私は結構ジブリが好きで、そのなかでも特にラピュタが...あれ、この話はどこかで書いたな。
で、はるか昔に、アメリカ人の友人たちと、ラピュタを見たことがあります。音声は英語、字幕も英語にして。
すると、開始してからしばらくして、彼らが笑い出すんですね。どーしたと聞くと彼らは答えます。
「音声と字幕が違いすぎる」
そうなんです、DVDに入ってる英語音声って、どうやら内容に忠実でないようなんです。*1
というわけで本日は、いかにラピュタの英語音声がテキトーであるかをご紹介していきたいかと思います。*2
1.パズーが「おばさん」と呼ばない
パズー「行こう、おばさん!」
ドーラ「船長とお呼び!」
というやりとりは微笑ましい掛け合いで有名です。
確かに英語には日本語の「おばさん」と同じようなニュアンスの言葉がないのは事実。
というわけで、英語音声でパズーは「Dola」と呼びかけています。
Pazu "Take her down, Dola!"
Dola "Call me captain!"
まあでも、これはそんなに悪くない翻訳かと思われますが*3、このパズー、英語ではしょっちゅうドーラのことをcaptain、つまり「船長」呼ばわりしています。
例えばフラップターに乗ってシータを助けに行くシーンで、炎に包まれた要塞からパズーがシータの姿を見つけ出す場面。
パズー 「このまままっすぐ飛んで!小さな塔の上にいる!」
これが英語音声では
Pazu "Steady is she go, captain! She's on top of that tower."
他にも、パズーとシータがドーラに連れて行ってくれと頼むシーン。
ドーラ 「変なマネしたら海に叩き込むからね」
If you do anything, fish you throw you over board. You understand?
これに対して日本語版では「うん」だけなのに、英語版パズーはこう返事をします。
Yes, captain!
いや素直だな!
そしてシータは必ず「おばさま」と呼んでいるんですが、英語版シータは全て「captain」で統一される従順っぷりです。
あらおばさまも女よ。それに私、山育ちで目はいいの
A female can be captain. I grew up in a mountains. I can see like an eagle.電話ってこれねおばさま
You mean this phone, captain?
「船長」と劇中、一言も呼ばないところに味があるのに、これでは台無しです。
2.ドーラが40秒待たない
シータを助けると決めたパズーがドーラにお願いするシーン。ドーラの気質もわかる、いいシーンです。
ドーラ 「覚悟の上だね」
パズー 「うん」
ドーラ 「40秒で支度しな!」
もうあまりに有名なセリフです。
これが英語版ではこうなります。
Dola "Ready to meet your end?"
Pazu "hm!"
Dola "Alright! I'll let you come!"
即断!
ついてきな!って感じなんですけど、どうなんですかねえ。ここで「40秒」を指定して用意させるところにドーラの優しさと厳しさが同時に現れるとても味わい深い台詞なんだけどなー。
3.ムスカは3分待ってくれる
最後の玉座の間のシーン。二人きりで話がしたいというパズーに、ムスカは言います。
ムスカ「3分間待ってやる」*4
本当は弾倉が空だったからなんですが、これも色んなところでオマージュされる有名なシーンです。英語版ではこうなります。
Muska "I'll give you 3 minutes starting now."
おお、ちゃんと3分待ってくれている。なので、Wikipediaにある「日本語版ではドーラが40秒、ムスカが3分間待つところは共に1分間となっている」という記述は間違いです。(おそらくディズニー版のことでしょう)
4.シータの名前が有名
映画冒頭、ドーラ一家がムスカ一行を襲う場面。息子のルイがシータを見つけます。
ママ、いた!隠れてた!
英語音声ではルイが突然叫びます。
Sheeta! It's Sheeta! I found her, Mama!
