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ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

グッドデザイン賞はなくなったほうがいいとグッドデザイン賞が言っている、デザイン界の服部幸應先生

さてさて、剽窃、つまりパクりについて世の中ではかまびすしいようですが、こんな話題がありました。

blog.livedoor.jp

深澤直人というデザイナーが、

①自身が審査委員長を務める2014年度のグッドデザイン賞で、自身の作品が賞に選ばれていた。

②その作品はある家具デザイナーのパクリである。

 

という内容の記事です。え、自分で自分に賞をあげちゃうの!ということで、けんけんがくがくしているみたいです。

②については判断しかねるので、①について、ネットの話を鵜呑みにせずに、根気強く調べていきたいと思います。

1.グッドデザイン賞について 

もろもろの批判について知っている人はこの項は飛ばしていいです。

グッドデザイン賞というのは、「デザインを通じて生活の質的向上と産業の高度化を図ること」を目的とした、1957年より続く認定制度のことです。*1

元は通商産業省主導の認定制度でしたが、1998年より民営化して現在に至っています。

現在は、公募を行い、二回の審査を経て、受賞を決めるようです。なかなかお金がかかることでも有名で、Gマークの使用には、一番規模が小さくても1年間で216000円かかるとか*2。応募にも審査料がかかるので、なかなか大変なようです*3。また、「賞という割には応募した作品の3割程度が常に選ばれているのはいかがなものか」という批判も根強く存在しています。*4

 

2.深澤氏は委員長なのか、自身の作品を選んでいるのか。

では、記事の検証に行きましょう。

グッドデザイン賞2014のページを見る限り、深澤氏は審査委員長を務めているようです。

www.g-mark.org

そして、受賞作品を見る限り、確かに深澤氏がデザインしたプロダクトは、受賞しているようです。

www.g-mark.org

 

しかし、今までの受賞履歴を見てみると、深澤氏が審査委員長を務めた2012年度以降だけでなく、副審査委員長や審査委員を務めた時期も、けっこうたくさん受賞しています。

たとえば副審査委員長の2009年度*5は下記のものなど多数。*6

www.g-mark.org

審査委員の2003年*7にはこちらなど。*8

www.g-mark.org

となると、何年も前から自分で自分に賞をあげてきたんでしょうか。そうだとするとちょっと空しいですな。

 

3.自分で自分の作品の審査はしていない

しかし、こういう指摘は聞こえてきそうです。

「いやいや、デザインには専門分野があるんだから、自分が直接審査をしているわけじゃないよ」

確かに、内容はちょこちょこ変わっているのですが、基本的には「ユニット」という、「生活用の装身具、スポーツ用品」「生活家電・音響機器・照明器具」というような単位で、それぞれの専門に分かれた審査委員が審査しているようです。*9

審査委員長や副審査委員長がどれほど横断的に、各「ユニット」の審査に決定権を持っているかはわかりませんが、まあ基本的には「ユニット」が決定権をある程度持っているという認識でここは行きましょう。

なので、「深澤氏が所属していたユニット」が審査した作品が「深澤氏のデザイン」でなければ、問題ないわけです。ほらほら、上記にあげた作品は別ユニットが審査しているんだから、なんら問題ありません。ほらみんな土下座の用意だ。

 

 

というわけでもないみたいです。

 

4.やっぱり自分で自分を審査していた。

しかし、こんなに受賞していたら、たぶんどっかで手落ちをしているだろうとワタクシは考え、しらみつぶしに過去の深澤氏の受賞作とその審査委員を見比べていくと、ひとつの作品だけ、ヒットしました。

www.g-mark.org

上記の作品にはこうあります。

デザイナー:ナオトフカサワデザイン 深澤直人、三宅一成

そして、審査委員は彼らです。

担当審査委員| 佐藤 卓 (ユニット長) 大島 礼治  柴田 文江  澄川 伸一  深澤 直人

 

