ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

イオンは原産国表示をバーコードで誤魔化しているのか、善く生きる

すでに元ツイートは削除されていますが、イオンのプライベートブランド(PB)であるトップバリュ製品について、以下のような情報がありました。

 

イオンは韓国、中国産の食品が評判が悪く売上が下がったと地元のイオンに勤める女性パートさんから聞いた。
今度は産地表示を明らかにしない。そのイオンの逃げた方法は一般客が知る余地も無いバーコード表示をして逃げ道を作る悪質な手口。韓国中国産二つの国だけ識別番号を覚えましょう。悪質💢

イオンは韓国、中国産の食品が評判が悪く売上が下がったと地元のイオンに勤める女性パートさんから聞いた。… |@fujisan1128さんのTwitterで話題の画像

 

PBだとは明記していませんが、他社メーカーのものは他のスーパーでも売っているためバーコードはいじれませんので、PB商品だと考えましょう。ツイート主は、880と690がそれぞれ韓国産と中国産の番号であるという画像を載せています。

 

リプ欄でも、バーコードでは原産国は判別できないのではないか、という指摘がありましたが、そこんところを調べてみました。今回は時間がかかったわりには短めです。

 

***

 

JANコードで原産国はわからない

ツイート主が言う「バーコード」は、「JANコード」のことです。一般財団法人 流通システム開発センター のサイトに寄れば、JANコードとは、

 

JANコードは「どの事業者の、どの商品か」を表す、世界共通の商品識別番号です。

GS1事業者コード・JANコードとは | 一般財団法人流通システム開発センター

 

とのこと。JANコードは日本の呼び方で、国際的には「EAN (European  Article Number)コード」と呼ばれますね。

 

 

①のGS1事業者コードの部分が、今回、国によって番号が違うと話題になっていたところです。「45」もしくは「49」が日本の国コードを表します。「国コード」は、正式には「GS1プリフィックス」と呼ばれ、これは勝手につけていいものではなく、基本的には流通システム開発センターのように、認可を受けて貸与されるものであり、そもそも自前で変更ができるものでもありません。

 

しかも、流通システム開発センターは、わざわざ、「国コード」と「原産国」は一致しない旨を注意書きしています。

 

JANコードは、"商品の供給責任者(ブランドオーナー、発売元、製造元等)"がどこの事業者(企業)か、さらに、該当する事業者(企業)の何の商品かを識別するためのものであり、"原産国"を表示しているものではありません

JANコードの国コードと原産国について | 一般財団法人流通システム開発センター

 

その上で、例えば海外での委託生産をしている場合は、「商品の供給責任者である日本の事業者(企業)のJANコードが印刷されます」とあるので、恐らくイオンのPBのトップバリュの製品は、たとえ海外で生産されていたとしても、海外の国コードはつかないだろう、という推測が成り立ちます。そもそも、JANコードは原産国指定の識別のために用いるものではないので、それは当然と言えば当然です。なので、「88」や「69」のついているバーコードは、すぐに海外産とわかるような商品であることがほとんどでしょう*1

 

トップバリュに中国産と韓国産はどの程度あるのか

とはいっても、疑り深い諸氏は、トップバリュ製品には多量に中国や韓国の製品がまぎれているのではないか、と思う向きもあるでしょう。

 

記事執筆現在(2018年1月30日)、トップバリュの食品は3410件ヒットします*2。最初はこれを全て調べようとしたのですが、100件ほど調べて嫌気が差したので、調査方法を以下のようにしました。

 

トップバリュの製品情報には、下記のように、どこの工場で作っているか記載があります。

 

f:id:ibenzo:20180130215004p:plain

https://www.topvalu.net/items/detail/4549741160094

 

これは、都道府県の情報が入ることもあれば、海外での委託生産の場合は、国名が表記されることもあります。

 

f:id:ibenzo:20180130215210p:plain

 

なので、調べ方としては、

 

①「https://www.topvalu.net/items/」内に、「韓国の工場」もしくは「中国の工場」、あるいは「原産国 中国」「原産国 韓国」というワードが入っているページをGoogleで検索する。

②もれたものについては、適宜トップバリュ内の食品ページからしらみつぶしに探す。

 

