ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

初任給が手取りで37万円の教科書は教科書ではない、スクエニ現象ふたたび

今日は検証とも呼べない出所確認の記事。

hamusoku.com

「教科書」に記載のある初任者の給与が手取り37万円と破格の給与となっていて、「いったいどこの会社だ」と話題になっています。2015年の上場企業の平均が20万7450円ということを考えると*1、桁違いというか、確かに時代錯誤的ではあります。

 

さて、これはモノホンなのか。ぱぱぱっと調べてみました。

 

 

 

***

 

 

この話題、実は2年ぐらい前にもあがっています。

irorio.jp

ネットにはこういうリバイバルネタがよくあり、私は勝手に「スクエニ現象*2」と呼んでいますが、人の記憶って、あてにならないもんなんですね。

 

さて、このときのツイート主は以下の方で、ご丁寧にソース写真を貼ってくれています。

 

浜島書店の「新しい公民」というもので、2011年発行のもののようです*3。教科書って言うか、資料集ですね。ご丁寧に遠景からの写真も撮ってくれているので、コラということはなさそうです。

 

なので、「お役所云々」というコメントは、この場合はちょっと違うかな、と思います。だって資料集は検定教科書じゃないし。

 

内容は、「すごろく式 わたしたちの一生と法律」というもので、要するにこのすごろくをやると、公民で学習する内容と関連させて考えられるよ、というもののようです。最初の画像だとページをまるまる使っているように錯覚させられますが、上記twitterの画像を見ると、すごろくの一こまなので、扱いは小さい、というか挿絵みたいなもんです。

この学校の使用しているであろう写真を見ると、小ささがわかります(2013年版のようですが)。

 

「社会の授業」-扶桑町立扶桑北中学校

 

この「すごろく」は、ずーっとこの資料集で使われているようで、2016年版にも記述がありますし*4、2013年版、2010年版にも同じように「すごろく式」の記載があります*5。なので、もしかすると今回の2016年度版にも同じ給与明細が載っているかも知れないので、ぜひ、名古屋近辺の新中学3年生のみなさんに教えてもらいたいところです。

 

それにしても、この「37万円」の数字はどっから出てきたんでしょうか。

 

出版社の「浜島書店」は名古屋の学校図書教材の出版社で、東京書籍とか光村とか、そういう感じではない、中小企業のようです。創業は1947年となかなか古めですけれど。

なので、採用情報を拝見しても、初任の給与は「21万円」と、ごくごく平均的です*6。もしくは、転職サイトの口コミを見ると、非正規社員の方ですが、「他社よりトータルで低い」「3年以上働かないほうがよい」という情報もあるので*7、もしかすると同業の中では、同じぐらいか、多少低めなのかもしれません*8

 

ということは、このページが外注か自社編集かまではわかりませんが、もし自社の社員の方が編集したんだとしたら、そこらへんの給与面に関する恨みつらみがあったのかもしれません。

 

社員A「ここの就職のコマどうします?」

社員B「初任給の明細でも載せたら、中学生は興味もつんじゃないんですか」

社員C「でもリアルなうちの数字載せたらどんびきじゃないっすか」

社員A「じゃあ、いろんな手当てつけて、部長クラスの給与にしよっか」

社員B「うわー、ありえないわー、初任でこの給料」

社員C「いいっていいって、夢見させてあげようよ」

 

みたいなやりとりがあったのかもしれません*9。確かに、紙面のサイズ的に、この「給与明細」はメインを張っていないので、ちょっとしたイタズラ心があってもおかしくはありません。まあ、これは完全な憶測ですが*10

 

・今日のまとめ

 

①今回の「給与明細」の画像は、2010年版(たぶん)の「新しい公民」(浜島書店)という資料集に掲載されているものであり、教科書ではない。

②「すごろく式 わたしたちの一生と法律」というすごろくの中の一コマであり、扱いとしては大きくない。

③そのため、もしかすると社員の方の遊び心だったのかもしれない。

 

たぶん、また2年後ぐらいの新年度の時期に、きっと話題になるんでしょう。みんなが忘れた頃に、当ブログが役立つことを祈っております。

  

 

*1:衝撃!これが「初任給が高い」トップ500社だ | 企業ランキング | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

ちなみに、この年一番高かった初任給は日本商業開発の50万円だそうです。

*2:リバイバル作品で食いつないでいるように見えるので。

*3:ただし改訂のタイミングとしては2010年版のものかな、という気もしますが、そこの微妙な年の差がちょっとわかりませんでした

*4:新しい公民 | 商品情報 | 浜島書店

*5:2013年→新しい公民 | 商品情報 | 浜島書店

2010年版→新しい公民 | 商品情報 | 浜島書店

*6:募集要項 - 浜島書店 採用情報

発行当時の2009年のアーカイブを拾っても、「20万9300円」なので、むしろちょっと上がってます。

募集要項 - 浜島書店 採用情報

*7:浜島書店の年収/給料/ボーナス/評価制度(全1件)【転職会議】(要会員登録)。

しかしここのアルバイトの評判が悪意を感じさせるほど悪くて、ちょっと心配になります。

*8:もちろん実際の給与明細を見たわけではないので、これは憶測です。初任の給与に限って言えば、前述したように平均的な給与でしょう

*9:ちなみに交通費が14000円なんですけど、山王あたりから通うと大体1ヶ月の定期はそれぐらいになります

*10:あるいは、給料って、いろんな手当てがついたり、逆にいろんな税金が引かれたりしてるんだよ、っていうことを中学生にもわかってほしい、なんて編集のやさしさなのかな、という推測の方がヤサシイかもしれません