前の記事でも書きましたが、中国の大気汚染はひどいもので、世界のネタ化してきている感じがします。
記事には、とある中国のレストランが、「空気浄化費」なる名目で料金を徴収していたんだとか。
さもありなん、という気もしますが、さもありなん、というのは必ず正しいわけでもないので手早く調べてみました。
記事のソースもとはレコードチャイナです。
で、レコードチャイナは
の新華社通信の記事を参考にしています。当たり前ですが、内容は似たり寄ったりで、江蘇省張家港市にあるレストランが「空気浄化費」なるものを1元一人あたりにとっていて、当局から指導を受けた、という感じです。
さて、実は上記サイトとは別に、レシートの写真を載せている記事もあります。
レシートには確かに「空气净化费」と記載があり、3人分の料金をとられているようです*1。
さて、この写真、転載されまくってもはや右下の引用を示すロゴがロゴの役目を果たしていないのですが、よーく見ると「weibo」の記述があります、中国版ツイッターですね。
比較的ロゴの少ないものから、元もとの引用ロゴを見ると、「weibo.com/u/5730551528」の記載が見えます。というわけでアクセスすると、当該のツイートがありました。
本当はツイート自体を埋め込みたいのですが、weiboは全く分からないので、直接コピペで対応します。
11月7日の投稿と、ちょっと前のものなんですね。中国でこれが話題になったのは12月13日なので、1ヶ月も前だということになります。でも確かに、レシートの日付は11月3日のようなので、時期としてはあっていますね。
このツイートをしている人は、どうやら様々なニュースネタを投稿しているようなので、本人が撮影したものかどうかまでは不明なのですが、Google翻訳さんを頼る限り、「おいおいこんなのかかるのかよ!」という感じです。
ちなみにこの人はもう一つ画像を提示していて、
これは日付不明ですが、レシートの中身も違うようなので、もしかしたら別の日か別の人のものを使用したのかもしれません。
で、ここまで来ると気になるのがどこの店かという話です。
この方のツイートを読む限り、「京粤汇」という店のようだなあということがわかります。早速調べてみると、引っかかりますね。
曼巴特なるショッピングモールの中にあるお店のようです。この方のブログを読むと、なかなかお洒落なところのような気がします。
どんな店なのか気になるので、もう少し追加で調べていくと、次のようなページが引っかかります。
中国版食べログといったようなサイトでしょうか。味や接客などについて、来店した人のコメントや料理の写真が投稿されています。広東料理を出すお店みたいですね。
そして面白いなと思うのが、レシートを画像として載せている人が多いことです。
たとえばこれ。
11月27日投稿のものですが、おや「空气净化费」の項目が存在しませんね。
ほかにも、11月29日のもの。
うーん、これにもありませんね。ちなみに下のメニューがあのweiboの写真と一致するので、この店であることは確定ですね。
ということはあれか、またデマだったのかと思いながら、コメントをたどっていくと、こんな投稿がありました。
京粤汇怎么样,好不好的默认点评(第7页)-张家港-大众点评网
今天又跟朋友来吃的,真心的赞,加上空气净化器费一共50元,很值!
11-09 更新于15-11-10 21:59 京粤汇
翻訳に頼ると、「「空気浄化費」が入って50元だけど、それに値するサービスだった」的な感じになるでしょうか。11月9日の投稿で、おお、話題になっているレシートと似た日にちのものですね。
まださかのぼってみると、
也许是太便宜了,菜品质量不行。卤水拼盘都是边角了,毛血旺真心只有几块切的极小的毛肚,三杯鸡味道可以,可惜也是用的鸡翅、鸡翅根等部位。总体感觉比较一般。收了空气净化费,不过空气确实可以。也许那天是周六,上菜极慢有点乱。
11-07 京粤汇
ちょっと翻訳しても意味がわからないのですが、料理の質が悪いとか、残念だみたいなコメントの後に、「「空気浄化費」を請求されたが、空気はどこにでもあるだろう」みたいなことを言いたいんでしょうか。これは11月7日。
11月5日にも、
团购点评
对空气净化费表示惊奇……菜品还可以,选择性不是很多
11-05 京粤汇
とあり、「空気浄化費という表示があることに驚きます」というコメントです。
しかし、それ以前の投稿には、「空気浄化費」に関するコメントは出てきません。9月6日付けのレシートが掲載されているのですが、
そこには「空気浄化費」の項目はありません。
つまり、このレストランが「空気浄化費」という名目でお金を徴収していたのは、少なくとも11月5日ぐらいから、11月26日ぐらいまで、ということになります。実際は、当局の「7日間以内に対応するよう」というメディア報道もあるので、もっと少なかったのかな、という気もします。
ではこのレストランは素直に指導に従ったのでしょうか。私はここでなかなか興味深いことに気がつきました。
もう一度、9月6日のレシートと、件の11月3日のレシートと、そして11月27日以降のレシートを見てください。
【9月6日】
【11月3日】
【11月27日】
9月6日と11月3日にないものが、新たに11月27日に加わっています。それは「餐位費」、座席の料金、つまり「チャージ料」といったところでしょうか。これは奇しくも「空気浄化料」と同じお一人様「一元」です。うーん、さすが商売の国、めげないですなあという感じです。
さて、この「空気浄化費」の話、実は今回が初めてではありません。
上記は今年の4月8日の記事ですが、杭州にある「ファンタジーコーヒー」なるカフェで、「空気浄化費」1元をとっているという話です。これは全く別の店の話なので、本当の意味での元ネタはこの店にあるわけです。ここは写真を見ると分かるのですが、「空气净化费」を「1元1位」とると、かわいい女の子のイラストPOPと一緒に書いてあります。
記事を読むと、ここのオーナーはなかなか変わっているようなのですが、このときにあんまり叩かれなかったのは、やはり事前に告知をしているかどうか、というところにあるんでしょうか。私の読解力と翻訳力が正しければ*2、この「空气净化费」は、このカフェでは、一種の話題づくりも兼ねているように見受けられました。小噺的なニュアンスを含んでいた、というわけです。
しかし、これを本気でマネをした店が現れてしまった。噺がいつのまにか現実に侵食してきてしまったわけです。そしてそれを「さもありなん」と思わせてしまう中国。友よ、友よ、中国はあまりにも遠い。
*1:
上記サイトなどでは「1テーブル当たり1元」請求という記載があるのですが、「解説」の後に「3人で食事をしたようで」とも記載があり、矛盾しています。素直に考えれば、一人あたり1元を徴収すると考えるのが妥当でしょう
*2:这家咖啡店 进店加收“空气净化费”-五花八门-大杂烩-掌上猫扑に書いてある内容を翻訳して読むと、正直よく意味が分からない部分が多いので、以下の読解は間違っている可能性もあります。ただ、このオーナーはとてもきれい好きで「床は全て手で拭き」「一日十二回は拭く」とのことです。それは空気も同じで、その品質の良さというところに気付いてほしいのだということを、オーナーは主張しています。なかなか変わっているのは確実だと思います。