さて、ネタに困ったら秒刊さんです。
今回は、野菜を食べると性欲が増えるみたいな、ポストかセブンなみの下世話記事です。今日の記事はどこまで正確なんでしょーか。
今日はソース元が載っています。
dailymailですね。信用度ではどっこいどっこいかもしれません。日付は2012年11月23日・・・古いな!
記事によると、Michael Wassermanという院生がウガンダの*1アカコロブスという猿を*2対象にして、彼らが何を食べているか調査したという研究のようです。で、エストロゲンに似た成分が含まれるMillettia duraという植物をよく食べるオスのサルのほうがエストラジオールと*3コルチゾールの値が高かったんだとか。この値が高かったサルはより交尾に時間をかけ、グルーミングの時間は少なくなったんだとか。
ここで、Wassermanの研究の話は終わりですが、えらい脚注がつきましたね。秒刊には校正という存在がないんでしょうか。
さて、ここで「おや?」と思うのが、Dailymailのここまでの記事では、「野菜」の話が出てきていないことです。あくまで、「エストロゲン」が多く含まれる食べ物を食べたら、そういう可能性がある、と言っているだけです。「エストロゲン」は野菜というか、大豆なんかに多く含まれるので、そしたら「大豆をもっと食べよう」という主張になるんじゃないでしょうか。
実はDailymailの記事には続きがありまして、「肉を食べることが男性的であるという心理的傾向がある」という2つの論文*4の紹介のあと、「PETA」という動物愛護団体の主張も載せています。それが、秒刊サンデーにも載っている、股間にバナナをつけた謎の男性の写真です。
PETAによれば、「動物性コレステロールが血流を悪くする」ことに注目して、それはつまりアノ部分の血流も悪くするから、ベジタリアンの方が「夜も長持ち!」というわけなんだそうです。週刊実話か。
まあ、PETAというと過激な団体として有名なので*5、どうにもこうにも信用度の低い話です。
というわけで、今回のDailymailの記事はこういう構造になっています。
①エストロゲンを多く含む葉を食べるオスのサルの性交回数が増えたという研究がある。
②心理的傾向として、人々は肉を食べる人の方がより男性的であると思っている。
③コレステロールの観点から考えると、むしろベジタリアンの方が夜は長持ちする、というPETAの主張がある。
よって、タイトルが「Vegetarians have a better sex life」となるわけです。秒刊さんはこの記事の「①」しか取り上げていないので、記事が不整合になってるんですな。
だからといって、Dailymailの記事からも、安易に「野菜を食べると\\\」という主張にはなりそうもありません。だって①の研究と③の主張はまるで関連性がありません。ちょっとアクロバット過ぎます。
そもそも、①のサルとエストロゲンの研究はどんなものなんでしょう。論文はすぐ出てきます。
さすがに全部読む気にはならないので、概要だけ読むと、要するに「数は少ないが植物から生じるエストロゲン化合物が、霊長類の社会的行動にホルモンレベルからどのように関係しているのか」という研究なので、「ベジタリアンが夜の営みが・・・」みたいな結論には至りそうもありません*6。
とはいっても、この研究の肝は「エストロゲン化合物と性交の回数」に相関があるようだという部分なので、まあ男子中学生的には食いつきたくなるよね。いつの時代も、エロの記事にはみんな興味津々なんです、というお話でした。
*1:秒刊さんはウクライナと誤訳をしています
*2:秒刊さんは「赤猿」と書いていますけど、red colobus monkeysをそう訳したんだと思うのですが、いくらなんでも・・・
*3:秒刊さんは「フェロモンホルモン」なる奇怪な言葉を使っていますが、エストラジオールはsex hormone、つまり性ホルモンの中の一つということを言いたいだけです。何をどう間違ったらこういう訳になるんだ。
*4:http://psycnet.apa.org/psycinfo/2012-30417-001/
Real men eat meat - or do they? - Health | NBC News
*5:これはひどい…動物愛護団体PETAの裏と虚像と消えたカネ - NAVER まとめ
*6:
こっちの方が、正確に研究を解説している感じです。