お食事中の方は失礼。でも、よいこのみんなは食事中にスマホをいじらないほうがいいぞ。
「うんち」と「うんこ」の違いに実は定義があるという話が話題です。
引用しますと、
「うんち」は肉や魚などのタンパク質が消化吸収を経て排泄されたもので、
「うんこ」は野菜や穀物のみが消化吸収を経て排泄されたものと日本医師会によって決められているんだ。
とのこと。しりませんでしたねー
ということで調べてみたら、どうも眉唾らしい話だったので、結果を記載したいかと思います。
元ネタが教えてGoo
さて、この話の元ネタは、2010年5月17日まで遡ります。調べた限りで初出は教えてGoo*1。
回答者は「うんち」と「うんこ」の違いについて、以下のように答えています。
日本医師会によりますと主として野菜や穀物が消化吸収をへて排泄されたものをウンコと呼び、肉や魚介類などのタンパク質が排泄されたものをウンチと呼ぶように定義分けが進んでいるようです。しかし実際には穀物やタンパク質は腸内で混ぜ合わされ一つの物として排泄されます。そこで日本医師会が世界医学協会に意見を求めたところ得られた答えは、草食獣の排泄物がウンコで肉食獣の排泄物がウンチであるという回答でした。
ちなみに雑食性の人間はウンチにあたるそうです。
信じるか信じないかはあなたしだいです。
思いっきり、最後の文章が怪しいですね。これを無邪気に信じちゃったひとたちが、今回の話を広めてしまったように思います。
日本医師会はどちらの言葉も使っている
とはいっても、当サイトは懇切丁寧がモットーなので、この回答の信ぴょう性をとりあえず探っていきましょう。重要な点は2点です。
①「日本医師会」が定義をしていること。
②「世界医学協会」に意見を求めていること。
日本医師会は、1916年に誕生した、47都道府県の医師会の医師を会員とした、学術専門団体です。
「医道の高揚、医学及び医術の発達並びに公衆衛生の向上を図り、社会福祉を増進すること」を目的として、様々な活動や提言を行っているとのこと。
しかしながら、その活動や提言は、あくまで主眼は医師の医療向上であり、公益的な活動としても、国民向けとしては「熱中症の季節!水分補給を忘れずに」とか「ウイルスを運ぶ蚊に注意」とか、そういった啓発的なものが多く、何かの語を定義づけるようなことをしているとは思えません*2。
よしんば何らかの「うんち」「うんこ」に関する定義付けがなされていたとしても、各医師会で、その言葉はうまく分かれているようには思えません。
例えば、人間に対して「うんち」という言葉を使っている「正しい」団体もあれば、
うんち......この言葉をきいて、みなさんは何を想像されますか
小さなお子さんをお持ちの方は、こどものウンチに悩まされることが多いですよね。
雑食の人間なのに「うんこ」を使っている「間違った」医師会もあります。
うんこをしている時に起こる心臓の異常などは、なかなか捕まえることができません。
http://www.yamaguchi.med.or.jp/hitokuti/24188.htm
オムツの中は、異常ないですか
○うんこはしていない
確かに、人間相手には「うんち」の用例が多くはなるのですが、それは単に語感の問題のような気がします。だって、お医者にいって、「今日のうんこはどうでしたか」と訊かれると、ちょっとどきっとしませんか*3。
「世界医学協会」は存在しない
さて、そんな日本医師会が決めあぐねて相談したとされる「世界医学協会」ですが、ぐぐってみても存在していません。
似ている名前の団体としては2つ。
1つ目は「世界医師会」。
世界医師会(WMA)|世界医師会|国際活動|日本医師会|日本医師会
「医学教育・医学・医術および医の倫理における国際的水準をできるだけ高め、また世界のすべての人々を対象にしたヘルスケアの実現に努めながら人類に奉仕すること」を目的としているそうで、「患者の権利に関するリスボン宣言」や「医の倫理マニュアル」など、国際的な観点からの宣言を多く出しており、どうがんばってみても「うんち」と「うんこ」の違いについて教えてくれそうにはありません。んなことどーでもいいですよね。
大体、世界的な団体が、どうして日本語の用例について答えなくちゃいけないのか、めっちゃ不思議じゃありませんか。会長は明らかに日本人じゃないし。
もう一つあるのが、「世界総合医学協会」。
「世界」と冠していますが、めっちゃ日本の団体で、ただのNPO法人であり、しかも2007年設立と随分若い団体です。目的は「西洋医学と東洋医学を統合した最適な総合治療を実現するために、心因性ストレスに起因する病気の治療の普及」だそうで、知恵袋ソースで申し訳ないですが、
「サイコセラピーであらゆる病気を治す」らしい、ちょっと香ばしい団体のようで、とても「うんちと「うんこ」を定義するという大役を担えるとは思えません。だいたい、この団体、自前のHPもないんですけど。
今日のまとめ
①現在流れている「うんち」「うんこ」の定義の発祥は教えてGooであり、信ぴょう性はかなり低い。
②元ネタの「日本医師会」はその設立目的からも、大便の語を定義するような団体とは思えない。
③元ネタにある「世界医学協会」という団体は存在せず、似ている名前の団体2つは、その活動内容からとても大便の定義に力をもつとは思えない。
以上のことにより、今回の「うんち」「うんこ」の違いに関する定義は、おそらくデマであろうということがわかりました*4。アリストテレスは「嘘の中にもいくばくかの真実がある」とは言いましたが、無理やり今回の話から意味を引き出すとしたら、「人は信じたいことだけを信じる」ということでしょうか。うーん、私も気をつけましょう。
*1:これ以前の検索にすると、日本医師会ではひっかかりません
*2:政治的な団体としても有名で、Wikipediaソースですが、黒いうわさもいっぱいあります
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/日本医師会
*3:歴史的なうんことうんちの用例については、この記事が人気になったら調べてみたいと思います
*4:とはいっても、日本医師会に確認をとったわけではないので、お休み明けに元気があったら聞いてみたいと思います。しかし、突然「うんちとうんこの違いなんですけど」と切り出して、真面目に相手をしてくれるかは不安です