大して話題になっているわけでもないし、古い記事なんですが、ツイートで流れてきたので。
現在、Googleで「日本 税金」で検索するとトップで引っかかるページです。「ABC News Point」というサイトをソースに、日本の税金が世界で見ても２位にランクインするほど高いものである、としています。
しかしながら、全体的にアヤシイ感じだったので、簡単に調べてみました。
ABC News Pointとは何か
ソースにしているのは以下のサイト。
名前からして、「ABC NEWS」の関連会社か何かか？と思ってしまいますが、どうもそうではございません。全部ではなさそうですが、「WRITE FOR US」という項目にあるように、読者投稿型の記事サイトであるようにも見受けられます。ちょっと抜粋すると、
・After joining, you can provide us work potential number of articles but must be 4 articles per month.
・Wording should be per article from 1000 to 1500 words.・参加後には、あなたは月に４記事以上記事を書かなければならない。
・１記事あたり１０００～１５００語必要である。
みたいな記事があり、ようはライターを募って小金をあげる、ああ、日本でも話題になったキュレーションサイトみたいなサイトですね。
なるほど、全体的に低クオリティで、ABOUT USでは「platform」が「plate form」になっていてコメントで指摘されてるのに未だ直ってなかったり*1、「あなたへのオススメ！」の記事で、ちょっとエッチな感じの記事風広告をオススメされたり、記事の編集が「By Abc News」で*2、本家の「abcNews」と誤読させるようなつくりだったり、ちょっとしたまとめサイトライクなにおいもします。
だいたい、件の記事のデンマークとスウェーデンの写真を見比べてみると、
これ、アングルちがうだけで、同じ場所ですよね？（ちなみにスウェーデンです）これもコメント欄で指摘されているのに、直す気配はありません。
というわけで、このサイト自体の信用性はどうも低そうだなあという感じになります。
日本の税金は高いのか
さて、記事の内容ですが、まずタイトルから疑問なのですが、「Top 10 Highest Tax Paying Countries 2016」ということで、２０１６年もっともハイエストな税金の国ということなんですけど、記事の投稿日は２０１５年７月１４日なんですよね。まあ、予測っていう事でしょうか。
それはともかくとして、記事内容を読む限り、「corporate tax（法人税）, payroll taxes（給与税）, individual income tax（所得税） and sales taxes（消費税・売上税）」に触れながら解説しているので、そこから集計したのかな･･･と一応推察します。
どういう方法で比較したのかが全く不明ですが、とりあえず、上記４つの日本の税率が、世界諸国と比べてどのくらいに位置づいているのかを調べてみました。
１．法人税（法定実効税率）
OECDの値を参考にしている世界経済のネタ帳さんにランキングがありました。
３４か国中日本は７位です。AbcNewsPointは、日本の法人税を「38.01％」としていますが、平成24年に税制改訂があったので、現在は下がっています*3。
２．給与税
日本には給与税というものは存在しません。以下のサイトが参考になりました。
所得税(income tax)と給与税(payroll tax)の違い（アメリカ）gosxi.wordpress.com
一瞬、所得税かと思ったのですが、給与税というのは雇用者側も負担する税制のようで、社会保険や雇用保険に相当する税金という事のようです。
しかしながら、Abcのいう「25.63％」が、いったい日本の何に相当するのかが少々よくわかりませんでした。恐らくなんですが、OECD基準で定められた、「社会支出」を指すんでないのかと思われます*4。「25.63％」にどんぴしゃりになるのが、厚生労働省が２００７年にまとめた社会支出の国際比較の中の、対国民所得比の数字が日本が25.63％なんですね*5。しかしこの資料は2003年基準であり、古い上に、そもそも社会支出と給与税を同格に見てはいかんなあと思います。
３．所得税
財務省が出している欧米比較のページがありました。
これを見ると、日本は６カ国中、個人所得課税は５位。まあ、これは実績ベースですけれども。
Abcはミニマムを「１５％」、マックス「５０％」と書いていますが、正確には「５％～４５％」ではないでしょうか*6。ちょっと何を参考にしたのかわかりません。
４．消費税
日本では消費税ですが、海外では付加価値税（VAT）と呼ばれるものです*7。比較したのは、国税庁のキッズ向けのページがわかりやすかったです。
VATは、サービスや物によって税率が変わる場合もあるので、一概には言えませんが、日本は税率が低いほうかなあと思います。だからもっと上げてもいいとか、いや潜在国民負担率云々みたいな話はややこしいし、よくわからないのでしません。
Abcは、記事内で「payroll tax(sales tax・売上税）」の表記もありますが、消費税と売上税を同一で見るのは消費者的には一緒ですが、政策的には大きく違うようです*8。というか、アメリカ以外の国を「payroll tax」とかって書いちゃうのは間違いなんじゃないかなあ･･･。ちょっとここらへんの細かい部分は自信ないですけど。
以上、Abcにならって４つの観点から見ましたが、少なくともこの観点において日本が2位につけるような部分はまるでありませんでした。どういう基準でもって、日本を世界で２位としたのかがよくわかりません。
今日のまとめ
①今回のソースのABC NEWS POINTというサイトはまとめサイト・キュレーションサイト的なものであり、信用度はかなり低い。
②記事内に記載のあった「法人税・給与税・所得税・消費税」の観点から比較をしたが、どの税の分野でも、日本が２位以上になるようなことはなかった。
いちおう、私を含め多くの人は税金が嫌いでしょうから、別に私もこの記事でもって日本の税金が諸外国より低いとかなんとかとか、そういう議論をする勇気も知識もありません。
実は、「日本 税金」のGoogle検索で現在トップに出るSuzieというサイト、去年の１０月で更新が途絶えているんですね。
この税金の記事はアクセス率が高いのか、同サイト内の人気記事ランキングでも２位につけています。
今回私が思ったのは、こうやって放置されているサイトでも、検索の上位にくれば、情報としての価値をもつわけです。１年以上前の記事でも、同じようにまとめに使うサイトもありますし*9、情報は目に付きやすいものから拡散していくわけです。そもそもAbcNewsPointというキュレーションサイトをソースにキュレーションサイトがまた記事を書くわけですから、情報は劣化し続け、なんというか、まさに悪貨は良貨を駆逐する、といったところでしょうか。気をつけたいものです。
*1:http://www.abcnewspoint.com/about-us/
*2:http://www.abcnewspoint.com/author/abc-news/
*3:法定実効税率の中に法人税を含むのですから、Abcの「Corporate tax」を「38.01」とするのはアヤマリですし、諸外国と比較をするなら、会社規模や地域によって税率が変わる法定実効税率より、法人税一本にしぼってもいいのでは、という気がします
*4:わかりやすかったのがここのサイト。
*5:OECD基準の社会支出の国際比較 P38
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-18c_004.pdf
*7:一応、財務省は同一のものと見ています。
日本の消費税は、他の国では付加価値税と呼ばれるものです。
*8:
なお、アメリカでは、州により税率の異なる小売売上税が課されていますが、これは小売段階で一度きり課される税であり、日本や欧州で採用されている多段階課税の消費税・付加価値税とは異なるものです。
*9:たとえば、
