ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

寄生虫は癌に変化するのか、マコトらしきウソはつくも

あの鮭の画像のせいで、普段は見過ごすこんな記事が目に留まりました。

 

 

あるコロンビアの男性が、寄生虫から変化したガン細胞によって死亡したとか。じゃああの鮭の寄生虫も癌になったという可能性もあるよねーと思いながらソース元を見てみると、スプートニクじゃあありませんか。

 

jp.sputniknews.com

 

スプートニクは、「ロシアの声」が改称されてできたニュースサイトですね。「ロシアの声」というと、どうもデマ記事の多いイメージがあります。

 

matome.naver.jp

 

では、この記事の信憑性について確かめていきましょう。

 

 

スプートニクは「リアノーボスチ通信」をニュースソースに挙げていますが、特にリンクはありません。そして、不思議なんですが、「リアノーボスチ通信」は既に、「ロシアの声」とともに、「ロシア・トゥデイ」として合併されているので、ここが情報源になるのがちょっとオカシイと思うんですが。*1

 

まあとにかく、「ロシア・トゥデイ」を探してみると、ございました。

 

www.rt.com

tapeworm、つまりサナダムシですね。エイズを発症していた41歳の男性のCTから肺とリンパ節の腫瘍がわかり、その腫瘍を病理検査すると、あまりにもヒト由来のものが少なかったので、Dr. ATIS Muehlenbachsという人が詳しく調べたということのようです。ちなみに、「ロシア・トゥデイ」はソース元ととして、Livescienceをあげています。

www.livescience.com

 

そして、この研究はtheNewEnglandの医療誌に掲載されているようで、ご丁寧にリンクも貼ってくれています。

Malignant Transformation of Hymenolepis nana in a Human Host

 

医療系の英語は苦手なんですが、論文の概要としては、

 

・2013年1月に発熱などの症状で来たHIVキャリアの男性のCTを実施、肺(リンパ節?)の病理検査を行う。

 

・細胞は通常の腫瘍より小さく、各所に核小体が見られた。通常の癌細胞からは見られない結果もあったため、反応のあったH-nana(条虫)*2を疑った。

 

・腸管外での条虫の感染はまれではあるが、エイズの発症により免疫力が低下していたため、リンパ節にまで入り込んでいた。

 

・患者の核小体は条虫の幹細胞と一致し、その幹細胞が悪性転換したものが転移して癌化したのではないか。

 

・癌細胞の個体間での転移はまれに妊娠中の胎児へ伝達するという例があるが、寄生虫由来の癌細胞のヒトへの疾患は新たな知見であり、7500万人が感染しているという条虫感染に関して新たな課題が出てきたとともに、癌の治療への新たな取組みができるだろう。

 

という感じでしたので、おお、スプートニクの記事内容はほとんど同じですね。まあ、寄生虫が癌細胞になったというか、その核細胞の変異による転移、という見方がよさそうですけど、今回のは何の問題もない記事のようです。

 

というように、日ごろアレな記事を配信してしまうと、本当のことですら疑わしくなってしまうというわけです。「誠らしき嘘はつくとも」と家康公は言っておられますが、メディアには常に「誠らしき誠」を言ってほしいものです。