今日も難民に関するニュースを。
ドイツのスムテという人口102人の村に、750人の難民がやってくるというニュースです。ネットの反応としては、「侵略…じゃん」「勝手にモスク作ったりとかするんだろうな」など、ありえないだろ、という反応がほとんどです。
後述しますが、この反応は、ドイツのネオナチの人々ほとんど変わらないことに私は興味を覚えました。
では、詳しく見ていきましょう。
痛いニュースさんがソースにしているのは以下のサイトなんですが、
ニューヨークタイムズ(以下NYT)とロシア24をソース元にして挙げています。ロシア24は探したのですが特に見つからなかったので、NYTを探します。だからソース元のリンク先を載せとけよって毎回思います。
German Village of 102 Braces for 750 Asylum Seekers
NYTのこの記事はえらく長く、気合が入っているのがわかります。
簡単にまとめると、
①10月初旬にドイツ政府より村長宛に1000人規模の難民受け入れの要請があった。
②スムテ村にある空きオフィスのビルディング(750人キャパ)を、冬季の一時的なシェルターとして向こう1年活用する。
③スムテ村で議席を確保するネオナチの議員は、今回の出来事を運動拡大の好機のひとつと捉えているということ。
④村人はおおむね寛容に受け入れていこうとしていること。
という感じになります。ちょっとNYTの英語の書き方がすごいわかりにくくて間違ってたらごめんなさい。
結局、いまドイツは難民を受け入れるために、国内の空き施設(古い学校なり、体育館なり)を探していて、その選考の過程でスムテ村が選ばれたということです。日本の記事だけ読むと、まるで永住する感じにも思えますが、シェルター的な扱いですね。最初の1000人という案は反対され、500人に削減されたようです。
④の寛容に受け入れ始めているというのは、ドイツのニュースサイトからもわかります。
Google翻訳さんによれば、懸案の警察も24時間呼び出し可能となり*1、「サマリア人連合会」(多分)なる団体が様々なデバイスの準備の手伝いをするんだとか。最後の記事の映像を見ると、受け入れ態勢が時間がない中で着実に行われている様子がわかります。ある意味で、スムテ村は難民受け入れの国際的な「シンボル」になるわけです。
NYTはそれよりも、ネオナチの台頭を記事の主眼においています。ドイツは他のヨーロッパ諸国に比べ、いわゆる「極右」政党が一定の議席を確保しており、それはこの小さな村にもやってきているというわけです。記事に出てくるMr.Neimannは、「自分は原理主義者ではない」としつつも、「ゲルマン民族の血統が根絶される」ことに危機感を覚えるばりばりのネオナチです。今回の難民受け入れについて、これをひとつの「政治的課題」と捉えて大々的に運動を展開していこうというわけです。
村人が難民を受け入れる気になっているのも、このネオナチの影響があり、「ここをネオナチ運動の聖地にしたくない」という思いから、受け入れ賛成に考えが変わったとあります。*2つまり、難民受け入れの反対運動をすることで、ネオナチ運動の加担をすることになってしまう、というジレンマです。
冒頭に書いたように、日本のネットの反応は、いわゆる「極右」的な国粋主義者たちの反応とそれほど変わりありません。まあ中にはそういう人もいるでしょうが、ほとんどはそんなミシマ的な人ではない、ライトな層でしょう。しかしそのある意味不用意と言ってもいい発言は、未来の極右的運動の発展につながるかもしれない、というわけです。
このニュースの主眼は、「難民流入に困惑する村人」ではなく、「難民受け入れに奮闘する村人」の姿です。微妙に違うということは決定的に正しくないということです。極論はわかりやすいですが正しくはありません。そのことはいつも肝に銘じておきたいですね。
*1:Landrat fordert 24-stündige Polizeipräsenzというのが、警察の24時間呼び出しみたいなことだと思うんですが、以下によれば、
その提案は却下された(Both proposals were rejected)とあるので、ちょっとどっちが正しいのかよくわかりません。
*2:Dirk Hammer, a Sumte resident, said that he felt sympathy for the refugees, but that he feared the sheer number of people dumped with little warning in places like this could offer “an ideal platform for the far right.”