ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

コロナ・ビールの元社長は全財産を故郷の全村民に配布したのか、デイリー・メールは笑えない

コロナ・ビールで有名な会社の元社長が、遺産の230億円を、生まれ故郷の村の全村民に配布したとかしないとか。

irorio.jp

という話が11月25日に話題になり、FNNもニュースで紹介してしまった感じなのですが*1、どうも誤報のようだということになっています。

 

まあ、そこで話が終わっても面白くないので、どこが発端なんだろうという感じで今日は簡単に記事を書きたいかと思います。

 

*1:既に記事は消されていますけれども。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00342824.html

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ネットで知り合った彼氏がブサイクすぎて自殺しかけた女性はいるか、バイラルメディアと末摘花

古今東西、男女問わず、なるべくなら見てくれのよい方とお付き合いしたというのが人情ですが、それが叶わず自殺しかけた人という話。

 

gogotsu.com

 

中国の牡丹江*1に住む女性が、ネットで知り合った男性に現実世界であったら、あまりにも「ブサイク」で、7階のバルコニーで「自殺する」と言い出したあと、「睡眠薬を飲み込み」「割れたガラスの破片で手首を切った」ということ。命に別状はなかったようですが、「いくら私がブサイクでも(自殺するのは)酷い。一緒に泊まろうとホテルに誘ったのも彼女が先だ」と訴えたとのこと。この手の話は、シンガポールでもあったよ、というところで記事は終わっています。

 

しかし、後述するように、ゴゴツーさんは中国の話なのにソースをアルゼンチンにしているので、どーなんかねーという感じでコツコツ調べてみました。

 

*1:なぜかゴゴツーさんは「牡丹」をふりがなのつもりでか(モラン)とかいているのですが、「牡丹」は中国語的にはMŭdānなので「モラン」とは読めません。韓国では牡丹を「モラン」と読むそうなので

http://www.kpedia.jp/w/4915

この記事を書いた人は韓国系の方なのかな?と推察できます。と思って、ゴゴ通信全体を読んでみると、韓国の記事が多いので、母体はあっちの方なのかしらん。特に他意はないんですが、韓国がおきらいなまとめブログ系がこぞってソースにしているのが何というか、節操がないというか。

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東大の女子学生への家賃補助は差別なのか、誰がために金をやる

東大とはあまり縁のないワタクシですが、こんなニュースが話題になっています。

www.asahi.com

来春から入学する予定の女子学生に対し、「月3万円の家賃補助」をするということで、これが「女性だけの優遇ではないか」「男女参画といいながら一方向だけの差別ではないか」のような批判がおこっています。

 

特に東大に義理も恩義もないのですが、うーん、きっとそうする某かの事情があるんだろうなあと推察しましたので、ちょっと調べてみました。

 

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親しい人間は15人もいるのか、孤独が何で珍しい

みなさんは親しい友達はどのぐらいいますか? 15人ぐらいいたほうが健康にいい、なんて話があります。

 

 

画像を書き起こしましょう。

 

私たちの心身の健康は親しい15人の存在によって恩恵を受けていることが、ある研究結果で証明されています。ということは、何百、何千というInstagramのフォロワー数はたいした影響がないということ。アナタが最も信頼できる15人は誰なのか考えてみてください(無条件にアナタを受け入れてくれる15人がいるはず)。そして、その大切な15人との友情を大事に育むよう心掛けましょう。*1

 

「無条件」に自分を受け入れてくれる人は15人もいねえよなあという話でネット界隈は持ちきりでしたが、果たしてこの「ある研究結果」とは何のことなのでしょうか。今回はそれを調べてみました。

 

*1:ちなみにこの画像の出典がわかるとよかったのですが、調べきれませんでした。まあ、いわゆる自己啓発本でしょうかね

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盆踊りとハロウィンの類似性を探る、誰に踊らされているのか

すこーし前のツイートですが、ハロウィンの若者の熱狂ぶりについて、話題になったものがあります。

 

 

若者がいつの時代も「今までなかった」ものを愉しむということは変わらない、という話ですが、ふーむ、盆に踊る習慣なんてなかったかな?と疑問に思い、ちょこっと私もツイートしたのですが、色々億劫だったので調べるのを先延ばしにしていました。ツイート主の方も、後のツイートで「東京で」盆に踊る習慣なんてないという意味だと補足されていますが、果たしてそうなのかな、というところを調べてみました。

 

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「Twitterで使えそうな名言」はオバマの言葉ではない、民主主義の総本山

記事にするほどでもないんですが、気になったので。

jin115.com

あるツイートで、クリントンの応援演説をするオバマのキャプチャ画像と共に、「ツイッターであおられて炎上するような人に核兵器はまかせられない」という彼の言葉と思しきものが拡散されています。

 

調べてみると、確かにオバマはその言葉を口にしているんですが、これは彼が作った言葉ではないんですよね、ということを記事にしてみました。

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「電車内の化粧」の歴史をたどる、「礼儀」を重んじる国

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さて、流れのはやいネットの中ではもはや旧聞に属するのでしょうが、東急の電車マナーの標語が話題になりました。

nlab.itmedia.co.jp

東急電鉄の広告(およびCM)で、「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ」というコピーと、実際に車内で化粧をする女性の写真をのっけています。まー、この1週間ほどの間に、本当にいろいろな賛否両論があったかと思います。

 

その中で、私が気になったのは、谷崎の『細雪』の中に、既に電車で化粧をする場面が出てくるというものです。

 

 

ツイート自体は4年前の古いものですが、結構リツイートしている人を見かけました。『細雪』なんてずいぶん昔に読んだきりなのでよく覚えていなかったのですが、改めて読んでみると、確かにありましたね。

 

「実は何ですよ、一週間程前のことですが、或る日わたくしが阪急電車に乗りますと、風上の方の隣の席に盛装を凝らした御婦人が掛けておられましてな、ハンドバッグからコムパクトを出して、こう―――鼻のあたまをパタパタ叩たたき始めたと思ったら、途端にわたくし、続けざまに二つ三つ嚏くしゃみが出ましたんですが、そんなことッてございますもんでしょうか」
「あははははは、それはその時、五十嵐さんの鼻がどうかしていらしったんじゃないでしょうか。コムパクトのせいかどうか分りませんわ」
「とまあ、わたくしも一度ならそう思うところでございますが、前にもそう云う経験がございまして、その時が二度目なんでして
「ああ、それほんとうでございます」
と、幸子が云った。
「―――わたし、電車の中でコムパクトを開けて、隣の人に嚏されたことが二三度ございます。わたしの経験を申しますと、上等の匂のするお白粉ほどそう云うことが起りますの」

*1

 

『細雪』の刊行自体は、私家版は1944年。冒頭の部分が中央公論に掲載されたのは1943年です。作品の時代設定は1936年~1941年ごろと言われています。確かにツイートのように、「電車内の化粧」自体が無作法である、とまでは言ってはいませんが、この頃から「日常風景」だったのでしょうか。

 

しかしながら、小説は小説ということで考慮しなければならない部分はありますので、いったい日本において「電車内の化粧」が、歴史的にどのように解釈されていたのか、というのを紐解いていきたいと思います。

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