ネットロアをめぐる冒険

ネットにちらばる都市伝説=ネットロアを、できるかぎり解決していきます。

JK炎上はデマなのか、そして誰もいなくなった

細かく書きませんが、女子高生が車を買ったというツイートがバズり、それが「炎上した」として、アカウントが削除され、「#JK炎上」というタグでもって、「炎上」させたとされる人たちへの批判が巻き起こりました。

 

しかし一方で、元々の彼女のツイートのリプには多くの好意的なコメントが寄せられており、そもそも「炎上」自体がデマなのではないか、というツイートもバズってました。

 

個人的に気になった件なのですが、時間も経ちましたので、時系列に整理してみました*1。いわゆるまとめたものは不正確なものも多いので…

 

【時系列目次】

  • 8月30日 女子高生のツイート
  • 9月1日8時半ごろ 5chにスレッドがたつ
  • 9月1日 20時頃  当該ツイートを批判するツイートが投稿(のちに炎上)
  • 9月2日夜中 制服から特定しようとするYahoo知恵袋がたつ
  • 9月2日3時ごろ 5chのスレッドのまとめが立ち始める
  • 9月4日~5日にかけて 当該アカウントが削除
  • 9月5日 7時半ごろ 「陰キャにあおられてアカウントを削除した」というスレが5chにたつ
  • 9月5日 12時半ごろ まとめサイトに「アカウント削除」がまとめられ始める
  • 9月5日 21時半ごろ 「9月1日20時ごろ」の批判ツイートが炎上し始める
  • 9月6日 2時ごろ 「炎上したなんて許せない」ツイート投稿
  • 9月6日 7時ごろ <炎上許せんツイート>を含んだまとめサイトの記事が投稿される
  • 9月6日 10時ごろ 「#JK炎上」がtwitterにあがりはじめる
  • 9月6日 12時ごろ <炎上許せんツイート>はデマではないかという投稿がされる
  • 9月6日 13時ごろから <炎上許せんツイート>への批判ツイートが出てくる
  • 9月6日 19時ごろ <炎上許せんツイート>のアカウント削除
  • 9月8日以降 <炎上デマ疑惑ツイート>アカウント削除
  • 今日のまとめ

 

*1:

今回の記事は内容の性質上、リンクはすべて載せません。また、引用した文章に関しても、そのまま検索できないように、多少表現を変えたり、時刻をぼかして載せています。ご了承ください。

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「生誕祭」は生きている人に使ってはいけないのか、不死身のあなたへ

先日ちらりと流れてきたブログに、「”生誕祭”という言葉は故人だけに使うという話の根拠はないのではないか」、というエントリがありました。私も、「生誕祭」というのは、いわゆる歴史上の人物のお祝いに使うイメージなんですが、最近はそうでもないんですね。

 

togetter.com

 

2017年にも、あるツイッターの「生誕祭って言って推し殺さないで!」というツイートで話題になっています。

 

私が読んだエントリは、辞書的な「偉人に使われる」という意味から、「故人」に結びついたのではないか、と推論していましたが、ちょっと面白かったので、私も調べてみました。

 

【目次】

  • 辞書の意味
  • 生誕の用例
  • 生誕祭の用例
  • 「生誕」は日本で生まれた言葉なのではないか
  • 「生誕」は中国語にある
  • なぜアニメキャラに「生誕祭」を使うのか
  • 今日のまとめ

 

 

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奴隷制度廃止記念日に黒人の少年は白人に傘を差したか、深淵をのぞくものは

ゾマホンさんのこんなツイートを目にしました。

 

 

 

奴隷制度廃止記念日に、黒人の人に傘を持たせているという絵面が確かに皮肉に見えます。

見えますが、果たしてこれをリツイートした人の中に、本当にこれが「奴隷制度廃止記念日」の写真か確かめた人はどの程度いるのでしょうか?そして、傘を差す彼の立場を知っている人は? 今回は、見た目だけでいろいろ判断しない方がよいというお話です。

 

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オリコンのアンパンチ論争の記事の重箱の隅をつつく

この前、アンパンチ論争をやなせたかしの思想から考えてみる、という記事を書きました。

 

www.netlorechase.net

 

そしたら、その2日後に、なんだか似たような記事が出ました。

 

www.oricon.co.jp

 

ちょっと前にバズッた私のツイートの内容がそのまま掲載されていたり、「アンパンマンの正義」がやなせの戦争体験から生まれたことであることや、「善と悪のバランス」の話など、あまりにも似通った部分が多く、「くそ!パクられた!」と思ったのですが、よく読んでみると、これを書いた記者はどうやらちゃんと原本にあたってそうであり、同じ本を読んだら似た結論になるのは仕方がないかな…と、鷹揚に思ったりしました。

 

ただ、どうもこの記事は少々誤りがあることや、出典の明記の少なさ、ちょっと補足したいなあというところがあったので、記事にしてみました。正直かなり重箱の隅をつつく意趣返しの記事なので、あんまり読まなくてもいいです。

 

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暴力とアンパンチのやなせたかし史、カソウテキの行方

いわゆる「アンパンチ論争」は、意外に各方面へ広がりをみせました。

 

 大人気アニメ「アンパンマン」は、主人公のアンパンマンが、悪さをするバイキンマンを「アンパンチ」でやっつけますが、この場面を見た乳幼児が「暴力的になる」と心配する親の声がネット上で見られます。アンパンチでバイキンマンをやっつけ、「めでたしめでたし」とする話の流れが、「暴力で物事を解決すること」をよしとする考えを植え付けないかという意見です。逆に「全く影響ない」とする声もあります。 

「アンパンチ」で暴力的に? 心配する親も…メディアの暴力シーンは乳幼児にどう影響? | オトナンサー

 

