ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

ミス・アメリカは微妙な中国系女性なのか、時には耳をふさぎ目を閉じ

TinkSky ティアラ ウエディング クラウン 結婚式 ブライダル 花嫁 髪飾り パーティ

今年のミス・アメリカの優勝者が微妙なお顔の中国系女性だと話題です。

gogotsu.com

 

まあ人の顔のことはとやかく言えるようなものでもないですが、なんとなく我々の思っている「ミス○○」からすると、ちょっとばかり・・・という感じがします。

 

さて、この女性は本当にミス・アメリカなのでしょうか。どうもそうではないようなので、ささっと調べたことを書きます。

 

***

 

彼女はミス・「アメリカ」ではない

今回話題に上がっているArianna Quan。調べてみるとすぐに、彼女がミス・アメリカでないことはわかります。

 

Miss Michigan Scholarship Pageant

 

彼女は「ミス・ミシガン」であり、そもそも「ミス・アメリカ2017」は9月の開催なので、まだ決まっておりません。甲子園優勝と長野県大会優勝ぐらい違います。だいたい、ゴゴ通信が自分で載せている写真にも、めっちゃたすきに「Miss Michigan」て書いてあるじゃないですか。

 

個人的には、ゴゴ通信が載せているソース元のリンク先の英語、これを理解できるならば、ミス・アメリカとミス・ミシガンを間違えはしないと思います。アクセス稼ぎの意図的改変と言ったところでしょうか。そうでなければ、あまりにも稚拙な英語力です。

ちなみに、一番下の緑のドレスを着た女性は、2016年のミス・アメリカです。

 

thepageantplanet.com

 

 

ミス・ミシガンの審査方法に「顔」は入らない

では、このミス・ミシガンの審査方法はどのようなものか。公式ページには以下のようなことが書いてあります。

 

35%: Talent Competition
25%: Interview Competition
20%: Evening Wear Competition
15%: Lifestyle and Fitness in Swimsuit Competition
5%: On-Stage Question

Miss Michigan Scholarship Pageant

 

審査の中で一番比重を占めているのが「Talent」つまり本人がもっている「才能」の分野です。彼女は「Classical Piano」を披露したとのことで*1、その点は評価されたんでしょうね。

 

次に高いのが「Interview」で、説明によれば、10分間の審査員とのインタビュータイムがあるそうで、そこでは自分のバックグラウンドとして、自分のキャリアの到達点や社会問題への意見などなどそういうことを聞かれ、コミュニケーションスキルや個性、知性といった部分で評価をしていくんだそうです。

彼女へのインタビュー記事によれば*2、公約として「Being American: Immigration & Citizenship Education,」を掲げています。アジア系アメリカ人としての、今までの彼女のあまり快いとは言えない経験をもとに、移民や帰化の問題について語ったわけです。これは彼女自身だからこそ語れることであり、この点が高く評価されたように思います。

 

もし容姿についてジャッジするとしたら、「Lifestyle and Fitness in Swimsuit Competition」になります。これは水着審査というやつにはなりますが、プロポーションや歩き方、健康的な体つきかどうかという部分を見るのであり、どこにも「顔」の要素は入っていません。

 

よって、ゴゴ通信が書いている「美人女性が出場しその中で一番の美人を決めるというもの」というのは前時代的な間違いであり、「「ミス・アメリカ」は見た目の容姿だけでなく、特技などでも評価される」というのも、配点から見れば、むしろ特技や個人のバックグラウンドが重要視されるのが、現代のミスコンなわけです。これはミス・ミシガンだけでなく、本選としてのミス・アメリカも同じ基準をとっています。

 

ミスコンの流れの変化

日本でもその昔(今もかな)、多くの女性運動家が、日本の「ミスコン」について、女性蔑視だとして廃止を求めてきました。

これは無論アメリカでも同じで、徐々に審査の形態は変わってきています。

Why Aren’t We Protesting Miss America?

上記記事によれば、過去20年の間に、水着審査のスコア比率を低くしたり、プロの美容師やメイクの起用を禁止したり、3サイズの測定を廃止したりと、外見基準の項目をかなり減らしてきています。CNNによれば、今度からティーンむけのミスコンでは、水着審査そのものを廃止するんだとか。

www.cnn.co.jp

 

要するに、アメリカにおいてミスコンはもはや「美」を競うものではなく、優勝特典が奨学金であることからもわかるように、女性の社会進出に向けてのステップアップとしての場だという認識のほうが一般的になりつつあると思います。

 

今日のまとめ

①話題になっている女性は「ミス・ミシガン」であり、「ミス・アメリカ」というゴゴ通信の記載は誤りである。

②「美人」であることは審査基準にはなく、外見的基準もスコアの割合としては低く、ゴゴ通信の書き方は現実に即していない。

③アメリカでのミスコンは女性の社会進出の一助という傾向が強くなりつつある。

 

 

その意味で日本の今の状況は、世界的な流れからは逆行しているといえるかもしれません。それは全国美少女コンテストとか大学のミスコンとかを見ても、明らかでしょう。個人的には、これは、日本において独特な芸能事務所という存在があり、それがひとつのメディア項目として成立してしまっている経済活動だからかなあと思います。

 

もちろん、アメリカでも、日本と同じような反応はあります。ゴゴ通信がリンク先に出しているサイトなんかは、週刊ポスト的な感じですね。

Chinese People Are Calling the Only Chinese-American Woman in Miss America 2016 Ugly

 

しかし、声の大きい方が常に世論を代表しているわけではなく、いわゆる「良識ある」アメリカンは、そういった主張をしないのではないでしょうかね。ついついネットだけ見てると、声の大きさで判断してしまいがちになりますが、耳をふさぎ目を閉じ、時には自分で考えていくことも大切です。