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ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

2015年のある晴れた朝に心愛凜ちゃんに出会うことについて

国内ニュース

キラキラネームやらDQNネームやら、名づけに関してはかまびすしい世の中ですが、2015年の上半期の赤ちゃんの名前のトレンドランキングというものが出たそうです。オリコンか。

jin115.com

「赤ちゃん名づけ」というサイト*1があり、これはリクルーティングスタジオ*2というアプリ開発会社が、自社のアプリやサイトで名前が検索された履歴からはじき出したランキングのようです。

ランキングは以下のようになっています。

 

順位名前
1位 心桜
2位 陽翔
3位 心愛凜
4位
5位 杏柚
6位 惺梛
7位 蒼音
8位
9位 大翔
10位 湊斗
順位名前
11位
12位 結愛
13位 陽菜
14位
15位 春陽
16位 蒼大
17位
18位 栞菜
19位 颯太
20位

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、なかなかギンギラギンでさりげなくない名前が多いですなあ。

しかしいくらなんでも、「心愛凛」とか「惺梛」とか、あまりにも読めなくありません?さすがに世の中を見渡してみても、そこまでではないと思うんですけどね…

というわけで、このランキングは果たして妥当なシロモノなのかどうかが、今回のお題です。

 

 

名前ランキング、と聞いて思い浮かぶのが「明治安田生命」と「ベネッセ」が年末にいつも出しているその年の名づけランキングです。

ちなみに皆様は、どうやってランキングを出しているかご存知でしたか?私は知りませんでした。

 

明治安田生命は、「個人保険・個人年金保険の保有契約 約1,145万件を調査 うち2014年生まれの男の子3,481人、女の子3,273人」*3とあるので、保険契約者の名前から作っているわけです。

ベネッセに関しては、「お客さまからお寄せいただいた赤ちゃんのお名前をもとにランキングデータ」とだけ記載があり*4、ちょっとアバウトでよくわからないのですが、恐らくたまひよでなんか買ったり、投稿したりしたデータを元にしてるんじゃないかと思います。

つまり、この「赤ちゃん名づけ」というのが妥当かどうかは、2014年の「明治安田生命」「ベネッセ」の3社で比較してみればええんでないでしょうか。*5

というわけで、比較の表が以下のようになります。20位まで抽出したので、同率位の場合はちょっと数がそろわなくなってます。

 

【男の子】

ベネッセ 明治安田生命 赤ちゃん名づけ
1 悠真 1 1 陽翔
2 2 大翔 2 颯太
2 悠人 3 陽向 3
4 大翔 4 陽太 4
5 颯真 5 悠真 5 琉生
6 陽太 6 6
6 陽翔 6 悠人 7 愛翔
8 6 8
9 駿 6 駿 9
10 陽斗 10 朝陽 10
11 朝陽 11 大和 11
11 大和 11 悠馬 12 大翔
13 13 悠斗 13
14 翔太 13 14 悠斗
14 悠翔 15 瑛太 15 翔太
16 15 16 栄誓
17 蒼太 15 陽斗 17 陽太
18 春馬 15 颯太 18
18 悠斗 19 19
20 颯太 19 優太 20
    19 悠希    
    19 陽翔    
    19 翔馬    
    19 颯介    

 【女の子】

ベネッセ 明治安田生命 赤ちゃん名づけ
1 陽菜 1 陽菜 1
2 結愛 1 2 心桜
3 結菜 3 結菜 3 莉琉
4 4 4 惺梛
5 さくら 5 結愛 5
6 結衣 6 愛莉 6 結愛
7 6 美咲 7 心愛凜
8 愛莉 8 結衣 8
9 芽依 9 9
10 陽葵 10 10
11 心春 10 心春 11
12 美桜 10 12 心愛
13 ひなた 10 愛梨 13 陽菜
13 莉央 14 芽依 14 絆琉
15 美結 14 莉子 15 結菜
16 愛梨 16 さくら 16 栗果
16 16 美桜 17 那華
18 美月 18 あかり 18 杏奈
18 18 19 羽奏
20 優花 18 20 結月
20 琴音 18 美月    
    18 悠月    

 

これ、比較してみるとわかるんですが、「ベネッセ」と「明治安田生命」は順位に差はありますが、結構おんなじ名前が多いんですね。しかし、「赤ちゃん名づけ」に関しては、「椛」「心愛凜」「惺梛」など、特に女の子でまったくランキングに入ってこない名前が入れられています。3社全て20位以内に含まれている名前は、男の子で7件、女の子で4件だけです。*6

つまり、「明治」と「ベネッセ」は「既につけられた名前」であるのに対し、「赤ちゃん名づけ」サイトは、「アプリ・サイト内でアクセスされた名前」であることがどうやらミソになってきそうです。

私が気になっているのは「心愛凜(しえり)」という読み方もよくわからん名前なのですが、どうしてこれが3位になるのかちょっと理解に苦しみます。「しえり」って言いにくくない?

