パリの同時多発テロは痛ましい現状ではありますが、日本の今朝の鹿児島県沖の地震が、甚大な被害をもたらしていると、誤解されているようです。
ツイッターでは、「#prayforparis」に続き、「#prayforjapan」がトレンド入りすることに。
もちろん、その情報は誤解なのですが、「欧米メディアで今朝の地震を報じたときに…」という記述が上記参照元のスレにはあるんですが、どこぞのメディアの情報で、そしてどう誤解されていったのか、というところを調べていきたいと思います。
毎度使用しているのですが、twitterには投稿時間を指定しての検索も可能です。
今朝の地震は日本時間の「11月14日5:51」に起こっているので、検索条件を「prayforjapan since:2015-11-14_5:51:00_JST until:2015-11-14_6:30:00_JST」に絞って見ます。
そうすると、6:01のツイートが、一応検索ができる「prayforjapan」の最初のツイートとなります。
Strong earthquake in South Japan, apparently 7.2 #prayforjapan #Force2Japan #GlobalSupport #earthquake
— Confiton (@Inge_ni_oso) 2015, 11月 13
さて、この人は日本に住んでいないようなので、どこからこの地震の情報を手に入れたか。
すると、6:28のツイートにこんなものがあります。
#PrayForJapan Hope that there will be no tsunami https://t.co/hRfCnsAbyi
— Alvin Lie ✈⚽ (@alvinlie21) 2015, 11月 13
このツイート主がソースにしているのは以下のツイートです。
DETAILS: Japanese meteorological agency issues tsunami warning after 7.0 quake https://t.co/G9ScEqCyJZ pic.twitter.com/uxopLTFFgJ
— RT (@RT_com) 2015, 11月 13
RT・・・おお、「ロシア・トゥデイ」ではないですか。デマ記事連発の後継メディアなので、前回疑ってかかったところですね。
それはともかく、「ロシア・トゥデイ」がツイートしているのは6:25。記事は以下のページで、
投稿時間は日本時間の7:10で、ちょっと遅いソースですね。*1
では、海外向けに日本の地震の情報を最初に伝えたところはどこか。これを探してみると、恐らくロイターなのかなあという感じです。
BREAKING: Magnitude 7.1 earthquake hits off southern coast of Japan.
— Reuters Top News (@Reuters) 2015, 11月 13
「速報」という形で、日本にM7.1の地震が起こったと伝えています。執筆現在の時間でもリツイートが900件にのぼっているので、ロイターが海外向けの第一報とみてもいいんじゃないでしょうか。確かに、地震の少ないほかの国からすれば、速報で「M7.1の地震が起こった」とかかれると、なかなかビビるかもしれません。
その後、津波の注意報が出されたことも以下のツイートで伝わります。6:08のものです。
Tsunami advisories issued for portions of southwestern #Japan, including the Tanegashima Yakushima areas: #tsunami pic.twitter.com/4J4987VKOA
— The Weather Channel (@weatherchannel) 2015, 11月 13
で、6:40には、National Postというカナダの新聞会社が以下のツイートをします。
BREAKING: Magnitude 7.0 earthquake hits off the coast of Japan, tsunami warnings issued for its southwest coast https://t.co/cQt0lPDjH4
— National Post (@nationalpost) 2015, 11月 13
7.0だったり7.1だったり、数字がずれるのはご愛嬌ですが、このツイートは10000リツイートを超えています。そして、このツイートを読むだけだと、「M7.0の地震がおこって津波の警報が出てる」と、なにやら甚大な被害が出ていそうに錯覚します。
そして、どうやらBBCも記事にしたみたいです。
以下の8:26のツイートは、
This is so sad... #PrayforJapan 😔 pic.twitter.com/j2ccvfZkX9
— antonio (@antoniodelotero) 2015, 11月 13
ニュース記事を画像としてのっけています。特に記載はありませんが、これはBBCの記事形式です。記事タイトルは「Japan issues tsunami alert after powerful earthquake」とあり、なにやら大きな地震が起こって津波がやってくるという感じになっています。これがいったい何時に投稿されたものかはわかりませんが、「8分前」という投稿時間があるので、ツイートの投稿時間とあわせて考えるなら、遅くとも8時ぐらいということになるのでしょう。
もちろん、現在のBBCの記事は訂正をされていて、「Japan earthquake: Small tsunami triggered」と、そんな被害なかったよーということになっています。*2
「#prayforjapan」がトレンド入りしたのも8時ぐらいのようですので*3要するに、時系列としては、
①ロイターの第一報があり
②National Postやロシア・トゥデイのような、各国のメディアがそれに乗っかり
③BBCがトドメをさした
という感じなんではないでしょうか。*4
今回のケースは、正確に言えば誤報ではありません。「M7.0の地震が起こった」「津波の注意報が出された」というこの二点を伝えたに過ぎませんし、それは事実です。しかし、事実は常に人々を真実のもとに連れて行ってくれるわけではないんですね。そして、そこにパリでの事件という「事実」が同時期に入ってきたことで、人々の終末感というものがくすぐられ、より悲観的な方向へ意識が流れていったのでしょう。
いずれにせよ、あまり明るくないニュースがこれからも続くでしょう。それについて我々は祈ることしかできないと思うのか、祈ることができると思うのか。
*1:ちなみに、もしかすると初投稿時は違ったのかもしれませんが、現在閲覧できるものは、津波の被害もたいしたことはないという記載もあるので、正確に書かれています。
*2:この初出の記事のキャッシュを探したんですが、どうもありませんでした。
*3:ツイートを追っていくと、8時ぐらいに「トレンド入りした」という呟きが増えます。
そういえば夜中に津波警告のアラーム鳴ったな。いつもの地震なのにPray For Japanって嬉しいねw pic.twitter.com/cfxgASfzor
— miku_m (@smile_miku_m) 2015, 11月 13
*4:なので、2011年の地震の18000人の被害の情報が誤拡散されたという論調は誤りだと思います。なぜなら、ほとんどの英語圏のツイートで、その数字に触れてないからです。