こんなツイートが話題です。
ペンギンを歌った歌は必ず「飛べないけどがんばる・がんばれ」という趣旨の詞を含む。ペンギンは驚異的な進化で卓抜した泳ぎの能力を獲得したのであり、飛べないことなどどうでもよい。余計なお世話である。カモノハシの歌に「がんばって胎生を目指せ」みたいなものはない。なぜペンギンばかり標的に
— ながさわ (@kaichosanEX) 2017年4月14日
私はこの方のツイートがとっても好きで、よい意味で意味の無い含蓄のある言葉を諸々呟かれているのです。今回もその一環なのですが、ずいぶん話題になってしまったからか、めずらしく、
伸びはじめているので念のため補足しておきますが「ペンギンを歌った歌は必ず『飛べないけどがんばる・がんばれ』という趣旨の詞を含む」と言うのは言い過ぎで、端的に言えば噓です。よろしくご確認ください。
— ながさわ (@kaichosanEX) 2017年4月14日
「端的に言えば嘘です」と、フォローを加えていました。
でも、これだけ話題を集めるということは、「ペンギンは飛べないけどがんばる・がんばれ」みたいなイメージをみなさんが共有しているということなんでしょう。どうでもいいことが気になる身の上としては、どうでもいいと思いながら、日本の歌謡業界において、ペンギンはどういう立ち位置なのか気になってしまったので、調べてみました。今日はネタみたいなもんです。
「ペンギン」イメージ検索方法
方法としては、以下の「歌ネット」上で登録されている22万曲の中から、「ペンギン」をタイトルや歌詞に含むものを抽出しました。
該当曲は70曲。その中で、「ペンギン」がどのような意味で使われているかを、個人的見解から区分けしました。カテゴリとしては、以下のようになります。
動物 |
ペンギン目としてのペンギン |
|
歩き方 |
歩行の様子 |
|
寒さ |
冬や冷たいイメージ |
|
泳ぎ |
泳ぎがうまいイメージ |
|
見た目 |
燕尾服のような白黒など |
|
飛べない |
翼があってもとべない |
|
孤独 |
立ち尽くすな ど |
|
キャラクター |
固有名詞としてすでに存在するもの |
|
待つ |
ひとり待つイメージ |
|
その他 |
歌詞から判断ができなかったもの*1 |
で、そのカテゴリ別の割合を見てみると、以下のようになります。
実は、圧倒的に、いわゆる「ペンギン目」の種族としての「ペンギン」の使われ方が多いです。たとえば、
ここは動物園 ペンギンは ぬるい汚れた水
「鬼が島」平山みき
エンジン止めてください そしたらペンギン助かります
「ペンギン皆兄弟」 ペンギンフィルハーモニー寒厳楽団
というような、地球環境問題にからめたものから、
キリンの群れ ライオンの群れ ペンギンの群れ
「Mr.Mayの夢物語」芥川慈郎
トラ!キリン!ペンギンと! (ワーッ!) しゃべってみちゃっているんだよ
「アニマル☆ステイション!」 中谷育(原嶋あかり)
アニメのキャラソングに出てくるあんまり意味なく登場する「ペンギン」まで、後述するイメージには入らない、特にメタファーとして使われていないようなものを「動物」というカテゴリにしました。だから、ちょっと多くなるのは仕方ないかもしれません。
「歩き方」イメージが多い
次いで多かったのが、「歩き方」のイメージです。
踊る足つきは toddler-bubbler ペンギン・ウォーク
「ペンギンWALK」ハルメンズX
僕はペンギンの散歩のように 歩きたいのに
「どさん子華子のうた」奥華子
どちらかというと、「ペンギン」ときいて先に思い浮かぶのは、あのよちよち歩きのようなイメージなのかもしれませんね。
「孤独」のイメージ
そして、やはり「飛べない」ことに関しては、言及している歌詞は多いです。
白鳥になりたいペンギン*3 なりたくはないナマケモノ
「ZOO」ECHOES
翼を取り戻したペンギンたちが 空を飛び交う