どうしてこの名前が検索されるようになったのか。「心愛凜」を2014年内に限ってググってみます。そうすると、同じ「赤ちゃん名づけ」の2014年のトレンドとしてとりあげられていますね。

joshi-spa.jp

2013年に範囲を絞ってぐぐってみても、この名前は出てきませんし(あるのは2014年の記事に関してだけです)、まあさすがに全部のリンクにあたるのは不可能ですけど、ざっと見た感じ、どうやら2014年に生まれた新しい名前のようです。「新しい名前」の誕生に立ち会うってすごいですけどね。

さあ、では「赤ちゃん名づけ」に戻ってみましょう。

そもそも、この「心愛凜」をつけた人は何を思ってつけたのか。「赤ちゃん名づけ」では、由来を書き込む場所があります。それによると、2014年6月24日に「みるみるさん」という人が「心から愛される凛とした花のように。」と書き込んでいます。ふふーん。

ここで、この「赤ちゃん名づけ」のランキングは「アプリ・サイト内でアクセスされた名前」であることを思い出してください。そして、サイト内では常に「日別TOP10」などで、アクセスの多い名前を表示しています。もしたまたまあなたがこの「心愛凜」という字面をみたら、ちょっと何て読むのか気になりませんか。そしたらクリックしたくありませんか。

という感じで、2014年6月に「心愛凜」はサイトに登録され、そしてこの名前は、読めそうで読めない絶妙な難読さゆえに、アクセスが増えていったんじゃないでしょうか、というのが私の推測です。「赤ちゃん名づけ」のランキングだけ難読名が多いのは、そういう傾向もあるからのように思います。

 

それにしても、最近の名前に使われる漢字では、「椛」「凛」など、あまり見ない漢字が多いですね。それもそのはずで、これらの言葉は2004年の戸籍法施行規則改正で新たに加えられた漢字なんですね。ここら辺の経緯はSanseido Word-Wise Web [三省堂辞書サイト] » 人名用漢字の新字旧字:「凛」と「凜」というページが詳しいので、参照してみてください。要するに、市民が起こした裁判の結果から、人名の漢字を大量に加えることになったんですね。

改正されて使えるようになったから、そういう名前が多くなったのか、ニーズがあったからそういう訴訟が起こって名前が増えたのか、ニワトリとタマゴの問題ですが*7、まあ我々が死ぬ頃には、そういう名前も廃れているのかもしれませんね。

 

 

*1:赤ちゃん名付け実績No.1/無料 赤ちゃん名づけ

*2:リクルーティング スタジオ株式会社|会社情報

*3:明治安田生命 | 名前ランキング2014 - 調査要領

*4:http://tamahiyo.jp/namae/に載っているのですが、個人情報をおもらしした会社として、このアバウトな取り扱い方はよろしいのかなあという気もします。つっつきたい人はお好きにどうぞ。

*5:参照したページは以下のとおり

○ベネッセ:赤ちゃんの名前ランキング2014|妊娠・出産・育児のことなら「たまひよ」|Benesse(ベネッセ)

○明治安田生命:明治安田生命 | 名前ランキング2014 - 名前ベスト100 - 女の子

○赤ちゃん名づけ:赤ちゃん名付け実績No.1/無料 赤ちゃん名づけおよび赤ちゃん名付け実績No.1/無料 赤ちゃん名づけ

*6:ベネッセと明治だけでの一致にすると、男の子は12件、女の子は15件と相関が見られる感じです。

*7:個人的には、「僕と彼女の生きる道」に出てきた凛ちゃんがあまりにいい子だったから、そういう名前をつけたがる人が増えたんじゃないかと思っています。あのドラマ、ちょうど2004年だし。