【3月28日追記】
Jcastさんがバンダイに意図を聞いてくれました。
つまりうちのブログが大正解です!
上品じゃないんですが、自信がないといいながらあまりの記事の反応の少なさでおちこんでいたので、「うちはおたくの一週間以上前から気づいてたんだぜ」アピールをしておきたいと思います。
というかj-castさん、明らかにうちの記事を読んだ書き方ですな…
さて、本日、バンダイが「必殺技」という文字を商標として出願中だというニュースが入ってまいりました。
必殺技が商標して出願されたら、いろんなゲームやアニメが困るんでないか、という感じでウワサはもちきりです。
では、バンダイにどんな意図があるのか、全く法律には門外漢のワタクシが、そこんところを調べてみたいと思います*1。
さて、本当にバンダイが「必殺技」を出願しているかは、簡易検索で確かめることができます。
商標出願・登録情報(インフォメーション画面)|J-PlatPat
出願番号2016-5281で、確かに平成28年1月19日付で出されています。へえ、すごいな。
商標には「類似商品・役務審査基準」というものがあり、特許庁はこの基準でもって商品やサービスが同じ分類かそうでないか、の判断をします。なので、この役務の区分や類似群コードが違っていれば、同じ名称の商標が存在する場合も十分ありうるというわけです*2。
この「類似商品・役務審査基準」は、5桁の類似群コードというものを付与していて、今回のバンダイの場合は9つのコードが与えられています。「家庭用テレビゲーム機」や「おもちゃ」といった感じですね。「家庭用テレビゲーム機」は「24A01」のコードであり、これは第20類の「ゆりかご」や、第28類の「人形」なんかも特許庁は「類似」していると判断するんだそうです。ちょっとそこの感覚がよくわからんですけども*3。
とにかく、今回バンダイは、「ゲーム」や「おもちゃ」「人形」「カードゲーム」など、広範にわたってこの商標を使用する意図があるわけです。
上記で説明したように、分類が違えば類似性は認められない場合が多いので、もしかすると他にも「必殺技」を出願しているところがあるかもしれません。と、調べてみますが、今のところ、バンダイだけしか「必殺技」を出願していないようです。
ここで、じゃあ「必殺」だったら登録しているところがあるんじゃないかと調べてみたら、おお、3件出てきました。
商標出願・登録情報(インフォメーション画面)|J-PlatPat
「住友化学株式会社」が、「必殺\HISSATU」という商標を登録しています。第5類の薬剤などなので、きっとゴキブリとかアリとか、そういった関係のなにかでしょう。
あとは、「下地常雄」さんという人が、同じく「必殺\HISSATU」で、個人で登録しています*4。第33類の酒類なので、きっと焼酎かなんかの名前にするつもりなのかもしれません。二日酔いになりそうなお酒です。
さあ、あと一つ、「必殺」という商標で登録している会社、これが実はバンダイなんですねえ。
商標出願・登録情報(インフォメーション画面)|J-PlatPat
登録番号第3216032号で、登録日は1996年10月31日。今から20年も前です。区分は「必殺技」と同じく第28類ですが、類似群コードが3つとかなり少ないです*5。「おもちゃ」や「人形」は入っていますが、「家庭用ゲーム機」などが入っておりません。
つまりバンダイは、20年前からすでに「必殺」という商標を登録しており、その言葉に関して某かのこだわりをもっているわけです。
ここで、「必殺」の名前がつくバンダイ商品を見てみましょう。
こうして、「必殺」の商標を「おもちゃ」「人形」でとっているバンダイは、商品名に堂々と「必殺」という言葉をいれることができているわけですね。
逆に言えば、他の会社は、「おもちゃ」や「人形」などの商品名に「必殺」の文字を入れることができないということになります。なので、各会社のホームページで商品検索を「必殺」でしても、ヒットしません*6
唯一任天堂は、「必殺カンフー漢字ドラゴン」というDSソフトがヒットしますが、*7これは「DSソフト」という「携帯用液晶画面ゲーム機の部品及び附属品」の分類を「必殺」の商標はもっていないので、ひっかからないのでしょう。
日本の商標は「先願主義」のとったもの勝ちの世界なので、今まで各玩具会社は、自社の製品に「必殺」の文字が使えず、苦汁をなめてきたことでしょう(たぶん)。
「ここで、ここで"必殺”の文字が使えれば、大ヒット間違いなしなのに・・・バンダイの野郎!」