という感じにしてみました。

 

で、調べた結果は以下の通りです。

 

 

JANコード

商品名

生産場所

原材料

1

4549741332415

3種の魚介の旨み 熟成キムチ

韓国

 

2

4549741185103

Almond CHOCOLATE アーモンドチョコレート

韓国

 

3

4549741248044

BARREAL EXTRA Rich Taste バーリアル エクストラ リッチテイスト

韓国

 

4

4549741247962

BARREAL EXTRA バーリアル エクストラ

韓国

 

5

4902121280872

BARREAL バーリアル

韓国

 

6

4902121280940

BARREAL バーリアル 糖質50%オフ

韓国

 

7

4902121279203

BERRY ASSORT 3種のベリー味ガム

韓国

 

8

4902121279197

GRAPE グレープ味ガム

韓国

 

9

4902121279166

LIME MINT ライムミント味ガム

韓国

 

10

4902121279173

MIX MINT ミックスミント味ガム

韓国

 

11

4902121279210

PEPPER MINT ミント味ガム〈フラボノイド入り〉

韓国

 

12

4902121279180

STRONG MINT ストロングミント味ガム

韓国

 

13

4549741014960

β-カロテン入り 飲む酢 ざくろ

韓国

 

14

4549741535199

アーモンドチョコレート ビター カカオ70%

韓国

 

15

4902121791965

カロリー50%カット カフェオレ カロリーハーフ

韓国

 

16

4902121791958

コーヒーのしっかりした味わい カフェオレ

韓国

 

17

4902121131594

ココアの香り引き立つ ココアオレ

韓国

 

18

4902121124466

サクサク食感 ベイクドクラッカー BAKED CRACKERS

韓国

 

19

4549741058865

ビッグミントタブレット Cool Mint

韓国

 

20

4549741058872

ビッグミントタブレット Refresh Mint

韓国

 

21

4901810658398

ラガービール

韓国

 

22

4901810017713

香ばしく焼き上げた クラッカープレーン CRACKERS PLAIN

韓国

 

23

4901810863181

4種の野菜と豚肉使用 春巻き

中国

パッケージ参照

24

4901810896677

6種の和惣菜

中国

 

25

4549741462518

World Dining 海老餃子 SHRIMP DUMPLINGS

中国

 

26

4549741462501

World Dining 五目野菜とイカの餃子 STEAMED VEGETABLES AND SQUID DUMPLINGS

中国

 

27

4902121959648

あく抜きいらず 小結びしらたき

中国

 

28

4902121400409

あじフライ

中国

 

29

4902121286577

いわしの梅肉・大葉入りパン粉焼

中国

いわし(中国)

30

4902121413300

オーガニック 2色アスパラ入りの 野菜ミックス

中国

 

31

4549741025720

オーガニック 7品目の和風野菜ミックス

中国

 

32

4902121904860

オーガニック いんげん

中国

 

33

4549741347679

オーガニック カットほうれん草

中国

 

34

4902121904853

オーガニック グリーンアスパラ

中国

 

35

4549741347662

オーガニック ささがきごぼう

中国

 

36

4902121285549

オーガニック たけのこ水煮 穂先スライス

中国

 

37

4901810015030

オーガニック たけのこ水煮 穂付き

中国

パッケージ参照

38

4902121233144

オーガニック ブロッコリー

中国

 

39

4902121470792

オーガニック ほしいも (角切り)

中国

 

40

4902121148257

オーガニック むき甘栗

中国

パッケージ参照

41

4902121880591

オーガニック 割れちゃったむき甘栗

中国

有機栗(中国)

42

4901810753314

オーガニック 洋風野菜ミックス

中国

 

43

4902121408665

オーガニック 洋風野菜ミックス

中国

 

44

4549741431125

コクのある ますいくら醤油漬

中国

 

45

4901810833177

コシが強く煮くずれしにくい 緑豆はるさめ

中国

緑豆でん粉(中国)

46

4901810446964

コリコリとした食感 スライスきくらげ

中国

中国産菌床栽培(おがくず栽培)のきくらげ

47

4549741288576

サラダチキン ささみ肉 ハーブ

中国

 

48

4549741288569

サラダチキン ささみ肉 プレーン

中国

 

