さて、東京オリンピックのエンブレムが盗用だとかそうじゃないとかもめています。
素人目に見ると、確かにベルギーの劇場のロゴと、今回のエンブレムはよく似ている気がします。デザイナーの皆さんに聞くと、どうも違うという意見が多くて、陰謀論が好きなネットの皆さんは、それにも色々と憶測がたつようです*1。
盗用したかどうかはともかく、一般的には似ているデザインではあるでしょう。自分がもし五輪のエンブレム担当者だとしたら、思わず辞表を書いちゃう気分です。
で、今回は、自分が担当者だとして、このベルギーの劇場のロゴに果たして辿り着けるかどうかを、検証してみたいと思います。ネットだけで。
このエンブレムのメインは図面中央の大きな「T」です。というわけで、「T logo」で検索してみます*2。
うーん、あんまり似ているのはないかなあ。と思いますね。「T emblem」や「T symbol」などで検索しても同じです。
しかし国策のオリンピック。ここで安心はできません。初心に立ち返るために、ベルギーのロゴを見ていきましょう。
この意匠は、THEATREの「T」と、LIEGEの「L」を組み合わせた形になっています。デザインしたドビさんのサイトを見ると、文字部分を透かして、いろいろな応用をさせているみたいです。ひっくり返せるので、こういうのを「アンビグラム」というそうですね。
debie graphic design(リンク先フランス語)
まあ、この二つの文字同士を組み合わせるロゴは古今東西いろいろあって、JRなんかもそうですし、海外の劇場つながりでいくなら、イギリスのNationalTheatreの昔のロゴも、こんな感じで、
NとTの組み合わせになっています。
東京のエンブレムに関しては、まだ盗用疑惑の出る前、アメリカのWIREDの記者が、このロゴについて「T」と「L」、「r」の組み合わせのように見えると書いていて、Tや赤丸の意味はわかるが他の意味はよくわからんということを言っています。*3。
どうもアルファベット圏の人たちにはこのロゴが「T」と「L」の組み合わせに見えて「混乱する」という意見が、盗用疑惑の前からぼそぼそ出ていました。
上記のサイトのコメント欄をいくつか参照すると、
I like the simplicity but there is an explicit "L" which is very confusing
シンプルでいいと思うけど、このでっけえ「L」はなんだ
I saw it as an abstracted 2. With the whitespace creating the 0.
これは「2」を示しているのよ。白いスペースは「0」(2020にかけてるということかな)
What the L? :)
なにこのL?w
と、えらく「L」が気になるようです。
ちなみに、日本の反応については、以下を参照。
圧倒的「ダサい」という意見が多いですが、ロゴが「L」に見えるという言及はありません。つまり、日本人の感覚ではあまり「T」と「L」の組み合わせにあまり見えないということです。
では今度、「T L logo」で検索してみましょう。すると、あれ、似たのが出てきましたよ!
某探偵なら、ここで「あれれー」というところじゃないでしょうか。
作成者はMiroKozel。スリランカの人のようです。
ロゴを登録した日は2013年12月3日。ちなみにベルギーのリエージュ劇場は2013年9月30日が設立らしいので、ベルギーはぱくってないですね。誰かこのスリランカの人に「訴訟の準備はできてますか?」とメールしてあげてください。
いずれにせよ、東京エンブレムが「T」と「L」の組み合わせに見えるという感覚があれば、もしかすると、類似のロゴの存在に気付けたかもしれません。まあ、電通やらなんやらのしがらみがありそうですから、気付けたところでどうしようもできなかったかもしれないですが。
また、別のデザインについてもこんな盗用疑惑が出ています。
今度はスペインだそうですが、今度は主に配色についてですね。
しかしこの配色は、探すと色々出てきます。
モンテネグロのRTCGというラジオ局のロゴなんか、結構よく似ています。
The Branding Source: New logo: RTCG
劇場つながりでいうなら、「American Ballet Theatre」というロゴも、赤がないだけでよく似ている配色です。
File:American Ballet Theatre logo.png - Wikimedia Commons
他にも以下のサイトで、配色を選んで画像を検索すると、結構出てきます。
私はデザインは詳しくないんですが、補完色とかなんとかで、結構落ち着いちゃうカラーパターンって言うのは、決まってきちゃうんじゃないでしょうか。スペインのはデザイナー本人が訴えたわけでなく、外部からの指摘で気づいたというところなので、言いがかりレベルなのかなあという気もします。
以上、検証してみると、デザインの盗用云々よりも、チェック体制や選考基準の不透明さというところに、問題はあるような気がします。利権がからみ、政治が絡み、となると、ブラックボックス化するのはもう様式美みたいなものなのかもしれませんね。
*1:個人的には、64年東京オリンピックのロゴを作った亀倉雄策の賞をとってるところなんかも陰謀論作成には役立ちそうです。JAGDA:第17回亀倉雄策賞 佐野研二郎
*2:ちなみに、エンブレムそのもので画像検索をした結果は、この別の記事を参照。意味がありませんでした。
*3:Tokyo's Olympics Logo Is a Confusing Geometric Mess | WIRED
ちなみにこの記事のエンブレムのデザインの評価は悪いです。しかし弁護をするなら、一応24日の発表の際に、理念についての説明はされています。東京2020大会 このエンブレムの下に - 電通報