【11月8日 10:02追記】
なにやらえらい勢いでバズっていたので、指摘いただいた点を含めて多少追記します。
原発から漏れ出た汚染水は、遠くアメリカでも懸念を広げています。
というわけで件の秒刊サンデーでもこんな記事が載りました。
汚染水のおかげで、魚に影響が出ているというウワサを、なにやらグロっぽい写真と一緒に記事にしているわけなんですが、ちょっとあまりにいい加減な書きぶりに、憤りを感じたので、タイトルも直接的なものにし、丁寧に検証して差し上げようと思います。
さて、秒刊さんは以下のメディアをソース元にあげております。
まあ、なかなかタブロイド的なメディアを取り上げたもんです。
ざーっと読みましたが、汚染水が海流によって太平洋に蔓延し、生態系に多大な影響を与えている云々ということが、ショッキングな画像とともに語られています。
この記事にどれだけ信憑性があるかどうかは、この画像の出処が震災以前か以後かというところがわかればいいわけなので、日付を「2011年3月11日以前」にして、画像検索をすればいいわけです。
たとえば秒刊さんがトップにあげているこの画像。
これを検索してみると、なぜかwikipediaが引っかかります。
「鮭の寄生虫の病気」?
記事には「寄生虫Henneguyaは一般的なサケ科の魚に含まれ…」と続いており、全く原発やらなんやらとは関係なさそうです。写真には「2009年にカナダ西部のクイーンシャーロット島」で採取されたものだとあります。wikipediaの写真の日付が信用できるかどうかは置いといて、さすがに寄生虫まで原発のせいにされてはかないません。ソース元にはご丁寧に「Cancerous Tumors in Salmon」つまり、「鮭の癌化した腫瘍」とキャプションがついていますが、無知もはなはだしいといわざるを得ません。
【追記】
wikipediaが情報ソースとして信頼性が足りるのか、という指摘はもっともかとは思いますが、写真がUPされた時刻はwikipediaの編集履歴から検索できることもあわせて(直接ではないですが)ご指摘いただきました。
.@megadeth0907 こんばんは、デマ訂正お疲れさまです。wikipediaの写真ですが、編集履歴を確認する限り2009年9月16日が初出で間違いありません。写真に関しても2009年の段階から存在していると言えますね。 https://t.co/AamJa1dvxu
また、EXIF情報から検証しているブログもございましたので、参考にしてください。
【デマ】秒刊サンデーが福島の放射能の影響としてる写真のEXIF情報 - Windows 2000 Blog
これによると、鮭の写真は2009年10月16日が正しいようですね。
さあ、もうこの時点で記事全体がアヤシクって仕方なくなってきました。
続けて他の画像も調べましょう。
秒刊さんはボカシを入れている魚の口の周りが腫瘍だらけに爛れている画像。
お行儀が悪いのですが、見たくない人もいるかと思うので画像は直リンクにさせていただきます。
http://superstation95.com/images/CB_ChS_Tumor_lips.jpg(リンク先若干閲覧注意)
さて、画像検索をすると、以下のサイトがひっかかります。
Tumor-like lumps | Fish Pathogens(リンク先若干閲覧注意)
「Fish Pathogens」とは、「魚の病原体」、つまりバクテリアやウイルスのことです。そういうのを扱ったサイトのようなんですが、上記の写真や、superstation95.comがトップで挙げていた魚の写真も一緒に載ってました。
で、キャプションはこうなってます。
Tumor-like lumps are difficult to diagnose. Hosts can produce lumps (xenomas) in response to infections with viruses or other pathogens.
翻訳するとこういうことです。
腫瘍状の瘤というのは診断が難しい。宿主はウイルスか他の病原体の影響を受けて瘤を作る。
つまり、この写真は癌化した細胞ではなく、何かの病原体によって寄生された魚の写真だというわけです。この写真の日付が不明なので、放射線の影響によってウイルスが凶暴化したとか言われたらもうそれまでなんですが、そういう人とは会話が続けられません。
秒刊さんが転載しているのはこの2つの画像だけですが、ソース元はいったいどこから集めてきたのかわからない画像を散りばめております。
たとえばこれ。
superstation95.comでは、この画像の説明を、「漁師と海洋生物学者」がとったもので「放射線の影響を受けたものだ」と言っていると書いています。
しかし、この画像の出典元は以下のサイトです。
アサバスカ川流域の「industrial development 」、つまり工業地帯から採れた奇形の魚だというキャプションがつけられています。しかも日付は2010年9月15日。一万歩譲って放射線の影響だとしても、おたくの国の核実験のせいじゃありませんか?
というように、挙げればキリがないのですが、ことごとく写真の出処元がアヤシイものだらけです。superstation95.comというサイトは、情報の信頼性という意味ではかなり低レベルといわざるを得ません。
そして私が非常に不快に思うのが、この出処不明のアヤシイ話を、臆面もなく記事にする秒刊さんの不真面目さです。だって、日付指定の画像検索なんて、1分あればできますよ?そして極めつけの結びの文。
いずれにせよ根拠が不明な両者の意見をまともに聞くよりも、まずは現在の状況をしっかり把握しておくことが重要なのかもしれません。
じゃあまずはお前が把握しろや!ではまず写真の出処について検証されてはいかがでしょうか
と叫びたくなります。
もちろん、私は、汚染水によって生態系が乱されていない、という主張をしたいのではありません。もしかしたら現在、太平洋は危機的状況にあるのかもしれない。政府の話が信用できないって言うのは、大本営の時代から変わっていないことです。
しかしそれを、偽の資料で印象操作してしまうことには、強く異を唱えます。そしてそれを無自覚に拡散する「メディア」の名を借りた行為についてもです。
というわけで、今日はあまりにもいい加減な記事だったので、テンション高めでお送りしました。おしまい。