49

4549741288552

サラダチキン むね肉 ハーブ

中国

 

50

4549741288545

サラダチキン むね肉 プレーン

中国

 

51

4902121912643

なめらかな食感 さといも

中国

 

52

4902121485192

フルーツがごろごろ グレープゼリー&ナタデココ

中国

 

53

4902121485130

フルーツがごろごろ みかんゼリー

中国

 

54

4902121485154

フルーツがごろごろ ミックスゼリー

中国

 

55

4902121485178

フルーツがごろごろ 白桃ゼリー

中国

 

56

4549741040693

ボイルあさりむき身

中国

 

57

4549741182027

むき栗 Chestnuts

中国

 

58

4901810863174

もちもち食感の 水餃子

中国

パッケージ参照

59

4902121914043

芋の形のまま皮をむいた さといも

中国

 

60

4901810499793

塩ゆで そらまめ

中国

 

61

4901810823567

下ごしらえ済み いんげん

中国

 

62

4901810768677

下ごしらえ済み ブロッコリー

中国

 

63

4901810768684

下ごしらえ済み 洋風野菜ミックス

中国

 

64

4902121791149

寒気にさらした越冬作 カットほうれん草

中国

 

65

4549741166119

鶏もも肉を使った 炭火焼照り焼きチキ

中国

 

66

4549741446075

根菜をつかった 彩り3種のおかず

中国

 

67

4549741150569

彩り3種の和惣菜

中国

 

68

4902121791163

彩り鮮やかな 洋風野菜ミックス ブロッコリー・カリフラワー・にんじん

中国

 

69

4549741263917

食べやすく乱切りした 揚げなす

中国

 

70

4549741166102

生姜香る 豚ロース生姜焼き

中国

 

71

4902121375127

豚肉のうまみが広がる ロールキャベツ

中国

 

72

4902121400393

白身魚フライ

中国

 

73

4549741337939

箱ごとレンジ フライドポテト FRIED POTATO

中国

 

74

4901810499809

便利なミニパック きざみおくら

中国

 

75

4901810422395

便利なミニパック きざみねぎ

中国

 

76

4549741186889

味わいそのまま MSC認証 減塩たらこ

中国

すけとうだらの卵巣(ロシア又はアメリカ)

77

4901810588541

野菜ミックス とん汁の具

中国

 

78

4901810588534

野菜ミックス 野菜スープの具

中国

 

79

4902121099900

料理に使いやすい 小結びしらたき

中国

 

80

4902121914463

和風しょうゆ味 若どりもも唐揚げ

中国

 

 *3

 

これを見ると、明らかな韓国産は22件、中国産は58件ということがわかります。これが総数の3000件超と比べて多いか少ないかは個人の感覚によるのかもしれませんが、個人的にはそこまで多い印象を受けません。また、当たり前ですが、JANコードが88や69で始まるものも一つも存在しません

 

傾向としては、中国産は有機野菜系が多いです。これはなぜかと言うと、イオンは有機JAS認定事業者を、中国の企業で選んでおり、そこからの輸入・加工している冷凍品がリストに多く含まれるからです。

 

韓国はビール、それからお菓子系が多いですね。うーん、これはなんでなんでしょう。ちょっと理由がわかりません。

 

原産国がネット上で判別できないものもある

ただ、あくまでこれは、WEB上に表記があるもので、実際の商品を見てみると、「原産国 中国」とあるのに、ネット上で表記がないパターンもあります。

 

例えば、「種ぬき割り梅」という商品は、商品上には「原産国名 中国」とありますが、

 

f:id:ibenzo:20180130224229p:plain

 

トップバリュのサイトでは特にその表記がありません。

 

f:id:ibenzo:20180130224418p:plain

https://www.topvalu.net/items/detail/4549741413435

 

イオンのトップバリュ製品は、「イオンが企画・設計から販売にいたるまで、すべてにおいて責任をもつという理念」から、すべて「販売者:イオン株式会社」としか表示されていません。しかし、数年前のアグリフーズの異物混入事件の際に、それではどの工場のラインのものかがすぐに判別できなかったため、多くの場合「製造所固有記号」という記号がついていて、どの工場でつくられたものかが判別できるようになっています。