うーん、自分で自分を審査しちゃってますな。ぜひこのときの審査のやりとりについて聞きたいところです。「深澤さんの作品はデザインのイニシアチブにより全く新しいあり方の商品が生まれている」と深澤さんが言ったりしていたんでしょうか。

 

5.グッドデザイン賞はコンペティションではない。

まあしかし、公式にはそこは抜かりなく説明があります。

www.g-mark.org

「グッドデザイン賞とは」というページの中に、長々と書かれていますが、端的に言うならば、「グッドデザイン賞はコンペティションではない」ということです。応募された作品は「デザインの効果・効用という視点から評価を行い、顕彰」することであり、アート的な観点からの評価ではありません。あくまでも広義なプロダクトとして、社会に働きかける製品やコンセプトに対して賞をあげているわけです。

つまり、この世の中にある製品が、こんな賞に応募しなくても、社会的によい影響を与えればいいのであり、このグッドデザイン賞の究極的な理念は、「「グッドデザイン賞に応募されたすべての対象がグッドデザイン賞を受賞する」ことにあ」るわけです。言い換えれば、最終的にこの賞の存在価値がなくなることが存在価値だというトートロジー的な感じのアワードなわけです。私も書いてて意味がわからなくなってくるのですが、この長い文章を誰か読んでますか?

 

このコンセプトについては、2003年度まで審査委員長を務めた川崎和男の審査講評が元になっていると思われます。→GOOD DESIGN AWARD [ Winners2003 ]

しかしこの講評がとてもわかりづらい。わかりづらいなりに読んでみると、要するに、民営化以前はお役所が与える「認可」であったものが、民営化後は、「賞」としての価値に変異してしまった。そこの価値基準のダブルスタンダードが、「誰にでも賞をあげてる」とか「Gマークでも売れない」といったような批判を生む要因になっているんだ、とか。Gマークは「賞」ではない、ただの「認可」なのだから、「そのデザインが売れるとか売れないかは、デザイナーの責任なんだよ」「認可なのだからいいデザインならばできるだけとりあげていくのが基本理念だ」というわけです。

 

まあ、もっともだといえばそうなんですが、だったら「賞」という名前にしてしまったことが致命的なミスなのではないかなと思います。だって、そしたらなんで「大賞」とかの優劣をつける必要があるのかがわからなくなります。

 

6.深澤氏はデザイン界の服部先生である。

しかし「認可」という観点だとしても、自分がデザインしたものを自分で審査するというのは、やっぱりいかがなものかという気がします。ただ、擁護をするならば、深澤氏はあまりにも色々な企業のプロダクトのデザインを手がけすぎているんじゃないかなと思います。

実際、「Gマーク」がつけば、その商品の価値はぐっとあがるわけです(それがグッドデザイン賞のコンセプトと相反するとしても)。そして、深澤氏のデザインはとても評判がいい。ならば企業はこぞって深澤氏にデザインを依頼します。

そして、そのデザインされた製品をグッドデザイン賞に応募するのは深澤氏本人ではなく、その製品を作った企業となります。だってGマークがつけば売れるんだから。それを止める手立ては深澤氏にはないでしょう。自分で自分の審査をしたものはともかく、他のユニットの審査であがってきたものを、わざわざ辞退することは、企業の製品価値を下げる行為であり、到底(企業側としては)許されることではないでしょう。

まあ、だったらこんなアワードに関わらなければいいのにという気もしますが、いろんな大人の事情があるんでしょう。つまり、深澤氏は、調理師免許の資格試験の問題を作る側になっちゃって、いまさら調理師免許をとれない服部幸應先生みたいなもんなんでしょうか。*10

 

しかし、ひとつ気になるのが、グッドデザイン賞を受賞すると賞状をもらえるのですが、この賞状、デザインした人の名前と委員長の名前が載っているんですね。

グッドデザイン賞 賞状 - Google 検索

この賞状を見たら、やっぱり深澤さんは、ちょっぴり空しい気持ちになるんじゃないでしょうか。