私はけっこうジブリが好きで、中でもラピュタはお気に入りです。で、こんなツイートが流行っています。
これによれば、ピジン語で、ハトのことや飛行機を「バルス」と呼ぶんだとか。へえ、ほんとうかあねと思いながら、調べてみます。
元ネタのインスタグラムはこちら。
浅学でございまして、私は諸星大二郎先生という人を知らなかったのですが、各界に多大な影響を与えている漫画家なんですね。民俗学や構造的文化人類学を駆使しているなんて、ちょっと話が合いそうで読んでみたいです。
ピジン語というのは、ピジン言語であるならば、異言語間の混合言語の総称となりますが、ここではパプアニューギニアの方で話されているピジン語のようです。
というわけで、「Tok pisin」で調べてみます。
そうすると、便利な翻訳サイトが出てきたので、調べてみます。
まずは「airplane」。
Search English > Tok Pisin Dictionary
おお、確かに「balus」みたいですね。
次は「pigeon」。
Search English > Tok Pisin Dictionary
おお、これも「balus」ですね。
まあ念のため、他のサイトも当たります。
Wikipedia。
Tok Pisin - Wikipedia, the free encyclopedia(birdでページ内検索してみてください)
鳥、特にハトのこととあります。
こんなツイッターも。
諸星先生のピジン語辞典。執筆当時に使われたものをパプアで見せてもらった。そこには確かにbalus(バルス)とあって、鳥と飛行機(カーゴ)を意味していた。隔絶された島では予兆がいつも空に現れることを、先生は40年前に直感していた。 pic.twitter.com/mZTKeCi6ID
— 佐藤健寿 (@x51) 2015, 5月 24
まあ、ペーパーの辞書に載ってるんじゃ仕方ありませんな。疑ってしまいスミマセン。
しかし、スチュワーデスの意味もあるようですが、「飛行機でスチュワーデスが鳥を捕まえた」みたいな言葉をいうときは困らないんでしょうか。
さて、パプアニューギニアじゃ鳩=鳥みたいな感じのようなんですが*1、なんでかなあと思って調べてみると、なんだか有名なハトがいるみたいですね。
鳥といったらハト、という感じの生態圏なんでしょうかと想像してみます。
さて、パプアニューギニアというと未開の地というイメージが強いですが、このグローバル社会のご他聞にもれず、そうそう裸族でウホウホ暮らしている人たちはマジョリティーとは言えません。
訪れたことがないのでなんともいえませんが、しかし話を聞く限りでは、パプアニューギニアというのはそんな国際化の波に飲まれる世界において、やはり民俗学的・文化人類学的にとても興味深い場所のようです。なんというか、人々の生活に根付いているものが、近代化の恩恵を受けても、なお原始的な部分があるというか。
知り合いでパプアニューギニアに行っていた人がいるんですが、ラスカル、という言葉の話をされたことがありました。ラスカルrascalはもちろんアライグマのことではなく、英語で「ならず者」ぐらいの意味ですが、パプアニューギニアはそりゃまあえらい治安の悪い国で、強盗団が真昼間から出没するぐらいなもんで、そういう連中を「ラスカル」と彼らは呼んでいるわけです。
彼らにとって「ラスカル」は遠い存在ではありません。「ラスカル」は常に自分の中にあるんだそうです。だから、「ラスカル」は見た目はそんなに一般人と変わりません。いつ何時、自身が「ラスカル」に変わるかもしれないのです(実際に生業的ではなく、一般の若者が急に強盗を働いたりするんだとか)。近代法的な規範とか道徳とか、「ラスカル」に一度なってしまうと、それは通用しなくなります。この感覚は西欧民主主義に慣れきってしまった我々にとってはなかなか理解しがたい。しかし、太古の何かとより強く結びついているのは、やはり彼らのほうなのかな、という気がします。それがどちらがいいかは置いておいて。
「現代人には、鎌倉時代の何処かのなま女房ほどにも、 無常といふ事がわかってゐない」
なんて、小林秀雄の言葉を締めくくりにおいてオシマイにします。
*1:さっきの辞書でbirdを調べると、pisinと出てきます。これはpigeonがなまってできたんじゃないかと思われます。