「exotic penguin night」cero
「飛べない」けど「がんばれ」、と直接つなぐ歌としては、近いものとして、AKB48の「走れ!ペンギン」の、
遠い昔の君は
走ってたんだ
空だって飛べただろう
と言って、「走れ!」「飛べ!」と根性論で叱咤激励するものでしょうか。
また、the ARROWSの「ペンギンの翼」では、その翼を「無駄なもの」として捉えていますが、歌詞全体としては「必要なものが全てならこの世は色褪せていくでしょう?」と、肯定しています。
一方で、同じくらい、「孤独」をペンギンに見ている人たちもいます。
カラフルアクアリウム せつなく立ち尽くした 叶わぬ恋と知ってる 孤独なペンギン
「カラフル・アクアリウム」桃井はるこ
立ち尽くす僕は今もまるで 冬のペンギンにみえるだろう
「冬のペンギン」KinKi Kids
身動きもしないでじっと立ち尽くしている様子が、ひとりぼっちの象徴のようにもなっているんでしょうか。こっちの方が、歌としては映えるかもしれません。
そのほかのイメージについて
黒と白の燕尾服のような見た目を、「ペンギン」に例える歌詞もありました。
ベガスの街に トランクいっぱいのクウォーター詰めて 金持ちづらした ペンギン達を
「BLACK JACK」BY-SEXUAL
ツイードのダブルスーツを着たペンギン
「お願い胸騒ぎ」中島卓偉
ここら辺はツバメだってよさそうですが、ツバメは他の意味もあるので、ペンギンが選ばれたのかもしれません。そして、この時の意味はネガティブなにおいもするので、「鈍重」とかも付随しているかもしれません。
「泳ぎのうまさ」をイメージしている歌詞もありますが、
泳ぎのうまいペンギンでもなく 鳥になりたい訳でもない
「羽ばたけっ ~ステッチバードのテーマ~」羽ばたけっ ~ステッチバードのテーマ~
「泳ぎ」に関しては、イルカとか、単純に魚とか、そっちの方が想像しやすいのかもしれませんね。
「寒さ」の象徴として使われる場合もありますが、これも例が少ないです。
きっとぼくらは真夏のペンギン
「SHOUT」ピカソ
上記歌詞は「狂ったカナリア」と対になっており、「ペンギン」を「冬」や「寒さ」のイメージとして捉えることで、「真夏」との対比性を際立たせている、というような感じでしょうか。
全てのイメージが詰め込まれた山崎まさよし
実は、上記のような「飛べない」「歩き方」「孤独」「泳ぎ」「見た目」全てが詰め込まれた歌があります。山崎まさよしの、その名もズバリ、「ペンギン」という歌です。
- アーティスト: 山崎まさよし
- 出版社/メーカー: Universal Music International Ltda.
- 発売日: 2016/11/10
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
まず、歌はこう始まります。
むなしく やりきれない ペンギン watching TV
これはどうも、「孤独」をイメージしているようです。
そして、続けて、
空虚にゆううつな ペンギン walking the street
とあり、あのよちよち歩きで、たどたどしく道をゆく姿が想起されます。
夢にまで見たアイランド
空にいるご先祖様
は、「空を飛ぶ」ということに関する強い願望が見て取れます。「納得しないまま」に「flying into the sea」では、「泳ぎ」に特化してしまった様子がわかります。
そして、終わりには、
ひしめき合ってる パーティーのはじっこで
一人何思うタキシード
と、「見た目」の白黒とともに、もう一度「孤独」を強調しています。
よって、日本歌謡界における「ペンギン」の集大成は、山崎まさよしなのではないか、という仮説が成り立ちそうですが、いかがでしょうか。いかがもなにもないですね、はい。
という、今日はくだらないお話でした。くだらないんだけど、けっこう調べるのに時間はかかっていることは付け加えておきます。