ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

シリアの難民がゴミを撒き散らしているというのはウソである、この記事は拡散希望

シリアの難民受け入れ問題は、ヨーロッパでの大きな懸案事項となっています。

そんな中で、ドイツに難民を受け入れたらこうなったぜという画像がばらまかれています。

squallchannel.com

うーん、花火大会の後のような惨状ですな。私も探してみたら、こんな画像を見つけました。

 

f:id:ibenzo:20151012120220j:plain

 

いやあ、ひどい有様ですよね。難民なんて受け入れるもんじゃありません。

 

 

 

でもこの画像、

 

 

 

 

 

 

 

 

難民に全く関係ないんですけどね。

どこかの海外のブログから、引越しの惨状がひどいみたいな感じのものを拝借してきた画像なんです。

 

さあ、いま巷に流布している画像のいったいどれがホンモノでどれがニセモノか、あなたにはわかるんですか?

というわけで調べていきましょう。

 

2chで広まっているのは以下の画像4つ。

f:id:ibenzo:20151012120634j:plain

f:id:ibenzo:20151012120638j:plain

f:id:ibenzo:20151012120643j:plain

f:id:ibenzo:20151012120644j:plain

 

さあ、Google画像検索の出番です。

まずは一番下の川にゴミが流れる写真を調べましょう。検索するとすぐに引っかかります。

www.bulletinslive.com

イスラムの難民なんて受け入れるからこうなったんだと、いろいろな写真を載せております。うーん、この記事は9月18日ですが、元の写真はどこにあるのかなあと探すと、出てきました。

nol.hu

ハンガリーのニュースサイトのようですね。場所はハンガリーなんでしょうか。グーグル翻訳をしてみると…

 

会社の環境許可権限を取り消すように求めている

 

んん? 日付を見ましょう。

 

2012年3月4日

 

なんと3年も前の、産業廃棄物の不法投棄に絡んだハンガリーのニュース記事でしたね。おいおい、まったくシリア難民に関係のない写真じゃないですか。というかドイツの写真でもないですね。

 

そうすると、他の写真も出典が危ぶまれてきます。

 

一番上の、駅にゴミがあふれている写真を見ましょう。

画像検索をかけると、なぜかロシアのサイトがいっぱい出てくるんですが、フォーラムみたいなところで掲載されていました。

http://ftour.otzyv.ru/read.php?id=244479&p=400

9月15日の投稿を見ると、ミュンヘン駅で本日撮られた写真だと記載があります。日本のツイッターでもこうやって拡散されています。

 

 

しかし、このロシアのフォーラムでは、すぐに茶々が入ります。

 

この写真は今日(9月15日)ではありません。3日前にいきましたが見ませんでした。

 

この後に

Как жить дальше ??? - Жизненные вопросы - Allrussian Board Русскоязычный форум в Германии

というサイトのリンクをのせ、9月13日付で同じ写真が投稿されていることを指摘しています。

 

その後、どうやらこの写真はハンガリーのkelletiというブタペストの主要ターミナル駅の写真だということがわかります。M4の出口だよとまで言っている人がいるので、まあ、ホントなんでしょう。

Kelletiは確かに、シリア難民が足止めをくった駅のひとつなので、この惨状は彼らによるものでしょう。しかしドイツのミュンヘン駅という情報は海外も含めてかなり出回っているようなんですが、ほら、また騙されているじゃないですか。

 

残り二つの画像についても、ドイツの写真ではなく、ハンガリーの国境沿いの写真だということです。*1

 

つまり、今回出回っている写真には、日本では必ず「ドイツ」という言葉が付きまとっているのですが、全てハンガリーの写真で、あまつさえそのひとつは難民には全く関係ないものでした。

 

もちろん、シリア難民が、その移動の過程で、多くのゴミが出していることは事実です。

 

www.bbc.com

 

これは文化の違いだけでなく*2、BBCの記事にもありますが、バスが今すぐ発車してしまうときに悠長にゴミは集めてらんないとか、着の身着のまま逃げてきたときにゴミのことまで頭が回んないとか、そういう要因も考慮してあげたほうがいいんでないかと思います。

 

そして、「シリア難民はゴミをポイ捨てしている」という事実は徐々に拡大解釈され、人々はバイアスをかけて眺めるようになり、今回の写真の問題のように、やってないことまで「あいつらならやりかねん」という風に見られてしまいます。それは錯誤もあれば、そうなって欲しいという主義の方々もおり、結局、事実を歪ませることになります。

 

そうはならないためにも、ぜひ今回の記事はtwitterなどで拡散して欲しいものです、と宣伝をして終わります。

*1:Catástrofe ecológica. Lo que los inmigrantes dejan a su pasoなど.

AHMAD ZOHERという人のFACEBOOKの写真が元になっているそうなんですが、ページはあるんですが削除したのか鍵をかけたのか、元写真を見つけることはできませんでした。

https://www.facebook.com/profile.php?id=100006320586672

*2:【連載13】青年海外協力隊が見たシリア――ポイ捨てからの気付き | オルタナS - Part 2にもあるが、まあゴミのポイ捨て問題は中東だけでなくいわゆる「先進国」的考え方ではあるかもしれない