上記がおおもとの記事ですが、ここまで反響を呼ぶとは執筆者も思わなかったでしょう*1

 

この手の話は何も最近のものではないな、と思ったので、私も、過去のやなせたかしの発言を載せて呟いた*2のですが、これも思ったより反響がありびっくりしました。ただ、私はtwitterでの呟きは正確性に難があると思っているので、もう一度調べなおし、やなせたかしと彼の考える暴力についてまとめなおしてみました、

 

*1:

記事内の教授は 

こうすればよいという明確な解決法はなく、難しい問題ですが、テレビ番組やゲームソフトの話が子どもたちの話題や遊びの中心になることもあるので、私自身は、そのような番組を一切見せないよりは一緒に見ながら、さまざまなことを教えていった方がよいと思います

と、かなり穏当な意見を述べているのですが、そこに多くの人はふれないあたり、まとめに書いたように、人は目に見えないものをポカスカする方が性に合ってるんでしょう

*2:

ネットロアをめぐる冒険 on Twitter: "アンパンチの意図について、やなせたかし本人の言葉。

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「日高の遺書」のはじまりを探す、あなたの人生は物語

日高の遺書をご存じでしょうか。全て引用すると長くなるので、遺書についている但し書きのようなものを掲載します。

 

昭和四十五年六月、北海道日高管内某町の国道で、三十八歳の会社員が酒酔い運転で追越しをかけ、対向車と正面衝突し相方も死亡した。

この酒酔い運転の家族は、妻(三十二歳)と五歳及び三歳になる二人のこどもがおり、それまで明るい平和な生活を送っていたが、この事故により一瞬にして幸せな生活が崩れ去り、前途を悲嘆した妻は警察署長宛に遺書を残し、可愛い二人の子供を道連れに自殺した。

自然大好き・島原 日高の遺書 より*1

 

「遺書」には、被害者にお金を払えないため、加害者の妻が子供を道連れに心中をする、という内容が書かれています。


ところが、この遺書、内容があまりに悲惨であるが故にか、その真偽について疑うむきも多いです。Googleでも日高の遺書、といれると「フィクション」というサジェストが出る始末です。

しかし残念ながらネット上でこの遺書の真偽をまともにとりあつかったものはありません*2。ならば今回、私がその嚆矢になろうとしたわけです。

先に言っておくと、「日高の遺書はデマでした/本当でした」とはなりません。結論としては、矛盾点があるものの、創作だとは言い切れない、という感じです。しかしまあ、それなりの推論までは書けたので、ひとつご笑覧いただければ幸いです。

 

【目次】

  • アプローチの方法(新聞編)
  • 当時の日高管内について
  • 該当事故は記事上は存在しない
  • 本当に1970年6月なのか
  • 心中は行われたか
  • アプローチの方法(奥尻編)
  • 桝谷広について
  • 奥尻島の記録を調べる
  • 奥尻の当時の様子から仮説を立てる
    • 日本の当時の様子
    • 北海道の様子
    • 奥尻島の様子
    • 「日高の遺書」事故年創作仮説
  • 今日のまとめ
  • おまけ:これ以上調べてみたい人に

 

*1:

「日高の遺書」には細部が様々異なったものがあるのですが、この引用は一番原本に近いものです

*2:

なくもないのですが、きちんと出典をあたっていません。

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「はたらくくるま」に戦車があるのは不適切か、畑を焼く

パソコンが壊れまして、なかなか更新ができませんでした。大変書きづらいサブ機で記事を書いています。私は資料が集まったら基本的に一気呵成に1日で記事を書きあげるのですが、今回は挫折しそうです。やたら更新日時が空いていると思ったら、パソコンがまだ買えていないんだと思ってください(以上意味のないあいさつ)。

 

さて、本日取り上げるのは、先月話題になった、子ども用の本に戦車が載っててあーだこーだという話。

 

幼児向け乗り物図鑑『はたらくくるま』に戦車などを載せたのは不適切だったと講談社が増刷中止を発表したことに、ネット上で様々な意見が出ている。

自衛隊の車がなぜダメなのかといった疑問も多いが、講談社側は、「武器なので、働く車と同列に並べるのは難しい」と説明している。

幼児向け図鑑に「戦車」は不適切? 講談社「はたらくくるま」増刷中止に疑問の声も : J-CASTニュース

 

まあ、いろいろ喧々諤々してました。

 

ネット上では、基本的に「表現規制だ!」みたいな流れだったのですが、その中で私が気になったのは、講談社の対応やむなしの意見たちです。ざっとまとめると、

 

①戦車などの車両は不適切ではないか

②戦車などの車両の量が多すぎないか

③幼児向け(3歳から6歳)には不適切ではないか

④車に関係ないものが多いのではないか

 

という感じだったかなあと思います。「自衛隊なんて子どもに不適切!」という極論まではあんまし見かけなかったと思います*1

 

私はあまのじゃくなので、①や③については、もしかすると今までの子ども向けの本に掲載されているんじゃない?とか、②については他の図鑑と比べて本当に多いの?とか考えてしまいましたので、「今までの子ども向けの車の図鑑と比べてどうなのか」という視点から、久しぶりに地道に調べてみました。

 

*1:発端と思われる新日本婦人の会の主張も、

この問題を新婦人はいち早くとりあげ、4月には、子育て中の会員らが講談社ビーシー編集部を訪ねて懇談。「29ページ中6ページも自衛隊の戦闘機や潜水艦、ミサイル護衛艦などを特集していてびっくり」「身近なはたらく車ではない」「子どもに与える影響を考えてほしい」とそれぞれの思いを伝え、編集部からは「初めてこうした声を聞いた、検討します」と回答。

https://www.shinfujin.gr.jp/9540/

という感じだったので、自衛隊滅びよという感じではありません。

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