おお、ルイはどこで名前を知ったんだ?英語版のドーラ一家は調査力が半端ないです。
5.パズーがロマンチック
ドーラに一緒に連れて行って欲しいとパズーが頼む場面。
パズー「おばさん、ぼくを仲間に入れてくれないか。シータを助けたいんだ」
パズーの決意が見えるいい場面ですが、英語版ではもっとステキになります。
Dora, please let me come along with you! Sheeta means everything to me.
「シータは僕の全てなんだ」とは、いつのまに二人はそんな関係になったんでしょう。
他にも、竜の巣を初めて見るパズー。こう呟きます。
空の城だ
しかし、英語版のパズーはロマンチック。
It's a beautiful...
このセリフ、「いぃっつぁあびゅーーてぃふぉーーー」みたいなノンキな言い方です。バラバラにされちまうよ!
6.ラストがグダグダ
さて、翻訳も途中で力尽きてきたのか、ラストのあまりの日本語との乖離にはびっくりします。
去っていく天空の城を追おうとするドーラ一家。
ドーラ「ちっとものぼらないじゃないか」
アンリ「むりだよ、こんなに乗ってるんだもの」
英語版ではまったく違う会話になっています。
Dola "Calmness XXX!*5 I said it's for the balance.
Henri "At least sky is friendly now."
アンリのセリフがおかしすぎます。なんだよ、「少なくとも空は落ち着いたよ」って。
このあとのセリフもおかしい。
無事に凧にのって戻ってきたパズーとシータ。「おばさま!」と抱きつくシータ。パズーも言います。
みんな!無事だった?
ところが英語版のパズーはノンキです。
This will be a day to remember!
「この日を忘れないよ!」 って、おいどうした、なんで無難にまとめようとしてるんだパズー。
ドーラに抱きすくめられ、シータが「おばさまイタイ!」という場面もおかしなことになります。
シータ「おばさまイタイ!」
ドーラ「ごめんよ。情けないじゃないか、さんざん苦労してこれっぱかしさ」
Sheeta ” Dora! There is something sharp.”
Dola ”My fault. These are pieces some reasons*6. 'Cause I don't know how'd happen to get inside my blouse."
シータ「おばさま、なんか鋭いものがあるんだけど」ドーラ「ああごめん。あたしの服の中で何がおこってるかわかんないからなんだ」
何の話?
そして極めつけが、最後のシャルルのセリフです。無駄とは知りながら日本語を書くと、
シャルル「なにしろ時間がなくてよ」
なんですが、英語ではこう言います。
Charles "All good pirates listen to their mom."
「いい海賊はママの言うことを聞くってね」
そしてみんなのHAHAHAHAHAという大団円のあと、エンドロール・・・
アメリカか!
以上、おかしなラピュタの英語音声でした。思ったより聞き取れなかったので、訂正あったら教えてください。
*1:Wikipediaを参照するのもなんなのですが、以下によると、英語音声はディズニー版とストリームラインピクチャー版の二種類存在するとか。
いまDVDで見られるのはストリームラインピクチャー版で、これは一体誰が原稿を作ったのかわからないそうです。鷹揚な時代ですね
*2:英語音声に関しては、DVDで直接聞くと共に、以下のステキなサイトも参考にしました。
Anime Transcripts@アニメで英語 - Laputa: Castle in the Sky - 天空の城ラピュタ
手作業でスクリプトを作っていってるなかなかステキなページです。しかし間違いや抜けもあるので、いちいち確認を行ったことは誇示しておきます。
*3:ちなみに英語字幕では「Lady」になってます。
*4:英語の声優は、今話題のスターウォーズのルーク役のマーク・ハミルです。どういう人選なんだ
*5:ここの英語がまったく聞き取れない。Calmnessはアタリな気もするけど、その後がわからない。Brianにしか聞こえない。
*6:ここもまったく聞き取れない。ここに宝石があるから、とかそういった意味になるはずなんだけど、Gemも聞き取れないし、stonesも聞き取れないし、よくわからない。だから日本語訳もちょっと自信がない