 

例えばこの割り梅には「A615」の記号がついており、イオンの検索システム

 

www.topvalu.net

 

で調べてみると、「株式会社壮関」という会社が製造していることがわかります。

 

この会社の製品を見てみると、同じような梅干の販売をしていることがわかるので、きっとトップバリュの製品は、それを流用しているものだろうという事が推察できます。

 

ところが「株式会社壮関」が製造している同じようなものであろう製品がローソンにあるのですが、

 

https://fresh.lawson.jp/goods/47118

 

これは「原産国」ではなく、「原料原産地名」が中国となっています。なので、このローソンの製品は「株式会社壮関」が、最終的な加工*4を行っているのだろう、と推察できます。梅自体を輸入して、例えば手割風に加工して梅味に漬けた、というところでしょうか。

 

「原産国」は、端的に言えば、実質的な変更をする最終加工地がどの国かと言うことです。ところが、トップバリュの梅干は「原産国 中国」とあるので、最終加工の過程が中国で行われているのではないか、と考えられるのですが、そうすると、「栃木県の工場で製造しています」という表記と矛盾するような気がします。国内では多分袋詰めだけとか、加工をしていないという意味なんだと思うんですが、ちょっとこんがらがってわからなくなりました。教えて詳しい人*5*6

 

いずれにせよ、ネット上では全ての情報が網羅されているわけではないので、前述した80件の中国・韓国産は、最低ラインがその数、と思っていただければと思います。

 

今日のまとめ

①JANコードにある国コードで、原産国を調べることはできない。

②現在イオンの3000件以上あるトップバリュ製品の中で、中国・韓国産と明記されているものは80件程度である。ただしウェブ上では原産国が省略されていることがある。

 

私は食の産地とかあまり気にしない人間なので、とことん気乗りしないまま調べてみたのでやる気がない感じで申し訳ないんですが、まあ、調べてみると気にする人は気にするんですね。ただ、当たり前なんですが、法律で決められている部分については、イオンは忠実に守っています。そこをとやかく言うのは、イオンではなく消費者庁とか政府とか、もっと大きめのとこではないでしょうか。

 

中国産や韓国産を毛嫌いする人と言うのは、イデオロギー的な部分を除けば、身体に悪いものはたべたくない、ということでしょう。これは自然なことです。なぜ食べたくないかといえば、悪いものを食べれば健康が害されるからです。健康が害されるものを避ければ、嫌な病気にかからず、長生きできるかもしれませんね。しかし君、そうやって長生きしたところで、いったい何をするんだい? 大切なのは身体を健康にすることなのかい? それよりも、健康な身体で何を為すべきかを考えるほうが大切ではないのかね? とまあ、ソクラテス翁ならば、訊ねると思うんですが。

 

 

 

 

 

*1:

ちなみにこの話題は6年ほど前にも出ています。情報の再生産ですね。

韓国産、中国産? バーコードで原産国を見分けられるという大きな罠 - NAVER まとめ

*2:

食品 - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ) - イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ)

*3:商品名や、パッケージに書かれた国名など、詳細な情報についてはPDFにまとめました。

https://ux.getuploader.com/storefornetlore/download/7

*4:

この場合の「加工」は、ただ現地で作られたものを袋詰めするというだけでなく、「その内容について実質的な変更をもたらす行為」が行われたのだろう、ということです。

http://kinkiagri.or.jp/library/shoku_an_an/Gensanti_Kakouti.htm

*5:

2017年9月1日から、新しい原料原産地の表示ルールが始まり、今は移行期なので、どのルールをイオン側が採用しているのかもよくわかりません。

2017年9月1日 新たな原料原産地表示制度がスタート 複雑な表示を見分ける3つのキーワード | FOOCOM.NET

私は、これは「原産国」ではなく、「原料原産地」の方が表記としてはいいんじゃないかと思ったのですが、ちょっと自信ないです…。一応、問い合わせはしていますので、結果がわかれば追記します。

*6:むき栗も、「原産国名 中国」という表記ですが、

f:id:ibenzo:20180131224255p:plain

「輸入者」表記でイオンの名前があり、これは明確に中国側で最終加工が行われていることがわかります。ここの違いがよくわかりませんでした。