ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

しじみ習慣は二日酔いに効くのか、ドーナツの穴的認識論

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なんか野球中継の時のCMに多い「しじみ習慣」のCMでは、「二日酔いに効く」とは一言も言ってないというウワサがあるので、調べてみました。ステマではありません。

私が調べられたCMは全部で3パターン。もう一人、「女子会ネキ」と呼ばれている、女性が出ているCMも見たことがあるのですが、この方はどこぞやのモデルみたいで*1、権利関係が厳しいのか、動画はあがっておりませんでしたので、検証からはずします。他の動画も紹介はできないので、気になる人は自分で探してください。

 

 

以下、3パターンの内容について書き起こしてみます。

編集がつないでる際には「/」で区切り、ナレーションはカッコなし、しゃべってる人は「」で表しています。

 

A.「二箱!?」お兄さん

ロケ地は新橋でしょう。お兄さんに突撃取材です。

昨日もまた、飲みましたね?

「毎晩、飲んでますね。がんばって起きてからも/カラカラで、チャポチャポしてるんで/気持ちはドンヨリとはしてますね」

しじみをコトコト、コトコト。濃い煮汁になるまで煮出して、煮詰めて煮詰めて、濃厚なエキスを作りました。

(テロップ:ほぼ同じ)

お試しください。

「(お兄さん飲む)あぁ、なんですか、これ?/これは・・・(顔をしかめる)」

(テロップ:健康には しじみの濃いエキス)

超濃厚なそのしじみエキスを、飲みやすいソフトカプセルにさらに凝縮したのが、自然食研の、しじみ習慣です。(テロップ:ほぼ同じ)

「無料ですか?/ひとつだけ・・・あ、二箱、二箱!/十日分。/欠かせないすよねー」

無料、約5日分のお試しセットを、もうひとつプラス。無料2セット、約10日分、初めての方に差し上げます。(テロップ:ほぼ同じ)お申し込みは…以下略

 1分ほどの動画の中に、白々しさが満載ですが、今気がついたのですが、そもそも「お酒を飲んだ」とは一言も言っていないんですね。

もしかしたら、

「毎晩、(青汁を)飲んでますね」

 ということだって成り立ちます。お酒をこのお兄さんが毎晩飲んでいると錯誤しているのはわれわれ視聴者のほうです。だから当たり前ですが、しじみ習慣が「二日酔いに効く」なんて一言も言ってません。だって、お酒を飲んでいることすら明示されてないもの。しかしお兄さん、飲んだことないのに「欠かせないですよねー」は、何が欠かせないのか。

 

B.「僕たちの世代」おじさん&「アホでしょ」お兄さん

このCMはお兄さんとおじさんの二人が登場します。おじさんはダンディで、お兄さんは関西弁です。

昨日もまた、飲みましたね?

おじさん「毎晩ですねえ。お客さんといっしょに飲むことが多いからヘロヘロですよ。/まあ、週二日くらい空ければね、ホントは。」

(場面変わり、お兄さん呼び止められる)

昨日もまた、飲みましたね?

お兄さん「結構飲みましたね。/もうやめとことか思うんすけど/あの後悔どこいってーみたいな(笑)/アホでしょ/今から得意先いかなあかんねんで(笑)」

しじみをコトコト(以下略

お試しください。

おじさん「(おじさん飲む)ああ、これ濃いですねえ。うーん、濃いぃ」

(テロップ:お酒には しじみの濃いエキス)

お兄さん「(お兄さん飲む)くふふふ…/何これ?しじみのエキス?」

(テロップ:お酒には しじみの濃いエキス)

超濃厚なそ(以下略

お兄さん「(サンプル持って)これやったらいけますね/なんでこれ先だせへんですか/これ、だから、5日分ってことでしょ」

おじさん「あ、しじみだから。ふーん、あ、しじみって僕たちの世代って、みんないいってこと知ってるしね/これはー、いけるかも」

無料(以下略

ロケ地がわかりませんが、なにやらキャラクターの濃い二人です。

内容はあんまり変わりませんが、テロップが「お酒には」という表記になっていますね。「二箱お兄さん」とどっちが先に作られたかは不明ですが、「二箱お兄さん」が後なら、わざわざ「お酒」の表記を「健康」という漠然なものに変えたという経緯もありそうです。

しかしいずれにせよ、「お酒には、しじみの濃いエキス」と書いてあるだけなので、二日酔いに効くとか、そういう効能の話ではありません。ただ単に、「しじみ習慣はお酒に合う」という、食い合わせみたいな話であるだけの可能性もあります。

しかし、ダンディおじさんの「僕たちの世代って、みんないいってこと知ってるよね」という断定はどこからくるのか疑問です。そんなにしじみって、昔から滋養食品の認知があったのかな?*2

 

C.「ぶっちゃけ」お兄さん

最後のお兄さんは、他の二つに比べてちょっとインパクトに欠けるキライがあります。

昨日もまた、飲みましたね?

お兄さん「ぶっちゃけ、フラフラです。ふふふ/歳ぃは、あると思うんですけどぉ/ここんとこちょっと続いてるんでぇ、まだちょっと負担かかってるかなあっていう」

しじみをコトコト(以下略

お試しください。

「(お兄さん飲む)ふふ…あ、これ…/びっくりしたぁ」

(テロップ:お酒には しじみの濃いエキス)

超濃厚なそ(以下略

「(サンプル持って)これならいいすねえ/これいいなあ。無料ですか(最後はナレーションにかぶって聞き取れない)」

無料(以下略

 インパクトはありませんが、ある意味シンプルなつくりです。やたら語尾がのびるところは気になりますが、他3人よりも影が薄い感じです。

これもテロップは「お酒には」になっており、お酒に効能があるように錯誤させるつくりになっています。が、錯誤するのは我々視聴者が悪いのです。

 

ドーナツの穴的認識論

以上、3つのCMを比較したところ、どこにも「二日酔いに効く」といった表現はないことがわかりました。「二箱お兄さん」にいたっては、「お酒」という言葉すら出てきていませんでした。

ですので、巷でウワサされている、「しじみ習慣のCMは二日酔いの効能を謳っていない」は、真実になります。

しかし皆様、ではこのCMから確実に得られる情報は何だと思いますか。

それはたった3つ。

 

1.しじみ習慣はしじみの煮出したエキスをカプセル化したものである

2.30分以内のお電話で無料2セットもらえる。

3.電話番号

 

 

薬事法なんかのしばりで、もちろん効能については言えないのですが、あまりに空虚な情報だと思いませんか。

しかし我々はその空虚な情報に意味を見出そうとし(あるいは錯誤させられ)、「二日酔いの効能」について、新しい事実を自分の中に補完し、作り出してしまうのです。たとえるならば、ドーナツのわっかを食べて、ドーナツの穴の存在を出現させているというわけです。

こういう思い込みがいろいろな商売を成り立たせていくんでしょうなあ、と思いました。

*1:山中涼子もさんもしじみ習慣を愛用していますというステマっぽいサイトなど。

*2:この発言については、自然食研のホームページ(http://www.sizenshokken.co.jp/shijimi/index.php)に載っている「元気のない母に、しじみを採って食べさせたい。そう思って、学校帰りの近くの川でしじみを採って帰ったあの日」という研究室長の思い出話が元になっているのかなあという気もしました。