本当は「教育勅語と道義国家」についてのエントリを書こうと思ったのですが、時間がかかっているので、簡単なツイートの話。
「社長のツイッターを見ることは常識」だと豪語する社長さん、どんな有益な情報を発信しているのかと過去の呟きを拝見したけど、誰も興味ない自分の体重の話をするは、スパム送りつけるは、挙げ句の果てに「愚か者は自分の愚かさに気がつかない」という特大ブーメランを投げてて膝から崩れ落ちた。 pic.twitter.com/U3HZBNpchL
— 中退くん (@chuutaikun) 2017年3月18日
「採用面接を受けるなら社長のツイッターを見ることは常識だ」と豪語する社長のツイートの内容が無いようということで、盛んに燃え盛っております。このツイート主は、「体重が減った」ということと「レイバンのスパム」の2つのツイートの画像をあげて、その無内容を指摘していますが、果たしてそんなにこの社長のツイートは無内容なのでしょうか。
ツイート内容の割合について
ツイート数が816と少なめだったので、TwimeMachine*1を使い、ツイートを抽出しました。うち、RTや返信のコメントは除き、純粋なツイートだけを抽出したところ、706件が残りました*2。
ツイート内容を、以下の17項目に分けてみました。
WRESS・ディベート*3 |
ユーザー会*4 |
ビジネス論 |
プライベート |
プログラム・マネジメント |
プロジェクト管理 |
ボウリング |
メール多い*5 |
人生論 |
仕事 |
休みも仕事 |
忙しい |
息子 |
疲れ・衰え |
睡眠短い |
英語 |
講義・講演 |
これでもかなりざっくり分けたんですが、いかんせん、内容が多岐にわたり、微妙なわけ方になったツイートもあります。
「ビジネス論」には以下のような、
一昔まえであるのなら、良いものを安く製造すれば、市場が受け入れてくれた。 今は、間に合った物の中から、一番良いもの、安い物が選択される。
昔、ある企業の部長が、「内の会社の仕事には、前後関係がないのです。」と主張したことがある。 仕事の単位(粒度)が大まか過ぎることがその発言の原因だった。 適正な粒度まで分解したところ、仕事には前後関係が表れた。
一般的な経営理論やビジネスセオリーのようなものを含めました。会社の業務内容にかかるものについては「仕事」グループに、もっと細かいプロジェクトマネジメントなどに関しては、その項目を作って分けました。
「人生論」グループは、
愚か者は自分が愚かであることにきがつかない。 優れた人でも、自分が優れていることに気が付いていない人がいる。 人類のためには、どちらも罪である。
というような、ビジネス以外でも成り立ちそうな呟きを取り入れましたが、「ビジネス論」との区分けが少々難しい部分でもありました。あわせて考えてもいいかもしれません。
また、「プライベート」については
トランプがツイートすると、市場に影響を生み出す。 私がツイートすると、私の生存確認ができる。
という本当の呟きのものから、
同世代の友達が、極めて前向きに社会で活動していることをFBなんかを通して知ると、凄いなあと思う。
という、感想めいたものまで、雑駁な感じで取り入れました。身体の不調や忙しいアピールは別項目を設けました。
以上のような形で、各グループの呟きの割合を求めると以下の通りです。
ちなみに内訳は以下の通り。
ビジネス論 | 152 |
プライベート | 108 |
仕事 | 99 |
プロジェクト管理 | 68 |
人生論 | 66 |
WRESS・ディベート | 38 |
忙しい | 29 |
プログラム・マネジメント | 27 |
疲れ・衰え | 25 |
講義・講演 | 24 |
メール多い | 19 |
ユーザー会 | 11 |
ボウリング | 11 |
休みも仕事 | 9 |
睡眠短い | 8 |
英語 | 7 |
息子 | 5 |
圧倒的に「ビジネス論」が多いですね。「プライベート」も多くはなるのですが、「その他」の感覚もあるので、多くなってしまうのは致し方ないかもしれません。
