暑い日が続きますね。もうさすがにうちではエアコンを使い始めました。
半年ほどまえの記事ですが、所沢市長が小中学校のエアコン設置の是非をめぐって住民投票をしたものです。所沢市長は最近では育休退園の話など*1、ちょっと昭和的なにおいのただよう方で、「時代錯誤」なんていわれてましたが、エアコンのときも同様に、「昔とは暑さが違うんだよ」というような話が出ました。
うーん、しかし、本当に年々日本は暑くなっているんでしょうか。検証してみたいと思います。
気象庁は便利なデータを公開していて*2、観測を始めた頃からの気象データをネットからダウンロードできるようにしてくれています。実は同じような検証をしているサイトはいくつかあったのですが*3、まあ、自分で確かめてみてこその検証だとも思うので。
8月に絞って、過去ウン十年分の東京のデータをそろえてみました。
まず1945-2014の東京の8月の平均気温の移り変わり。
次に、真夏日(最高気温が30度以上)の回数について。
熱帯夜(最低気温が25度以上)の8月の回数。
不快指数が75を超えた日を不快日といいますが、それだと8月はほとんどなってしまうので、平均の80を超えた日を数えました。
ぶっちゃけよくわからん!
近似の値とかとってみると、平均気温は0.03ぐらいなので、まあ70年で2度ぐらいはあがっているかなあという気がしますが、私は統計は門外漢なので正しいかどうかわかりません。
わかりやすいのは熱帯夜の増加で、これは右肩あがりになっているのがわかりますね。つまり、最低気温が年々あがっているのはわかります。
これはヒートアイランド現象がからんでいるらしく、次のサイトが詳しいです。
温暖化の科学 Q19 暑い日が増えたのはヒートアイランドが原因? - ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター
ただし、温暖化や自然環境の変化など様々な原因がからんでくるので、一概には言えないようですが。
ようするに、気温の上昇はいえるといえばいえるけれど、そんなに近年と比較して、体感的に明らかな差異を感じられるのかなあというのは疑問なところです。「ちなみに湿度が高くなっている」説もよく見かけますが、これは不快日数を見てもわかるように、あまり変化がないかと思います。
ということで、「毎年暑くなっている」という発言はどのぐらい前から言われているのかを調べたいと思います。
まず単純にGoogleさんで「毎年暑くなっている」と検索すると、現在はトップに2012年7月30日の「毎年去年より暑いと思う原因」という、今回のとだだかぶりのOKwaveの質問記事がでてきます。
そろーっと他の検索結果を見てみると、「なぜこんなに毎日暑いのでしょうか?毎年毎年暑くなっている気がします。」という知恵袋の質問が出てきます。これは2010年8月24日。2010年は記録的猛暑でしたからね。*4
ん?もしかすると、毎年知恵袋なりし教えてGooなり自分のブログなりに、「毎年暑くなっている」と感じてコメントする人がいるんじゃないんでしょうか?それを調べれば、どのぐらいから「暑くなってるなあ」という感じがみんなの間に出てきたかわかるんではないでしょうか。
ということで、各年夏の真っ盛り(7月1日~9月30日)までの間でしぼって検索してみます。
まず2014年。
直球の質問をしている人はいないのですが、「マンション、お子さんが泣いても騒いでも窓を閉める方が誰もいません」という知恵袋の質問の中に、「こちらは北海道なのですが、年々暑くなってきていて」という記述があります。真実かはともかく、そのように感じているということです。質問系ではないですが、この年に記事を作っておられる方も多いです。*5
2013年。
「札幌の夏の暑さに関しての質問です。 - 今年の夏(7月下旬or8... - Yahoo!知恵袋」という質問が2013年7月9日にあり、「年々暑さが増しているのではないかと思います。」という質問に対して、札幌の方が「年々暑さが増している、というお話には、そんな気がする、と思いますね。」と答えています。他にも、質問ではないですが8月1日の「料理 | 気になる噂のエンタメ」という夏ばて予防記事の中に、「年々暑くなって来ていますが、夏バテに悩んでいる人も増加中です」と、まるで季語のように自然に書かれています。
2011年。
「年々、日本の夏が暑くなるのは何故ですか? - 子供の頃と比べ... - Yahoo!知恵袋」という直球の質問が7月17日にあります。
2009年。
「年々暑くなる夏」(リンク先PDF)ということで、信州のクリニックが出している通信がヒットします。7月20日ですね。
2008年。
