下のサイト。
Foxnewsのopinionコーナーなんですが、実は私は記事を書く前に、結構前々から下調べをすることが多いんですが、久しぶりにソース元のサイトを見たら、「UPDATE」がつけられてるではあーりませんか。記事のもともとは8月28日なんですが、それ以降に付け加えられた情報があるということです。*2
で、何が更新されているかというと、テネシー大学の総長がこう言ってるんですって。
their quest for gender neutral pronouns is not an official university policy.
つまり、この「Ze」の話は、大学の公式見解ではないといっているわけですね。ちょっとちょっと、ニュアンスが変わってくるじゃあーりませんか。
というわけで、当初の予定とは違って、どういう経緯で大学側が否定することになったのかというところを追っていきたいと思います。
更新されたFOXNEWSによれば、総長は、「性的に中立な呼称を使うことは新しいことではない」としつつ、「常に人々はそれに疑問を抱いている」と答えています。
といいながらも、28日に掲載した「Ze」をめぐる大学側の話は、あくまで「教育の一環」であり、「命令」でも「公式見解」でも「教育委員会の方針」でもないと強調しています。まあ、事実上の撤回みたいなもんですな。どこぞやから怒られたんでしょうか。
もうちょっと他の記事も調べてみましょう。
こちらの記事は9月12日で、「Withdraws」、つまり「撤回」とはっきりタイトルにしています。
こっちはもうちょっと周辺事情が書いてあって、どうやらこの「Ze」の発表をした後、テネシー大学はかなり批判にさらされたようですね。上記ページがソースにしているUSATODAYの記事によれば「電話がなりっぱなし」だったとか。
怒ったのはどうやら共和党の議員のようで、「神が男と女を創ったんだから、こんな論争を理解する必要はない」と、なかなかガチガチの発言をしています。
実は、この「第3の性」をめぐっては、中立的な配慮をする大学が増えてきているようで、かのハーバード大学やバーモント大学では、「第3の性」の表記を許可する動きになっているんだとか。*3
こっちがあまり騒がれずに、テネシーが叩かれたのは、大学側のウェブサイトの記載が、日常生活にまで入り込んだ「命令」のように捉えられたからでしょう。まだいろいろともめてるようですが、「Ze」の運動は頓挫してしまったようです。
個人的には、このような「言語」を改変する動きというのは、人為的には無理だろうと思いますし、少々歴史というものを軽んじている気がします。どうもあっちのジェンダーフリー論者はストロングな主張が多いと思うんですが、中には「そこまでしなくてもいいんだけど」という控えめな「Ze」の方々もいらっしゃるんじゃないんでしょうかねえ。
さて、今回のまとめとしては、「僕らは世界を斜めに読んでいる」ということです。
「新しい呼称「Ze」」なんてタイトルはなかなか刺激的で、刺激的な故にニュースになるのですが、それがその後どうなったか、という「情報の更新」はなかなかありません。たとえば、オレ的さんも指摘してますが、1年前にもカナダでおんなじようなはなしがありました。
しかし残念ながら、この「Xe」がその後どうなったかについては、続報はありません。まあたぶん頓挫したんでしょうが、それゆえニュースにならずに、情報の海に消えていってしまうのです。
けれども、私たちの記憶に残るのは「カナダでXeという呼称が使われるようになった」「アメリカでZeという呼称が使われるようになった」という、斜め読みした情報です。ウワサというものは、こういう「斜め読み」から生まれる誤解の総体であり、情報の非更新から起こるものです。
でももはや、この情報の渦と化している現代で、全ての情報をUPDATEしていくことは不可能です。せいぜいこのようなブログを参照していただくか、話半分で世の中を眺めるようにしていただくのがよろしいんじゃないでしょうか、と宣伝をして今日は終わりにします。