この「ビジネス論」や「人生論」が、果たして大勢の人間の賛同を得られるかは別として、それなりにこの社長の会社経営学というものはツイートを読むと理解できるわけです。決していつも、自分の体調の近況報告をしたり、スパムに引っかかっているわけではありません。先にあげたツイート主の切り取り方は、少々意地が悪いというか、悪意を感じます。
社長は何を伝えたいか
で、せっかく700以上のツイートを読んだので、簡単に社長のビジネススタイルについてまとめてみたいと思います。
①マネジメントには全体感・戦略性・優先順位が必要
②答えのないコンサルタントはコンサルティングをしてはならない
③「できて当たり前」が常識。できない「恥」の感覚をもって臨んでほしい
④会社に入るなら、プロジェクトマネジメントの基礎は勉強してほしい
⑤病気になったら休んでいいけど病気になるな
①については、特に「戦略性」についていくつものツイートで出てきます。
あっという間に、土日が過ぎるものです。 ってか、11月もなんと10日間も過ぎようとしています。 時間の流れるのがとても速く感じる。 限られた時間を有益に過ごすためには、全体感、戦略性、優先順位が大切。 まず自分が何者なのかを再認識することが大切です。
やりたいこと、やらねばならぬこと、が毎日のように増加する。 よっぽどしっかりした戦略を持っていないと、優先順位づけに失敗する。 入ってくる情報の量は、明らかにひとりの人間のキャパシティを超えているのだから。
限られた時間の中で最高のパフォーマンスを出すために、何を削り何を選ぶのか、という戦略が大事だということです。その「優先順位」を決めるためには、そもそも自己の価値を知らなければならない、とも述べています。採用時にIQでなくEQを重視しているなんてツイートもそこにつながるでしょうか*6。
②はそのままツイートでいくつか出てきています。この会社はプロジェクトマネジメントの様々な支援を行っているのですが、日本ではその分野が育っていないという考えにもつながっていくでしょう。④の話にも関連しますね。
⑤については、まあ、ちょっと物議をかもし出しそうな発言ではありますね。「プロなら体調管理も仕事のうち」というやつです。まあ、つまり、①~⑤を総合すると、かなりハードな業務を「オレもやってんだからできる」と求めているということでしょう。
私は読んでいて、何となく前に書いた日本電産の社長(今は会長)の永守を思い出しました。
ハードワークの社長、そして会社という構図はこことよく似ていますが、いかんせん企業規模が違いすぎます。また、永守はこの働き方が「一風変わった人」を対象としていることを自覚していますが、今回の社長の場合はそれを「常識」と捉えているあたり、ちょっと差が出ているかな、という感じです。まあ、この会社に入りたい人は参考にしてください。
ジャイアンにはならないで
確かにこの社長のツイート、「睡眠時間が2.5時間」とか、「GWも仕事」とかのアピールがちょっとミサワちっくで鼻につきます。自分を「有能」といって憚らないところも、周りの反感を買うところでしょう。
当該ツイートは載せませんが、現在この社長のツイートには800件近くの返信がつき、そのほとんどが彼の発言に否定的です。というか、もはや罵詈雑言の嵐です。
しかし、落ち着いて考えていただきたいのですが、この会社にそれで落とされたならいざ知らず、ここで発言している人たちは、この会社とは縁もゆかりもない人たちでしょう。親の仇でもあるまいし、いち中小企業のひとつの発言について、どうしてそこまで神経症的に攻撃をしなければならないんでしょうか。フォロワーが1000に満たない人の発言にどれほど影響力があると? 人の発言のあらを探し、それを細かく糾弾する様は、新しいおもちゃを手に入れて悦にひたるジャイアンのようです。
今に始まったことではありませんが、このネット上には「正義」の民が多すぎる。他人の不正に敏感で、自身の不誠実には愚鈍な正義の民が。これは自戒もこめて、自身は人として誠実にはありたいものです。