ISISは未だ勢いが止まることを知らず、各国でテロが起こっています。
そんな中、こんな記事が出ました。
ISISの拠点だったとある村の地下トンネルから、食料品などに加えて、アメリカ製の弾薬箱が発見されたんだとか。ソース元の日本版BBCはそれだけの短い記事なのですが、「アメリカがISISを支援しているのでは」といった陰謀論がふつふつ出ています。
私の興味は陰謀論よりも、この画像を見てどうして「アメリカ製」だと結論付けられたのかがよくわからなかったので、調べてみたくなりました。
AP通信の動画がナレーションまでついているので元になってるのかなあと思います。11月24日ですね。
この記事に出てくるのが以下の画像です。
ナレーションは「the boxes of US-made army ammunition」と言っているように聞こえるので、確かに米国製の弾薬のようです。
では、それがどこでわかるのか。
私はミリタリーには詳しくないので、そういう方ならすぐにわかるようなんですが、Boxに書かれている文字について地道に調べてみました。
参考になったのはこのサイトです。
ミリタリーショップのようですが、おお、なんと画像を見る限り、全くおんなじではないですか。どうやら米軍放出品のようで、米軍放出品なんて聞くと戦後すぐの闇市が思い出されますけど、やっぱりアメリカ仕様なんですかね。
このサイトによると、
840 CRTG=入数(つまり840発)
5.56mm=弾サイズ
Ball M855=弾頭種類:通常弾頭
M27 LINK=リンクの種類
だそうです。ほほー。
M27リンクとは、wikipediaによれば、「アメリカ軍で使用されている弾帯用リンク」とのことなので、ここからアメリカ製のものだということがわかるんでしょうか。
もう一つ気になるのが、下部にある「LC-07E382-257」と書かれた製造番号のようなものです。これも何か意味があるんでしょうか。
調べてみると、LCとはLake City、つまり「レイクシティ陸軍弾薬工場」で作られたものだということを示しているようです*1
Lake City Army Ammunition Plant - Wikipedia, the free encyclopedia
レイクシティ陸軍弾薬工場は「US government-owned」だそうなので、米国政府管轄の工場なんですね。へえ。そりゃ米軍仕様になりますな。で、「07」は年号を示すそうなので、つまりレイクシティで2007年に作られたものということになるようです。ほほー。
というわけで、この弾薬箱は間違いなく米国製のもののようです。
それがなぜISISの地下壕に残されていたかはいろいろあるようですけれども、素直に考えるなら、ISISが自由シリア軍とかから鹵獲したものではないか、というのが一般的なようです。
確かに、以下の記事によれば、アメリカは自由シリア軍などに軍事訓練や武器の提供を行っているようなので、そこのどこかかから奪ったものと考えるのが妥当かもしれません。
しかしまあ、敵側からアメリカ製の弾薬が出てきたって言うのは、日本だけではなく、他の国も「あっ・・・(察し)」となるようで、先ほどのAPの動画や他記事にも似たようなコメントが書かれています。
why do isis have US ammunition boxes
なんでISISがアメリカ製の弾薬箱をもってるんだ?
everybody will be taking about the American made ammunition, but I bet they
don’t talk about all the Russian ak47s and rpgs.みんなアメリカ製の弾薬について話してるけど、あいつらみんなロシアのAK47とRPGを持ってるなんてことは話さないって事は賭けてやるよ
US-made ammunition..ha. Who criticized TOYOTA for trucks?
アメリカ製の弾薬・・・ははっ、誰がトヨタ車を使ってるって非難するんだ?
(向こうではTOYOTAの車にRPG積んだりして使ってるからでしょう)
かように、日本だけではなく、やはり誰もが「あれ、これは」と思ってしまう出来事なわけです。たぶん、こういった思いが、初出のAP通信がフラットに「Under Iraqi Town, IS Built Network of Tunnels」つまり、ISが地下壕を作っていた、とだけ伝えたものを、BBCは「What was found in IS Iraq tunnels」と、見つけたものを強調するものに変え、なぜか日本版のBBCは「ISの地下壕を発見 アメリカ製弾薬の箱」と、ことさら弾薬の話に焦点を当てることになったんでしょう。
陰謀論がかくも好まれるのは、みんな、「自分だけが知っている」という優越感が好きだからなんじゃないんでしょうか。恩田陸の『ねじの回転』という小説に、「人間が得た最大のギフトは知能ではなく、好奇心だ」というセリフが出てきますが、この知的欲求というやつが存続する限り、陰謀論は跋扈し続け、ついでに当ブログのようなものも存在を許されるのでしょう。