「開業医減少」というタイトルのよくわからないブログに、時候の挨拶のように「日本の夏は年々暑くなっていますが」と書かれています。8月17日。
2007年。
「塩分」というタイトルの日記みたいな記事。熊谷が40.9℃の最高気温の記録(当時)を出したことに触れ、「それとも、年々暑くなっているからこれも『例年並み』という含みだろうか。」とある。8月18日。
2006年。
久しぶりの質問系「日本の夏は年々暑くなっているのですか? - 環境学・エコロジー | 教えて!goo」。回答は気象庁の何かのデータ(リンク切れ)で持って上昇していることを言っています。9月15日。
2005年。
「地球温暖化 | sasapurin's Blog」というタイトルでもって、「年々暑さは酷くなってきている気がする」というコメントを書き残しています。7月28日。
2004年。
「背広はやめよう : 美容・ファッション・ダイエット : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)」という小町さんの回答の中に、「地球温暖化で年々暑くなってきましたね」と、当然のように書かれています。7月28日。
2003年。
「女性ひとりの京都旅行。 【OKWave】」という奥様の京都一人旅を心配されるご主人への回答の中に、「長年暮らしているとそんなに思わないのですが、やはり年々暑くなっている気がします」と、京都についての言及があります。8月28日。
2002年。
「軸組模型::オンライン設計室/大系舎」という、読み方のわからないタイトルの記事に、「夏の暑さは、年々厳しくなるようです。」とあいさつが書いてあります。8月。
2001年。
とり関係の掲示板に、「小学校の頃って、ここまで暑くなかった覚えがあるんだけど、、、年々温暖化が進んでるって事なのかな」という投稿があります。7月10日。
2000年から前に関しては、残念ながら見つかりませんでした。Googleのウェブ巡回がどのあたりから本格的になってきたかにもよると思うので、一概には言えませんが、21世紀に入ってから、「年々暑くなっている」と思う人が増えてきたということでしょうか。ちょっと苦しいかな。
逆に言うと、もう既に十数年、日本に住んでいる人たちは、「毎年暑くなっている」と思うようになってきているわけです。ここで面白いのは、たとえば冷夏といわれた2003年や2009年においても*6、「年々暑くなっている」と、人々が感じていることです。*7
養老孟司だったかと思うんですが、何かの著書で、人の記憶は時系列に整理されていないというようなことが書いてあったと思います。子どものころの記憶だろうが昨日の記憶だろうが、その印象の度合いによって、思い出す順番というのは変わってくるとか、そんな感じでした。結局、人が「年々暑くなるなあ」と思うのは、寒い日ではなく暑い暑いどこかの夏の一日なのであり(その年が冷夏であろうが猛暑であろうが)、その一日と比較する記憶はただの記憶なので、体感している今のほうが暑く感じるんじゃないでしょうか。だって、たとえばナイフで刺されているその瞬間に、「いやでもあのときキン○マけられたほうが痛かったから大丈夫だよ」とか比較して励ましたりしないんじゃないんでしょうか。痛いのは痛い。暑いのは暑い。*82003年が冷夏だったなんて、もう誰も覚えてないでしょう?毎年毎年、そんな記憶との比較を繰り返していたら、「毎年暑くなりますね」が枕詞のように夏についちゃうんじゃなかでしょうか。
ちなみに、どっかの知恵袋に書いてあった「老化しているから」という回答も面白いと思いました。去年の夏と今年の夏を体感している自分は、一歳違うわけだから、正確な比較装置にはならないですもんね。本当は本論のよわーい根拠を補うために、寒冷化が叫ばれてた70年代ぐらいのエッセイか新聞記事で、「毎年暑くなりますね」的な発言を拾いたいんですがなあ。
*4:「2010年(平成22年)夏の猛暑について」気象庁(リンク先PDF)
*5:今年も要注意!? 熱中症が年々急増している理由【熱中症対策①】 | クックパッドニュース
*7:暑くなる原因は、初めは「温暖化」を理由にあげる人が多いです。これは、97年の京都議定書に関する話題から、「温暖化」が流行語的な扱いになったからではないでしょうか。なので、最近の原因の理由には、これも流行の「ヒートアイランド」が多くなってきています。結局、だれも原因なんてわからないんです。
*8:全然関係ないんだけど、これを書いているときに、「「ブッ殺す」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!」を思い出しました。