という社内会議がきっと幾度となく繰り広げられてきたに違いありません(たぶん)。
でですね、商標というのは基本的に5年/10年更新であり、実はバンダイが既に登録している「必殺」も、2016年10月31日、つまり今年で存続期間が満了します。もちろんお金を払って更新申請をすれば、さらに更新は可能です。
さあ、ここからが今回の妄想的考察になります。
実は、バンダイの「必殺技」という商品名を検索すると、「妖怪ウォッチ」のメダルやらなんやらが数多くヒットすることに気がつきます。
というか、「必殺技メダル」というジャンルが存在するんですね。
最近落ちぶれているとはいえ、まだまだ「妖怪ウォッチ」は稼ぎ頭のひとつでしょう。ここらで、「必殺技」を商標として登録し、ひとつ囲い込みを行いたい、というのがバンダイの本音ではないでしょうか。これが通れば、他社は「必殺技メダル」として、商品を出すことはできなくなりますからね。
ならば「必殺」を更新すれば、「必殺技」もカバーするような気がするのですが、そこは商標の難しいところで、いかに類似しているかの判断の際に不利な気もします*8。それに、バンダイの「必殺」の商標は、「ゲーム」関係を含んでおらず、今後の商品展開を考えたときに、そのまま更新するのはもったいないと考えたのかもしれません*9。
なので、このまま、商品価値を押し上げているかどうかわからない「必殺」の商標を更新し続けるより、少なくともある程度の利益を確保できるであろう「妖怪ウォッチ」関係の「必殺技」の商標をとろうとしたのではないでしょうか。まあもちろん、「必殺」もあわせて更新する可能性も大いにあります。
しかしいずれにせよ、いろいろなメディアが取り上げているような、「ゲームやアニメの中で「必殺技」という言葉が使えなくなるんじゃないか」という心配はないような気がいたします。だってあくまで「商品」の話だから*10。
今回のまとめ
○バンダイは「必殺技」を2016年1月19日に出願している。
○ただし、バンダイは過去に「必殺」の商標を登録していて、その満了は今年の10月である。
○「必殺技」を登録したのは、「妖怪ウォッチ」関係の商品の囲い込みを行いたいからではないか(推測)。
○ある商品の話なので、ゲームやアニメ内のセリフや文字として「必殺技」が使えなくなるということではない。
とまあ、調べたことを知ったかで書きましたが、どうも法律関係はややこしくて苦手です。何か間違いがあるような気もするので、詳しい人がどこかで訂正してくれるとありがたいです。
*1:本当はこの商標に関して調べたことは、スペインで「UDON」が商標で登録されていた云々というニュースから記事を書こうとしたときに使おうとしたんですが、あまりにもスペイン語が難しく、法律が関わってきてよくわからなくなったため頓挫したものでした。使いどころがあってよかったです。
*2:どうして同じ名前の商標が登録されることがあるの? | Toreru Mediaがなかなかわかりやすい説明でした。
ちなみに「類似商品・役務審査基準」の一覧はこちら。
特許庁ホームページ(リンク先PDFあり)
*3:以上の説明は、次のサイトを参考にしました。
いなおと特許事務所ブログ 類似商品・役務審査基準の見方(使い方)
*4:この人の名前で検索すると、とてもアヤシイ感じです
*5:ただし現在までに法律の改正があったようなので、当時どういう意図だったのかまではちょっと不明
*6:タカラトミーモールの商品検索で「必殺」を検索してもヒットしない。
「site:epoh.jp/ 必殺」でエポック社をグーグル検索も同じく。エポック社とか懐かしい響き。
*7:
*8:知恵袋で申し訳ないのですが、この説明はわかりやすかった。
登録商標を含む文字列を登録商標にできますか? - たとえば、「アイウ」とい... - Yahoo!知恵袋
実際の裁判についてはここが面白い。
ロゴの中に同じ文字が含まれていれば類似する商標として取り扱われるのか~「inside」を含む登録商標の無効が争われた事件~ | 商標登録専門ルピナス弁理士事務所 | 大阪-神戸-京都から全国に対応
*9:更新の際に区分を広げることはできないみたいです。
*10:この問題は、どちらかというと、「フィクションの世界で現実の商標を使用できるかどうか」ということに近いんじゃないんでしょうか。
実際の商品名、店舗名、人物名は小説などの創作作品に使えるか?
ただ、「必殺技」は、商品名という認識にはならないと思うので、大丈夫かとは思いますが。